坂元裕二脚本ドラマを追っかけていたら見つかった。

「mother」「woman」に続く「anone」で日テレ坂本脚本3部作らしい。

 

このドラマもMATTの胸にグサッと刺さった。

坂元裕二らしく、冒頭1話目では何がどうなっているのか、何が起ころうとしているのか計り知れない。そうこうしていると、少しずつ話が動き出していく。

 

3部作すべて共通するテーマは「母性」だ。

「mother」に引き続き田中裕子が円熟味ある演技で、タイトルと同じ名前の亜乃音を熱演している。あの話題作「ザ・レイプ」の頃から知っているベテラン女優だが、大阪は池田市出身で大学もMATTの先輩とつい今知ったら親近感が・・・・

「ザ・レイプ」は27歳の頃の作品。あの頃の女優さんは体張ってたな、と思う。

 

「海街diary」で広瀬すずを評して、小林聡美を髣髴とさせる天才女優と書いたけど、その小林聡美と広瀬すずの共演というのが興味深い。

広瀬は、阿部サダヲ、火野正平、永山瑛太とクセのある役者さんたちともしっかり絡んだ堂々とした演技を見せ、20歳の若さで深い、、、と感心してしまう。

 

広瀬演じるハリカがチャットゲームでやり取りし、想いを寄せる病気で余命いくばくもない彦星役に清水尋也。

どっかで見た、と思っていたら「ミスミソウ」やこの間観た「ソロモンの偽証」での大出役の子だった。


社会からドロップした弱い立場の者たちが、亜乃音が亡き夫から引き継いだ印刷所に集まってくる。亜乃音、ハリカ、青羽(小林)、持本(阿部)の4人による奇妙な共同生活は、中世古(永山)が加わり、偽札作りに手を染めてしまうところから物語が動き出す。

ここまでのストーリー展開はいつものごとく見事だ。

 

江口のり子演じる血のつながらない娘やハリカに対する亜乃音の母性は、「mother」での役柄とも重なる。

そして、坂本脚本の特徴である知らぬもの同士、他人が親子・親族以上の絆でつながるというのはこのドラマも同じ。

ちょっと変わった人たち、社会という枠から蹴落とされてしまった弱い人たちに対する眼差しは本ドラマでも、どこまでも優しいままだ。

 

見どころはやはり9話~10話だろう。

ハリカと彦星の淡い恋は急に終わりを迎える。

それまでチャット上でしか会ったことのない彦星と初めて顔を合わせることになる。

亜乃音に買ってもらった女の子らしいシャツとスカートで彦星に会いに行くハリカは途中、彦星を密かに思っていた少女・香澄から、彼が治療費の援助を断ったこと、それがハリカへの想いからの決断と知る。

 

ハリカは彼に生きてほしいという想いから、病室に着いても顔を見せずカーテン越しに言葉をかける。わざと嫌われることを言い、最後は涙を隠して病室を後にする。

カーテン越しの二人のやり取りがとても切ない。

広瀬すずのここでの演技はとてもナチュラルで、涙を誘う名場面だ。

 

この後の鑑別所での彦星、ハリカの再会も切ない出会いと別れもとても苦しい。

苦しいまま終わってしまうので、何ともやりきれない。

CMなどでの明るい表情の彼女もいいが、映画、ドラマで見せる厳しい人生に抗うように生きていく彼女の表情もまた美しい。

 

広瀬すず、小林聡美、そして田中裕子。

3人の実力派女優の共演がとても贅沢に思える。

 

その時代の旬な女優が起用される坂本作品。

古くは鈴木保奈美、真木よう子、満島ひかりに松たか子、有村架純、そして広瀬すずに松岡茉優。

このブルーのダウン見ると、「いつ恋」の有村架純のイエローのダウンを思い出してしまう。。。