たぶんF1層(20~34歳の女性)をターゲットにしているドラマだろう。

なので観るつもりはなかったのだけど、ネットでの評判や周囲の人の勧めもあり見てみた。

 

川口春奈は本田翼と並んで年間17本のCM女王(一位は18本の芦田愛菜)というだけあって、癖が無い。

でも癖が無いというのは俳優としてはどうなのか。

とても魅力的な大きな目は彼女の持ち味だが、女優としての色がわかりづらいのが残念だ。

 

物語は「言葉」がテーマとなっている。

ろう者と聴者の心の交流を通じ、言葉の持つ意味や大切さ、難しさやもどかしさが全編通して描かれる。

その過程で、何の不自由もなく生きている聴者は色々と感じ、考えることがあるだろう。

川口春奈演じる紬と、目黒連演じる想の二人のやり取りは、一つ一つのエピソードごとに自分だったらどう考えるか、感じるかを提示してくれる。

 

若い二人のピュアな相手を思い遣る気持ちは、50代のオッサンには眩しすぎる。

もどかしさも若さの証だし、未熟さも未来があるからだ。

本当の優しさとは何なのかということを、時間がかかったけど最後に二人で答えを出した、というところはとても共感できたし、素直に感動できた。

 

目黒連ははにかんだ笑顔が鈴木亮平に似ている。

彼も目黒連も長身でやや目が細い、全体の顔の感じなどから韓国人っぽい。

おそらく韓国に行けば日本人か韓国人かわからなくなるタイプだ。

(なんか親近感沸くな、、、笑)

 

ネットでも話題になっているように映像が美しい。画面に映りこむ風景や小物、部屋のセットなどが凝っている。演出家がとても美的感覚ある人でかなりこだわって絵作りするので予算オーバーしてしまっているらしい。

それを感じた一端は、想の高校時代、母親である篠原涼子が想を駅まで送るシーンがあるが、そこで乗っていた日産マーチはヘッドライトの樹脂カバーが変色していた。

(その後時間経過にあわせ、篠原涼子の運転する車は赤の日産ノートに変わっていたり)

川口春奈の衣装も着回しするなど、こういった細部のこだわりがドラマを等身大の人々を描くリアルなものにしている。

 

紬と想、鈴鹿央士演じる湊斗が絡むのが表のストーリーで、夏帆演じる奈々と風間俊介演じる春尾のラブストーリーが並行して描かれる。

そしてこのサイドストーリーがとてもいい。

「恋がヘタでも生きてます」の土村芳と淵上泰史のサイドストーリーが絶品だった。

 

夏帆の演技は本当に素晴らしい。

奈々は前向きで、思ったことを包み隠さず相手に伝えるキャラクター。

ろう者だからと控えめで遠慮はしない。

一見強そうだが、それも聴者からの様々な心ない態度や仕打ちに耐えてきたからこそだ。

 

そういった想いを手話を通して表現する、というかなり難易度の高い役を素晴らしいクオリティでこなしている。役に入り込む夏帆という役者のプロ意識の高さを感じられた。

その夏帆とがっぷり四つで組んで答える風間俊介もレベルが高い。

この二人のラブストーリーも、紬と想のストーリー同様に心を伝えることの大切さと難しさを教えてくれる。

 

心や想いを伝えることと伝わることは違う。

言葉で言っても伝わらないこともあるし、表情や目の動きだけで伝わることもある。

所詮言葉も手話も想いを伝えるための手段であって、大切なのはどれだけ相手のことを想い、気持ちを伝えたいと考え続けるかということ。

 

シンプルなテーマでありながら、ドラマの作り手の熱意と演者の好演で質の高い一品。

よいドラマに巡り合えたと思った。

 

夏帆と想、二人の気持ちのすれ違いが描かれる話は、泣かされた。。。。。

今回夏帆は一切セリフが無いが、手話を通して奈々という女性の気持ちが伝わってきた。

それだけ彼女の演技が素晴らしかったということだろう。