ドラマ・映画の素材として、医療モノ、法廷モノ、警察モノ、潜水艦モノ(笑)に、外れ無し、という。本作品は医療モノであるが、土村芳が最終話でゲスト出演しているので、観た。

 

11話もあるので、最終話だけ見たろうか、などと不埒な考えを持っていたのだが、結論から言うとそんなことしなくてよかった。

期待以上にとてもよくできたドラマだったからだ。

 

主人公の葵みどり(石原さとみ)は、薬剤師。

そもそも薬剤師がドラマの主人公になるのかいな?などと不安な気持ちで観ているうちに、あれよあれよと物語に引き込まれていった。

 

薬剤師の仕事の内容、薬の知識、病院内での立ち位置(これがドラマの最初の方では、あまりに扱いがひどい)など、どれも普段知りえないことばかりで興味深い。

特に最初の数話は、葵みどりはいろんな人たちから虐げられる扱いを受ける。

それでも健気に信念を持って職務に服する石原さとみが健気で可愛い。

 

タイトルの「アンサング」とは、「讃えられない」という意味があるという。

すなわち薬剤師たちの働きを称し、「縁の下の力持ち」という意味合いらしい。

確かに、医療現場の表には出てこない、それでも用法を誤れば病気が治らないどころか健康にも影響する薬というものを、患者のために確実に正確に届ける。

その丁寧な仕事はほとんどの場合、感謝されたり称賛されたりすることはないだろう。

 

キャストはバラエティに富んだ配役だ。

特に薬剤部の西野七瀬、金澤美穂、田中圭は「あな番」での共演者、桜井ユキと迫田孝也は「真犯人フラグ」での共演と、何か固まっている配役、、、笑

 

西野七瀬は不思議な女優さんだ。

決して上手くないけど、存在感ある。

このドラマでは時折関西弁が出るのがなんとも萌える。

西野七瀬の関西弁、ええなあ。。。っていうか可愛い子の関西弁はなんでもいい。笑

 

1~3話までは薬剤師の仕事、葵みどりの薬剤師としての矜持が描かれ興味深い。

ただ、4~6話で少し中だるみしてしまうのが残念。

視聴者はこのあたりでドラマから離れてしまうかもしれない。

 

でもこのシリーズの本領は7話以降かもしれない。

特に8話のでんでんが主人公のお話と、9話のゲスト・徳永えりのお話は、二人の演技巧者のおかげで引き締まったよい回だと思う。

でんでんは、「冷たい熱帯魚」で恐ろしい殺人鬼を演じていて、このころからのファン。

あの穏やかな笑顔で人をためらいもなく殺す、、、、ほんと怖かった。

 

徳永えりはMATTの中では、土村芳と並んで実力派女優さんである。

この二人のダブル主演ドラマを見てみたい。きっとスゴイことになると思う。

 

主演の石原さとみは役に入り込んでいて、見ごたえあった。

一生懸命でおせっかい、患者のことを第一に精いっぱいやる。

患者と向き合う時も、説教臭く熱くなったりせず、静に寄り添う。

それが彼女の持つ雰囲気にマッチしている。

葵みどりがお世話になった憧れの薬剤師さんと同じく、寄り添う時には患者さんと背中合わせで座る。この距離感が寄り添うというイメージにぴったり。

ドラマの中で何度か出てくるが、好きなシーンだ。

 

最終話は土村芳がゲストのお話。

たった一回の出演だが、その中でたっぷり実力のある所を見せてくれて満足の演技だった。

朝加真由美との母娘役がとても自然で、何十年も家族でいた感がにじみ出ている。

彼女の魅力は、セリフの言い回しも素晴らしいけど、セリフがない時の演技。

隙が無いというか、体全体で心の内を表現できる。すごいと思う。

最終話、向坂千歳役の土村芳。

たった40分のドラマの中で、背負ってきた人生を豊かな感情表現で演じる。

細かな見えない演技に彼女の役へのこだわりと、女優魂を感じることができる。

 

色々取り留めなく書いたけど「アンサングシンデレラ」、お勧め作品だ。

 

最後に、ネット上では「薬剤師はほんとは医療現場でこんなことしない」とかいう批判もいくつか見受けられたが、これはドラマですから、ファンタジーですから、、、

楽しめればいいんだと思う。