ほんとは2015年の映画版(藤野涼子が主役の役名でデビューした作品)を観たかったが、アンブロックにはなぜか後編しかupされず観るのを断念。

 

しかし昨年WOWOWで連続ドラマとして放映された。

上白石萌歌が連ドラ初主演。

WOWOWドラマらしく重厚な作りで、1週間かけずに見終わった。

 

宮部みゆき原作だが、一時期女流作家が好きで作品を読み込んだことがあった。

桐野夏生、新津きよみ、そして宮部みゆきなど。

中でも宮部みゆきの小説は好きで結構読み込んだ。

特に好きだったのは長編の「理由」「火車」。

この「ソロモンの偽証」は、読めていなかった。

 

宮部作品は、人物の表層を玉ねぎの皮を剥くかの如く露わにしていくのが見どころ。

人間というのはある側面から見たのと別の側面から見たのとでは、まったく違った人物像が浮かび上がるものだ。

そして、更にひと皮、ふた皮と剝いでいくと、思わぬ姿が見えてくる。

 

宮部みゆきのように、独特の洞察力で人間の本質を鋭くえぐり取る作家は、ほかに横山秀夫くらいしか思いつかない。

 

そんな宮部みゆきの長編作品だから期待して観たが、良いスタッフに恵まれ良質のヒューマンドラマとして楽しめた。お勧めの一品といえる。

 

いくら芯の強い中学生だからと言って、学校中を巻き込んで学内裁判をやってしまうというのは一見荒唐無稽に思えるが、そんなことは全く気にならなくなるストーリー展開で魅せる。

 

裁判というのは単純に罪人を罰し刑を与え、罪を償わせるためにあるのではない。

その本質は、ただ真実を明らかにすること、なのだということを主人公の藤野涼子が教えてくれる。

法律に携わる人たちの初心はまさにそうなのだろうと思うが、誰もがそれが職業になったと同時に、本質が見えなくなってしまうのかもしれない。

 

主人公の藤野涼子は芯の強い、まっすぐな女の子だがその役柄に上白石萌歌はぴったりと思える。

彼女のまっすぐな眼差しと、意志の強さを感じさせる口元は好感が持てる。

お姉ちゃんの萌音ちゃんよりもこういう役ははまるかもしれない。

 

その他役者さんでは、何でもこなす小林薫(ほんとにすごい役者さんと思う)、高嶋政宏や田中哲司、西田尚美に坂井真紀と豪華だが、曲者役者の橋本じゅんが割とまともな役(筋の通ったキャスター役)で出ていて、これが意外によかった。

 

物語は最後の最後まで誰が本当のことを言っていて、誰が嘘をついていて、そして誰が味方で誰が敵、いい人は誰で悪い人は?がわからないまま進んでいく。

ずっと謎解きが進んでいく中で、少しずつそれぞれの登場人物の本当の姿が裁判を通して露わになっていく。

 

真実を知るというのは辛いことの方が多い。

本作品のもう一人の主人公である柏木卓也(野村萬斎の息子、野村裕基)は、自分が生きる世界の真実を知り過ぎることで、人生に何の希望も見いだせなくなってしまう。

彼のこの世界への絶望が、周囲の人々の人生を狂わせていく。

そんな救いようのない世の中で、唯一、藤野涼子の真実に光を当てるまっすぐで淀みのない目だけが救いなのかもしれない。

 

いつか藤野涼子主演の映画も観てみたい(原作も読みたい)。

 

当時14歳でデビューした藤野涼子。

小説も中学校が舞台なので、映画版は原作に近い設定と言える。

藤野涼子もいい目をしている。