山田杏奈のおっかけはひとまずこのドラマ視聴でひと段落。
このドラマでのヒロイン・山田杏奈はごく普通の女子高生役だ。
これまでの何かを抱え込んだ暗い表情の彼女ではなく、本当にどこにでもいるごく普通の女の子。明るい普通の子も演じることができるけど、彼女の魅力はやはり何か陰のある役のほうかもしれない。
主演は神尾楓珠。最近活躍の若手だが、MATTにとっては徳永えり主演の「恋のツキ」での伊古ユメアキ役が新鮮で衝撃的だった。
目力の強さとエキセントリックな顔立ちは、柳楽優弥や眞栄田郷敦らと同じ系統だろうか。
経済は停滞し、世代間の深い溝がより閉塞感を増長させる現代の日本で、こんなシミュレーションを行ったら、どんな新しい未来が見えるだろう、とそんな興味が沸く設定だ。
神尾楓珠演じる真木は決して頭でっかちのエリートではない。
実験都市ウーアで、人々と触れ合うにつれ政治と言うものがどういうものかを少しずつ理解し、理想と現実のGAPを必死に埋めようともがき、あがく。
しかし理想である、「すべての人が幸せになる」ということの難しさを知り、更にもがき苦しんでいく。。。。
人々の英雄だった人物も、長く権力の座に座ることでいつしか若き日の夢や青い理想を忘れ去り、知らぬ間に進歩・革新の妨げになっていく。
地方でも国単位でも同じことが起きる。
そんな若者から見たら残念な大人を、柄本明や、田中泯らが重厚な演技で物語に厚みを加える。
先日ある会食の場で、米人マネジメントに聞いた。
「アメリカ人にとって輝かしかった時代はいつですか?」
答えは予想通り、1950~60年代だった。70年代に入るとベトナム戦争がはじまり、アメリカは混とんとした国になっていく。
日本にとっては、1960~70年代だろう。80年代はバブルだが、すべての人が輝けたわけではない。
日本もアメリカも古き良き時代はとうに過ぎ去り、今は成熟した国家になっている。
抱える問題も多く、それゆえに政治は難しいかじ取りを強いられる。
国民全員が同じ目標と夢に向かって生きる時代はもう遠い昔のこと。
若者に期待したいのはやまやまだが、そんな難しい時代だからこそ、若者だけでなく、高齢者も含めすべての世代が国のことを考えて生きないといけないのだろう。
ドラマからは、そんなメッセージを受け取った。
星野源演じる平が、歳はMATTより若いけど共感できるキャラクターだった。
「僕の17才はとっくに終わっている」とつぶやく平。
MATTの17才もとっくに終わっている。
36年前のMATTは、世の中を舐めていた。斜めにモノを見ることがかっこいいと思い、なんでも反発していた。要は世間知らずのおバカさんだった。
でも世の中のほとんどの17才は自分のことしか考えていない。
結局このドラマの主人公・真木も、最後にはその本性をさらけ出してしまうのだが、、、
ラストは清々しく締めくくられた。
真木の理想もまた違う形で実現できるのではないか、そんな期待をもった終わり方に少しほっとした。
山田杏奈はこのドラマでまた、新しい何かをつかんだのではないだろうか。
「ミスミソウ」から彼女の演技を見ているが、着実に女優として成長していると思う。
今年21歳。有村架純がブレークしたのも21歳ころ。まだまだこれからだ。
岡部たかし、西田尚美(変わらず可愛らしい)、岩松了など脇も渋い。
林完役の望月歩は、「早朝始発の殺風景」でも特徴的なキャラで好演していた。
あと、主人公たちが通う中華屋、なんかどこかで観たことあるぞ、、、、と思ってたら、「あなたに聴かせたい歌があるんだ」の7話のラーメン屋と同じ店だった。セットだろうか。
ドラマをずっと見てると、ロケ地、セット、役者が重複しているを知らず知らずのうちに探してしまう、、、、、
最後に。
このドラマのもう一つの主役は舞台となった長崎・佐世保市にある針尾無線塔。
軍艦島といい、九州には観るべき産業遺産が多々あると思う。
長崎は一度も行ったことないので、いつか行ってみたい。