高畑充希主演ということで観てみた。

福島中央テレビ開局50周年で作られたドラマの前日譚の位置づけらしい。

残念ながらTVドラマの方は見れないが、十分楽しめた。

監督・脚本は「マイ・ブロークン・マリコ」のタナダユキだ。

 

冒頭から淡々とテンポよく、映画を愛する支配人と一人の謎めいた少女の出会い、奮闘を描いていく。

東日本大震災で人生が狂ってしまった主人公・浜野あさひ。

彼女が信じることができるのは家族ではなく、「映画」という、血のつながらない人々をつなぐことができるエンタテインメント。

 

切ないほどに映画を愛する彼女の人生に光を当てたのは、大久保佳代子演じる教師の茉莉子。「11人もいる!」の光浦靖子ともども「オアシズ」の2人は、なかなかの演技達者だ。

人間味あふれる面倒見のよい教師だが、大久保佳代子のキャラそのもので、かなりハチャメチャな部分も持ち合わせ、実に味のある役に仕上がっている。

 

落語家の柳家喬太郎演じる支配人と、高畑充希演じるあさひのやり取りが軽妙で心地よい。

高畑充希は18歳から26歳までを演じるが、これを全く違和感なく演じることができるのが、彼女のすごいところ。

あの大きな目で真剣に語られると吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥る。

ピュアな役も、とぼけた役も、なんでもしっかりこなせてしまう高畑充希は今、30代の女優さんの中で一番だと思う。

 

物語の舞台になる相馬市の朝日座は実在する。

GOOGLE MAPでも見ることができる。

この映画館を見て思い出したのは、福知山時代に通った「福知山シネマ」。

2018年当時、まだ「もぎり」をやっていたのを覚えている。

昔ながらのレトロムード漂う映画館で、地元の人にも愛されていた。

当時、舞鶴の映画館が閉館になったと聞いて、あのあたり(京丹後)では、最後の映画館になってしまったと聞いた。

 

あのシネコンプレックスには無い、温かみのある映画館が、昭和生まれのMATTにとってはとても懐かしく心地よかった。

宇都宮にも昔そういう映画館があったが、今はもうない。

 

ああいったものは理屈でなく街に一つはあってほしいものであり、映画の中でも語られていたが、無くなってから残念がっても遅いのだ。

 

でも現実は甘くなく、小さな映画館はどんどんなくなっていくのだろう。

そのたびに寂しい思いをするのだな。

 

大久保佳代子とのエピソードがよかった。