坂元裕二の脚本ドラマをずっと見続けている。
今日まで「いつ恋」が一番と思っていたけど、このドラマを観て新たな感動に出会えた。
ネットなどで評価が高いのは知っていたものの、これほどまでに完成度の高いドラマだったとは。。。。と、放送から12年も経って初めて知る自分が恥ずかしい。
親による虐待と母性をテーマとしたドラマであるが、坂本元裕二らしい、様々な角度から真実を見つめ、決して情に流されず、人の営みや感情、悲しみや喜びを描いている。
確かな脚本とそれを支える女優陣。
松雪泰子、田中裕子、高畑淳子、そして当時わずか5歳だった芦田愛菜の4人の女優の熱演があってこそ、このドラマが名作になったのだと思う。
松雪泰子と田中裕子、高畑淳子と松雪泰子、そして松雪泰子と芦田愛菜のそれぞれの母子の物語が交錯し、時にぶつかり激しく争いながらも、何かに導かれるように母と子の絆が深まっていく。
母性とは何か?という大きなテーマを提示されるわけだが、母性とは「大切な愛する子を守るもの」に他ならないのではと思う。
それが持ちうるのは世界中に母親しかいない。
ただ、このドラマではそれが血のつながらない母子の関係でも成立するか、ということを問うている。「母親は子を守ることに命をかけるのを厭わない」という真実の前では、血のつながりは関係ない。母性は全ての女性に備わっている。
そう考えざるを得ない。
もうひとつ。
虐待を受けている子供たちの本当の気持ちはいかばかりか。
芦田愛菜演じる継美は、大人の顔色を窺いながら気丈に大人の喜ぶ答えを考え、言葉にする。そんな継美に奈緒が「泣いていいんだよ」と抱きしめるシーンは涙無しでは見られない。
本当の気持ちを言う事さえ許されない。
身体的虐待と同じくらい残酷な仕打ちである。
精神的にも虐待されている、それが残酷なことであることを物語っている。
静かに始まるストーリーは、中盤までは松雪泰子演じる奈緒と芦田愛菜演じる継美の逃亡劇だが、8話以降は急展開。
その8話以降は涙なしでは見られない。毎回泣きながら見てしまった自分がいた。
芦田愛菜はこの作品がデビュー作。
劇中は7歳の役だが、5歳で演じている。
オーディションでは役の年齢に達していないため一度は落選するも、事務所の強い後押しで再挑戦したところ、その才能を認められ合格したとか。
芦田愛菜が天才子役と言われていたのは周知の事実だが、このドラマを観てあらためてそのすごさがよくわかった。
一つ一つの表情、感情表現、セリフの言い回し、どれをとっても自然な子供だ。
子役の演じる子供ではない。
「子供が演じる子供」。そんな演技は彼女だけしかできない。
それも5歳の彼女がこうやって演じたのが奇跡といえる。
一つ一つのシーンや母子のやり取りが宝石のようにきらめいている、そんな素晴らしいドラマである。そして、各国でリメイクが作られているのもわかる脚本のすばらしさに、永遠の名作となることは間違いないだろう。
尾野真千子、綾野剛のふたりはどうしようもないクズ親の役だったが、二人ともこのドラマをきっかけにブレイク。若き日の倉科カナも好演している。
またちょい役で若き日の吉田羊も出ていた。
物語の終盤、田中裕子の夢のシーンで彼女が奈緒を捨てた本当の理由が判明する。
まさか、そうだったか、、、、とここに来るまで明かされない事実に、また涙してしまう。
最後の最後まで、涙腺の緩みっぱなしの11話だった。
田中裕子の圧倒的な存在感。
松雪泰子の感情を抑えた演技。
そして芦田愛菜の天才的な子役っぷり。
素晴らしいドラマでした。