坂元裕二脚本ドラマを片っ端から見ていくことにした。

「最高の離婚」は彼のドラマの中でも、もっとも彼の世界観が色濃く出ている作品ではないかと思われる。

 

それは、ユニークな人たちがそれぞれの人生を生き、ぶつかり、そしてわかりあっていく、でも結局は本当にわかりあったのかは、わからない、、、

自分なりの解釈だが、そう捉えている。

その視点から見た時、本作はとても坂元裕二的ドラマと思う。

 

そういったどこか冷めた、俯瞰的な見方をする坂元ドラマだが、本作ではカメラも定点カメラが随所に出てきて、わちゃわちゃやっている主人公たちの所業を、冷めた視点で見せてくれる。

当人たちは真剣なのだけど、一歩引いてみると滑稽そのものだったり。

 

瑛太、真木よう子という坂元ドラマの常連に、綾野剛、尾野真千子とこれまた個性派が絡む。

やたらセリフが長いのが彼のドラマの特徴だが、この作品は中でも随一かもしれない。

特に瑛太と尾野真千子、綾野剛の絡みはほんとに見ごたえあり。

 

死を考えることは生を考えること、と同じく離婚を考えるということは結婚とは何かを考えることだろうか。

ドラマは離婚がテーマでありながら、離婚してからの二人のお互いを想う気持ちや、まだ結婚していない二人が、結婚するとはどういうことなのだろう、ということを日々の些細な出来事や、互いの気持ちのすれ違いの中で少しずつわかっていく、、、

 

嘘を重ねてそれでも結婚生活を続けていくのがお互いにとって幸せなのか、全部吐き出して互いに新たな人生を生きていくのが幸せなのか。

 

ドラマの中のシーンで、4人の登場人物が問わず語りをするという設定がある。

瑛太は歯医者、尾野真千子は立ち食いソバ屋、綾野剛は公園でおじいさんと、真木よう子はヨガサークルで友達に。

みんな一人でしゃべりまくっているが、それは本来配偶者に言いたいことなのだ。

でも言わずにみんな心にしまって生きている。

 

最終的に瑛太と尾野真千子夫婦は、元のさやに納まっていく。

離婚前と何らお互いに変わっていないのだが、それでも一度壊れて、吐き出し合った二人は、今度またぶつかっても、お互いをいたわる気持ちがあるだけ同じ轍は踏まないだろう。

でも象徴的だったのは、ラストで尾野真千子が立ち食いソバ屋で「まだ婚姻届けを出していない」と言うシーン。

紙一枚で決められる結婚、というものを信用していないということなのか。

「最高の離婚」をして得たものは、結婚とはだれかに認めてもらうものではないという自負から来るものなんだろうと思う。

 

翻って真木よう子と綾野剛の二人の結婚はまた少し違っている。

綾野剛を好きではないが、家族のために結婚するという真木よう子。

一見危ういようにも思えるが、何で夫婦がつながるかは問題ないというメッセージともとれる。

つながり合う二人は、結果何でつながっていてもいい、大事なのはつながっていることなのだということか。

 

最後に、「いつ恋」でも優しいおばあちゃん役だった、八千草薫。

2019年に亡くなってしまったが、こういう役者さんがいなくなるのは実に惜しい。

 

2013年の作品なので、、、、

劇中、瑛太が「ツイッターって知ってる?」とか、「LINEってなに?」とかいうシーンがあって、スマホがガラケーにとって代わって、SNSが浸透し始めてきたころか、、、と懐かしく思った。