ムロツヨシの刑事役は、ありだと思う。
たまやんから面白い、と紹介されて見てみたが、警察モノが大好きなMATTにとっては満足度の高い一品だった。
吉川英梨による原作は2019年に書かれたが、ストーリーを追っていくにつれおそらくベースになったのは実際に起きた事件、2014年の朝霞少女監禁事件ではないかと思われる。
2000年に発覚した新潟少女監禁事件も衝撃的だった(10年間もの間、男は少女を監禁していた)が、この朝霞の事件も異常性では類を見ない事件だった。
そもそもアメリカなどならともかく、日本のような国で長期間の監禁というのは、よほどのことが無い限り実現しえないだろう。
ムロツヨシが主演だが、彼の刑事役がこれほどハマるとは意外だった。
それだけ彼の演技力が高いということだろう。
警察モノのドラマにも色々あるが、本作はまったく派手さはなく、毎日、雲をつかむような捜査を文句ひとつ言わず地道にこなしていく、本当の刑事の姿を余すところなく描いているところが好感持てる。
加えて昭和生まれのものにとっては、刑事がタバコを吸っているというのは重要である。
ムロツヨシはいかにも、な風にタバコの煙をくゆらせる。
今どきの民放ではできない演出、WOWOWだからこそだろう。
平岩紙(本作では、実にハマっている)演じる真由子は、心に傷を持つ犯罪被害者、そして佐藤隆太演じる石岡とその家族は犯罪被害者の家族である。
被害者にもかかわらず社会的弱者になってしまう理不尽。
劇中、被害少女の姉の沙希を襲う容赦ない仕打ち(これは本当に怒りを覚える)。
社会的弱者といえる、これらの人々の視点で物語は描かれている。
その一方で刑事ドラマらしく、ムロツヨシ演じる奈良は泥臭い昭和の刑事よろしく、事件に没頭し最後まで諦めず捜査を続けていく。
その奈良を支える部下たちや、2人の調査官(堀部圭亮、小松利昌も渋い)らの刑事魂に心打たれる。
演者、抑えた演出、絵作りとどれにおいても良質な刑事ドラマだった。
沙希役を演じた米倉れいあは、まだ出演作も少ないがこれからの女優さん。
今作では「コントが始まる」のちょい役とは、全然違う演技で魅せてくれた。