「死」をテーマにした重いドラマ、と思っていたのだけど、想像と違って見ていくうちに心がどんどん安らいでいくのに気づいた。
もう3年半前になるが母を亡くし、その後も身近な人の死を経験して人の死と別れというものが自分事としてあったからかもしれない。
ここ1年で見たドラマ・映画で涙腺大崩壊したのは「この世界の片隅に」と「いつ恋」くらいだったが、久しぶりに大崩壊してしまう。特に3話~5話、最終話は泣ける。
このドラマを観たのはもちろん、土村芳主演だったからなのは言うまでもないが、彼女の演技は想像と期待をはるかに超えていた。
物語はまだ若い主人公の雫が、末期がん宣告され離島のホスピス「ライオンの家」に向かうところから始まる。末期がん、ホスピスというと悲劇のヒロイン、という文脈かと思いきやそうではない。
主人公は恋愛・結婚といった幸せの絶頂にはいないし、何かを成し遂げた人物でもない。
どこにでもいる普通のOL。少し生い立ちが気の毒なところはあるけど、本当にその辺にいる一人の人間だ。だからこそ、雫に自己投影して感情が入りやすいのかもしれない。
土村芳はこの役のために少し痩せたのではないかと思う。
もともとちょっとポッチャリしていたけど、痩せて一段と綺麗になっていた。
またドラマの途中まではウイッグを付けていたが、ベリーショートにして役作りをしている。
ドラマは淡々と進んでいく。
まだ若い雫は(当たり前だが)死ときちんと向き合うことができず、取り乱し生きる気力を失いかける。
そんな彼女を「ライオンの家」のスタッフ、入居者、島の人とのかかわりが少しずつ変えていく。
劇的な出会いは無い。ドラマチックでもない。
そこにあるのは、ごく普通の日常なのである。
ただ違うのは、入居者がどんどん旅立っていくこと。
そして徐々に雫の体調も悪くなっていき、6話以降はほぼ寝たきりに。
奇跡も起こらない。
けれど、雫は最後までしっかり生きる。
死を受け入れる、というより生き続ける努力をする。
生きることに幸せを感じる。
最後まで頑張ろうとする。その姿が美しい。
しっかり生きたからこそ、死があるのだ、ということなのだと思う。
つまらない人生なんてない。
きっと一生懸命生きた人は、かかわった人たちの心を豊かにしているのだろう。
最終話の後日譚は、そういったことを示唆している。
土村芳は20~30代の女優さんの中では着実にステップアップしているように見える。
このドラマの一番の見どころは、雫が父親に電話をして自分が病気で余命いくばくもない、と言う事実を初めて伝えるシーン。
このシーンの土村芳の演技が本当に素晴らしい。
完璧に雫と同化している。自然な演技。
やりきれない思いがひしひしと伝わって来て、泣かずにはいられない。
彼女はこの夏のNHKドラマ「二十四の瞳」でも主演を張る。楽しみだ。
これまでほとんどの役柄が、優しいいいひとばかりなので、ちょっと意地悪だったり悪女役も見てみたい。
演技力という点ではもっと評価されてもよい女優さんと思うのだけど。。。
NHKらしく脇を固める俳優陣も豪華だが、特に鈴木京香と石丸幹二がよかった。
この二人の存在と演技が物語をしっかり支えている。
最後に、、、、
田中麗奈が久しぶりに出演。
役名は「夏子」。
なっちゃん。。。。。
だから田中麗奈だったのだろうか・・・・