本日(27日)、深谷駅近くの滝宮神社で開催された

第一回深谷ねぎまつり

を訪れました。

 深谷市に長年大きな恩恵を与えてくれた「深谷ねぎ」を中心とした食への精一杯の感謝をしよう、ということで行政ではなく市民の側から立ち上がった深谷市初の「まつり」です。

 このまつりは2部構成となっていて、第一部は「深谷ねぎの奉納」であり、第2部「ねぎの市」ではねぎを中心とした飲食、各イベントが繰り広げられました。その象徴が泥つき深谷ねぎの一本焼き、

「深谷カルソッツ」

でありました。

 「深谷カルソッツ」…私にはとても思い入れ強い活動です。もやしとは関係ありませんが、一人の食の提供者として、「カルソッツ」に関わってきたものとして今回の「深谷ねぎまつり」で響いたこと、ここに記します。

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 2年前の1月、さいたまスーパーアリーナで毎年開催される「農商工連携フェア」に私も加入している深谷市産学官連携プロジェクト「ゆめ☆たまご」が参加することに際し、

『深谷で最も知名度のある農産物、「ねぎ」を正しくきちんと伝えてみよう』

という意思の下、「ゆめ☆たまご」と深谷ねぎの繋がりが始まりました。

 そしてバラエティに富んだ深谷ねぎを正しく発信する手段として、私の発案で深谷市各地で産する深谷ねぎを品種別、産地別で食べ比べてみる

ききねぎ

という試みが為されました。この時はゆめ☆たまごメンバーが誰でもねぎに異様なほど関心を持っていました。

さらにメンバーの飲食店が教えてくれた

「泥ねぎ焼き」

の驚くべき美味さを感動し、

「この食べかたを広げたい!」

という強い想いがメンバー間に芽生えました。その後メンバーの一人、後に「深谷ねぎの現象学」という作品を完成させた、塾経営者小林真がスペイン、カタルーニャ地方にある「泥ねぎ焼きまつり」の情報を偶然ラジオから仕入れ、調べたところそれは「カルソッツ」という料理名であり祭りの名称であったことから、「まずはやっちゃおう」と後先考えず先走った小林と、彼の勢いに付き合わされた(笑)私の二人で「個人的に」

第一回深谷カルソッツ

と銘打って敢行したのが、ほぼ2年前、1月29日のことでした。

 あの時はゆめ☆たまごメンバーや友人を頼り、強引に5品種の深谷ねぎと熊谷市のめぬまねぎを集め(笑)、同じくメンバーであり後のねぎまつり実行委員長であるイタリア料理店オーナー栗原氏に本場カルソッツよろしく「ロメスコソース」と「パンコン・トマテ」を拵えていただき、ちっちゃい家庭用のバーベキューコンロに火をおこして細々とねぎを焼き続けました。一応有料でありましたが、ほとんどのお客様が警戒して(笑)寄り付かず、試食ばかりで終わりましたが、それでもまずはやり遂げた充実感はありました。

 それは「ききねぎ」から続く“食の基本”に沿った、つまり深谷ねぎを単一化せずに、品種別に分類し味を比べさせ、ねぎの多様性を提示しようという理念が達成されていたからです。それが「深谷ねぎ」に対する最大の敬意であると思うからです。

…それから…

「ゆめ☆たまご」が「深谷カルソッツ」の理念に賛同し、市内の既存の祭りに大々的に参加してその存在感を示し、「深谷カルソッツ」は多くの人に知られることになりました。

…そして2013年1月27日…

 このたびの「深谷ねぎまつり」では、その「ゆめ☆たまご」も関わっていませんがその意思を継いだメンバーが今回は「個の立場」で「深谷カルソッツ」を実現させました。

「深谷ねぎまつり」のカルソッツエリアへ行って私が最初に目にしたのが、品種別に並べられたカルソッツ用の深谷ねぎでした。「ゆめ☆たまご」も私も関っていなくても当初からの理念はきちんと形になっていました。



 小島深谷市長の計らいもあって、群馬県下仁田町も「下仁田ねぎ」を持って参加、「下仁田ねぎ」は一緒にカルソッツ台に乗って焼かれていました。深谷カルソッツの歴史上(2年だけですが)画期的な出来事です。



…これは本当に偶然でしょうが、第1回カルソッツと同じ状況…「深谷ねぎ5種、市外のねぎ1種」になったわけです。

「深谷カルソッツ」のもう一つの特徴、深谷の飲食店が考え出した「カルソッツ用ソース」もずらりと並びました。多くの人が関わり、深谷ねぎの美味しさを多角的に楽しみ、深谷ねぎの魅力を味わってもらうのが「深谷カルソッツ」です。

 沢山の人が、お金を払ってねぎを選び、カルソッツ台に乗せ、誰に教わることもなく、自分でねぎを剥いて、ソースを選び、かぶりつき、次は他のねぎを選んで食べ比べる…その光景は「昔から当たり前のように存在した深谷の風物詩」のようでもありました。あの寂しかった(笑)第一回の時を思い出すと感慨深いものがあります。

 最初は想いを持った「個」から始まり、そこに「市」が賛同し絡む事で大きく広がり、そしてまた「深谷ねぎまつり」では「市」から想いを持った「個」に戻り、しかしさらに大きく展開された…もはや日常というレベルにまで「深谷カルソッツ」を根付かせました。その信念を貫いたままここまで普及させてくれた「ゆめ☆たまご」、そして「深谷ねぎまつり」を実現させた皆様には一個人として本当に感謝をしています。


月刊誌「現代農業」は志ある国内の農業従事者のバイブル的存在でしょうか。


その最新号(2月号)のテーマは「豆」ということで、「現代農業」から私が作る7種類の埼玉県産在来発芽大豆「彩7」の紹介する原稿の依頼を受けたのが10月のことです。もちろん喜んでお受けしましたが、私にとって「彩7」の紹介だけでなく「農業の本」に取り上げていただいたことが嬉しかったのです。「もやしはれっきとした野菜であり、工業製品でなく農産物である」と信じていましたから。

依頼された原稿の文字数は800文字程度でありましたが、思い入れの強い彩7を語るには800字じゃとても足りません(笑)。なので自分の中でできるだけまとめたものを提出し、編集の方に

「自分じゃこれ以上文字を減らせないのでそちらで編集してください」

とお願いしましたら編集部の方でページ数を増やしていただき上手にまとめていただきました(笑)。



「七色の発芽大豆 彩7(いろどりセブン)」、ここではその原文の方を載せてみます。

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 もやし屋である私はしばしば納品先の産直店でもやしの店頭販売を行ってますが、中国産野菜がバッシングされていた頃、一部のお客様から「もやしって豆はみんな外国産なんでしょ?豆(種)から国産のもやしってないの?」と尋ねられ返答に窮したことがありました。その苦い体験から「いつかどんなお客様に対して胸を張って提供できる国産、それも地元埼玉県産原料のもやしを作ろう」と決意するようになったのです。 



 幸運なことにその頃埼玉県は「県産在来大豆」のPRを推し進めていました。2010年の3月、在来大豆普及を担当する県職員の方が私に代表的な在来大豆数種類を提供してくれました。早速それらを発芽させもやしにして食べたらあまりにも美味しく、特に豆の部分の味の濃さ、奥深さに驚かされました。その時「こういう良いものは何としても普及させなければならない」と、在来大豆に突き動かされたような使命感に囚われ、以来私はもやし屋として埼玉県の在来大豆普及活動に携わるようになったのです。 



 最初は「大豆もやし」として売り出しましたが、お客様の感想で「豆が美味しい」というのが多かったこともあり、ならば「豆の美味さを強調するため『発芽大豆』」でいこうとなりました。そうして埼玉の在来大豆を縁起も担いで7種類使い、発芽をさせてひとまとめにした『埼玉県産在来発芽大豆“彩7”』が誕生したのです。



 なぜそれぞれの在来大豆を混ぜたか。それは「この“彩7”はあくまでも埼玉県の在来大豆たちの魅力を伝える手段であり、一つの袋を埼玉県と見立て、その中に味の違う各地の在来大豆たちが同居している、それが『彩の国』埼玉県の在来大豆本来の姿じゃないか」という理念があったからです。



 『彩7』を持って何度もお店で試食販売をしました。『彩7』はこれまでどこにもなかった食べ物。大概のお客様は不安がって素通りします(笑)。でも一度食べていただければこちらのもの。お客様は新鮮な衝撃を受けたかのようにはっと目を開きそして「…美味しい」と感想を述べます。在来大豆は農家さんが売ることはせず自家食用に栽培してきた、それこそ生産者が認めてきた豆。美味しいのは当たり前です。そして試食したお客様はこの豆について質問されます。「これどこの(何の)豆?」と。私が堂々と答えると納得してお客様は購入されます。そして私も良いものを提供した生産者として誇らしくなるのです。『彩7』、大豆の量も限られていますし、まだまだ普及には程遠いですがそれでも地元産直店、飲食店を中心に少しずつ広がっています。

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 「現代農業2月号」、今回の豆特集は国内の地豆とそれに携わる方々についての大変面白い内容となっています。国産大豆に関心のある方に強くお勧めいたします。


これは
【発芽大豆「いろどりセブン」】。

一都六県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県)からそれぞれ代表する在来大豆品種を集め、発芽させてひとつのパッケージにまとめたものです。それぞれ50gずつ個別に包装され、手造り職人による上品なバスケットに行儀よく収まっています。

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これまで私は埼玉県産在来大豆7品種を発芽させてひとつにしたのが『発芽大豆「彩7」』を販売していました。これを作りながら

「在来大豆は全国各地にある、自分が今携わっていることは在来大豆のさらなる普及を目指すもやし屋にできる価値発信、ならば埼玉県以外の在来大豆、まずは関東一都六県の大豆を集めて『彩7の一都六県版』を作ろう。各地の在来大豆普及のお手伝いをしてみよう」

と思い立ったのが今年の5月でありました。そしていろんな方の協力の下、各地の在来大豆とそれに関わる方を紹介していただき、連絡をとり、時には産地を訪ねて、ようやく…先月(11月)最後の東京産在来大豆「鑾野(すずの)大豆」を得たことで一都六県の在来大豆を発芽させた

【いろどりセブン】

が商品として完成をしたのです。

この商品にかける想い…それはここには書ききれないほどありますが、まずは商品に収まっている私の想いを綴ったリーフレット(構成:小林真)をお読みください。

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 深谷のもやし屋飯塚商店は、創業以来五十年にわたってミャンマーや中国から輸入したアズキの一種ブラックマッペと緑豆のもやしを製造してきました。いつでもどこでもできるのがもやしの長所。だからこそ私どもは仕事をしてこられたのですが、風土に根付いた食を最高と考える私には原料をすべて輸入に頼らざるをえないもやしのあり方に小さな不満を持っていました。

 そんな中、数年前に出会ったのが埼玉県産在来大豆です。農家が自分の家で食べるために育ててきた、しかし収穫の能率が悪いことから市場に出回らなかった二八種類の豆は、県農業関係者の手で長い年月をかけて集められました。そしてその味や香りは、これまで感じたことのないような〈からだへの親しみ〉に満ちた力強いものです。

 私はこの大豆をまず「豆もやし」にし、やがて発芽してすぐ二日目に食べる「発芽大豆」というかたちにたどり着きました。それが二八種の中から七つの豆を択んで商品化した「彩7(いろどりセブン)」。現代日本を覆う「グローバルな食」という大きな流れに対抗する、「風土に根ざした食材」と「食文化の継承」、「食の多様性の価値を発信」、そして「種の保存」、といった物語に満ちています。

 今回、私は埼玉県で始めたこの物語を広く関東地方に広げることを決意し、農家をはじめ多くの方々の協力を得て商品化に成功しました。一都六県の農家から在来大豆を集めた「いろどりセブン」。収穫量の関係でそれほど多くは提供できませんが、消費者のみなさんに味わっていただくことでさらに広がっていくと信じています。

まず、それぞれの豆の味の違いを
そのまま茹でて感じてください。(茹でる際に塩や日本酒を少々加えるとさらに味が引き立ちます)

「一都六県いろどりセブン」は、色とりどりの豆の個性を感じていただくために豆ごとの小分けにしました。
まず、少しずつの量を豆ごとに茹でて、そのままお召し上がりください。
茹で時間は五分ほど。熱いうちはほくほくした食感のままダイナミックな味わいが楽しめ、さめると豆ごとの個性がぐっと際立ちます。


次に、いろいろな豆をいっしょにして
お好みの料理でお楽しみください

埼玉版「彩7」は、七種類の発芽大豆をいっしょにパックしたもの。多様な豆を同時に食べることで、味の微妙な違いが奏でるハーモニーをぜいたくに楽しめる七重奏です。
ですから、「一都六県いろどりセブン」も二種類以上の豆をブレンドして料理してみてください。深谷周辺のプロや家庭では、すでにさまざまなレシピが開発されています。そのままを唐揚げに、茹でてサラダやカレーに入れたり、ハンバーグ、つくねに練り込んだり、はたまた納豆、漬物に。茹でて保存していろんな料理に使うプロは多く、冷凍するとかなり保ちます。
さわやかな味覚とカリッとした食感が発芽大豆の持ち味。同じ料理にまったく別の〈多様性〉を与えます。


飯塚商店代表 飯塚雅俊
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「いろどりセブン」、それぞれの在来発芽大豆の生まれた土地の説明、豆の特徴を簡単に記します。

☆「大白大豆(おおじろだいず)」(白大豆・白目・太粒)
群馬県利根郡片品村は水芭蕉で知られる尾瀬の群馬側の麓。関東地方唯一の特別豪雪地帯でもある。

大粒で、雪のような白い色なので「大白大豆」。目も白い。尾瀬の高原を思わせるさわやな風味を持つ。

☆「高橋在来(たかはしざいらい)」(青豆・黒目・小粒)
栃木県芳賀郡益子町は関東平野の北に位置し、南北に小貝川が流れる。益子焼で知られ、年二回の大陶器市は多くの陶芸ファンで賑わう。

生命農法研究会高橋丈夫氏が40年間育ててきれた在来大豆なのでこう呼ばれる。野性的で力強い味、しっかりした歯ごたえが特徴だ。

☆「青御前(あおごぜん)」(青豆・黒目・大粒扁平型)
茨城県那珂市は水戸市の北、ひたちなか市の西に位置する人口五万六千の都市。両市のベッドタウンとして人口が増えている。

みどりで大きな扁平型の個性的なルックス。紫色の花が咲く。味はいわゆる枝豆のようなさわやかな甘味が特徴。

☆「妻沼在来(めぬまざいらい)」(茶豆・黒目・太粒)
埼玉県熊谷市妻沼地区は利根川中流「妻沼低地」に広がる。上流から運ばれた沖積土を活かしたねぎややまいも栽培が盛んな地域だ。聖天山歓喜院が二〇一二年に国宝指定。

濃い色の豆は一般に味が強い。豆の特性ともいえる甘さやほっくりした感じがとりわけ強く出た品種で、銘菓五家寳きな粉などに利用されている。

☆「鑾野大豆(すずのだいず)」(白大豆・黒目・太粒)
東京都多摩郡檜原村は東京都本州唯一の村。ほとんどが山地で、多摩川支流秋川上流周辺に集落が点在する。

村民が八王子から持ち帰り育てられてきた大豆を、村制一二〇年記念の席で供されたのがきっかけで鑑定。地元の神社にちなんで名づけられた。黒目の外見、さつまいものような甘み、なめらかな舌触りが特徴。

☆「津久井在来(つくいざいらい)」(白大豆・黒目・中粒)
神奈川県相模原市津久井地区は県北西に位置する。相模川を城山ダムでせき止めた津久井湖は、桜、紅葉、わかさぎ釣りの名所だ。

おもに、農家が味噌用に栽培してきた。さらりとした甘み、つんとした香りを持ち、在来種としては都会的な印象がある。

☆「小糸在来(こいとざいらい)」(青大豆・白目・中粒)
千葉県君津市は房総半島東京湾側に位置し、小糸地区はその中部。地区内を小糸川が流れ、房総スカイラインが走る。

小糸川周辺で栽培されていた在来種が平成一七年に登録商標化。バランスのいいさわやかな甘味が特徴で、焼酎、枝豆コロッケなど商品化も進んでいる。

(構成:小林真)
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【発芽大豆「いろどりセブン」】は明日(20日)
明日午後3時より

「地産マルシェ三鷹店」(住所: 〒181-0013 東京都三鷹市下連雀4丁目16-6 電話:0422-70-3033)

20個限定で販売します。当日は私が直接店頭で販売をします。ひとつ700円(税別)です。一部の発芽大豆は試食も出来ます。

では皆様のお越しをお待ちしてます。


追伸…「いろどりセブン」、本日(19日)、毎日新聞埼玉県版でも大きく紹介していただきました。


 11月17、18の二日間に渡って深谷市の中心市街地で開催された『深谷市産業祭』。私が属する深谷市の産業の魅力を発信、深谷の活性化をはかる産学官連携プロジェクト『ゆめ☆たまご』は毎回ユニーク且つ本質をつかんだ取り組みをイベント会場にて披露することで定評がありますが、今回深谷市産業祭の『ゆめ☆たまごエリア』において深谷のもやし屋、飯塚商店が展開したのが

屋外イベント会場において実現した『もやしの収穫体験空間』、

【もやし屋敷】

でした。

外観はこんな感じです(笑)。



設営は前日(16日)に行いました。まずイベントで使われるテントの枠組みを使って


まずテントの内側に暗幕を張り


まわりにコンパネを立てて角材で補強します。

ドアを作って


ペンキで黒く塗って【もやし屋敷】の完成です。

…暗幕は深谷市から借りて、看板は産業振興課で作っていただき、コンパネや角材はもともと飯塚商店の倉庫に使われずに放置されていたものです。簡単に組み立てられたように書きましたが、友人の若手大工やゆめ☆たまごのメンバーの協力あって作られた【もやし屋敷】でありました。

 その後、室内に大きなブルーシートを敷き、ビールケース、野菜プラコンを並べその上に予めムロで栽培しておいたもやしをコンテナごと置いて、

 
※このようなプラスティックコンテナでもやしを育てる時は、もやしが密閉されてないため品温が下がりますので、栽培日数が通常より1日増えます。こういうのはまずやってみないとわかりませんね。

 続いて受付のテーブルを設置、消毒用アルコール、ビニール袋と懐中電灯を用意して、その脇にもやしを洗うため水の入った大きなたらいを設置しておけば【もやし屋敷】の準備は整います。

 今回はもやし一袋に詰め放題、もやしの栽培キット(定価350円)をつけて一回の収穫で500円という価格設定にしました。入場する人が500円でなく、袋を一つ持って家族・グループで入っても500円です。これなら真っ暗な部屋でもお子様は安心して収穫できるでしょう。

 収穫されたもやしは私どもの方で一度水で洗ってもう一度袋に詰めてきっちり縛ります。洗うことでもやしに付着している雑菌を落とし、品温を下げて、日持ちをよくします。

そのもやしを、お客様はそのままお持ち帰りご家庭で食べてもよし、隣接する「ゆめ☆たまごキッチン」へ持ち込んで、割引料金で「もやしの天ぷら」

「もやしピッツァ」にしてもらうことも出来るわけです。

 そして17日、深谷市産業祭の「ゆめ☆たまご」エリアの一角で「もやし屋敷」がオープンしました。

 街角で「もやしを無料配布」するイベントはかつてありましたが、栽培室ではなく、屋外での「有料もやし収穫体験」は過去に事例がないと思います。「もやし収穫体験」そのものは、これまでも地元の子供たちが先生と一緒に来たり、深谷の観光ルートに取り入れられたり(笑)、食育事業に使われたりして、ウケがいいことはわかってましたが、いかんせんまだ誰もやっていない取り組み、深谷市産業祭という大きなイベントの一角(それもあまり目立たない場所)で行う初めての試み。期待と不安が入り混じる中、通りがかる人たちの動向をうかがいつつ、「お化け屋敷」よろしく

「いらっしゃいませー。真っ暗な部屋で『もやし屋敷』でもやしの収穫体験いかがですかー。一袋もやし詰め放題、もやしキットもつけて500円。楽しいですよー。いかがですかー」

と口上を唱えます。

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 さて結果ですが、初日(17日)は20名、二日目(18日)が26名が収穫体験されました。一人で入る人はほとんどいませんでしたから、実際にはこの3~4倍の人が「もやし屋敷」に入ったことになります。収益としては初日10000円、翌日13000円で合計23000円。手間をかけた割には他の販売店舗よりも売上げが少なかったかもしれませんが、私は

『【もやし屋敷】は大成功』

であったと思っています。

 まず産業祭にいらっしゃる人たちの多くは

「ただぶらぶらとしてるか、安くてお買い得なものや、無料配布される食べ物、景品などを求めてくる、もしくは“いつもある食べもの”か話題の“B級グルメ”が目的」

としています。そういう場所で「高め(に感じる)料金を払って未知なものに飛び込む人」がどれだけいるでしょうか。ましてや「もやし屋敷」は企画そのものがまったく初めてなものであり、大々的な告知もせず、ここのブログや、私のFB,Twitterでお知らせをしたに過ぎません。
そのような中に突如出現したもやし収穫体験空間、「もやし屋敷」は前を通るほとんどの人たちの関心を誘っていました。

 入らないまでも(笑)、その異様な建物と看板にある内容を見てニコニコと笑う人、「こんなかで何をやってんだい?」と聞いてくる年配の方、特にお子様のウケは抜群で、両親やお祖父さんお祖母さんの手を引いて「はいりたいーっ」と主張する子供も沢山いました。そんな子供に熱意に負けて、渋々と500円払って、懐中電灯もって一緒に屋敷に入ったご家族が、しばらくして、今度は親御さんが袋にいっぱい詰め込んだもやしを誇らしく持って出てきたとき、その満足感溢れた表情を見て

『このイベントは大成功だ』

と確信したわけです。その後も収穫体験した方々が口々に「よかった」「面白かった」と感想を伝えます

 私はどれだけもやしを売るか、より「どれだけもやしを知ってもらうか」に主眼を置いてこの「もやし屋敷」に取り組みました。老若男女100名ほどがもやし屋敷に入ったと思いますが、この方々が「実際にもやしに触れて楽しんでもやしを知った」ならば、私の目的は達成されたわけです。そして安売りだけでない、「もやしの、もやし屋の新たな方向性」が見えてきたような気がします。今回の「もやし屋敷」のコンセプトはまた違った形、もっと負担の少ない形で再現できそうな気もしてきました。

 「深谷の産業の魅力を知ってもらう場」であることが本来の産業祭であると思います。そういう意味でも今回産業祭の中で展開した「もやし屋敷」は最もその在り方に則した取り組みであったと自負しています。

 このたびの産業祭におけるもやしの収穫体験空間【もやし屋敷】は、深谷市産学官連携プロジェクト「ゆめ☆たまご」の理解、協力あって初めて実現にこぎつけました。そこで得たものは大変大きく、深谷のもやし屋、さらには国内のもやし生産者に大きな希望を見出させるヒントになったと思います。

 改めて「ゆめ☆たまご」の皆様には感謝申し上げます。


あす17日とその翌日18日は深谷市の中心市街地で恒例の

深谷市産業祭

が開催されます。

 私は深谷市商工振興課が立ち上げた産学官連携プロジェクト「
ゆめ☆たまご」に所属していますが、今回も「ゆめ☆たまごの一員」として産業祭に参加することになりました。

 正直申しますとこの数年はイベントの企画・参加が続いて少々イベントに疲れていましたので『今年の産業祭は…別に出なくてもいいかな…』という気持でした。もやし生産者があの大きな舞台で今までやってきたこと、つまり

『もやしを伝え、販売する』

以上の何が出来るだろうか…もう何もすることは無いのじゃないか、と思っていました。

 しかし、意外なところでヒントを戴きました。それは「ゆめ☆たまご」の会議で産業祭に出るかどうかを検討している時でした。同じメンバーの深谷の志高き漬物屋さん、「
マルツ食品(株)」の鶴田健次社長が

「(産業祭で)もやしの収穫体験をやったらどうだろうか?」

と提案したからです。

 異業種の他社に対しても堂々と企画を提案してくる風通しのよさが「ゆめ☆たまご」ならではです(笑)。それを聞いて私もハッと閃きました。

『…それなら…出来るかもしれない!』

 言うまでも無いことですが、もやしは圃場(はたけ)で作らない、土壌の養分なしに種子(豆)の栄養分と水だけで育成できる野菜です。つまりもやしを栽培するには、それに適した「持ち運びできる箱」でもいいわけです。産業祭の会場は深谷の中心市街地、畑の無いここでは野菜の収穫体験などできません。しかし「もやし」ならば!イベント用の簡易もやし用暗室、いわゆる「ムロ」を作り、そこに予め会社で栽培されたもやしを畑(箱)ごと持ち込めば良いわけです。

 そして私は同じ深谷の中心市街地で開催される七夕まつりのイメージが思い浮かびました。その時だけに作られるおどろおどろしい建物…「お化け屋敷」です。「お化け屋敷」と「もやしのムロ」は光を遮った暗闇の部屋ということで一致します。祭りの一角にある謎の真っ暗な部屋、懐中電灯一つ持って暗闇の中での手探りのもやし収穫体験…これはワクワクドキドキで面白そうです。まさしく「お化け屋敷」ならぬ、

『もやし屋敷』!

 の出現です。

以下、「もやし屋敷」の概要です。

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●もやし屋敷とは?:
 まず産業祭の一角にもやしの育成室「ムロ」を設置する。ムロは完全な暗室にする。そこに持ち運び可能な箱で栽培したもやしを持ち込み、もやし収穫体験空間、「もやし屋敷」とする。



●流れ: 
 受付で参加費500円をいただき、参加者は手の消毒をしたうえで、もやしを入れるビニール袋と小型の懐中電灯を受付から受け取る。参加者は暗闇の部屋を懐中電灯一つでもやしの収穫をする。



 定員は基本5名くらい。ただし子供が参加して保護者がつくのは例外。収穫時間はあえて決めないが5分を目安とする。



 収穫が済んだ参加者はムロから退室。受付に懐中電灯ともやしの入った袋を渡します。



 受付は袋のもやしを軽く洗って(水を張ったバケツ、たらいが必要)、再びビニール袋にもやしを入れて口を縛り参加記念である「もやし栽培キット」と一緒に参加者に渡す。


 参加者はその「収穫したもやし」を家庭で調理して食べてもよいし、または「ゆめ☆たまごキッチン」
ブースへいって、もやしの唐揚げ、漬物、もやしピザなどにしてもらうことも可能。



●「もやし屋敷」の狙い:
 
 「もやし屋敷」のの体験を通じて、参加者は楽しみながらもやしというものを感覚的に深く知るだけでなくもやしの生命力に触れ不思議な感動を呼ぶはず。さらに飲食店ブースで調理してもらうことで、もやしの美味しい調理法も知ることができる。それが祭りという非日常の場で展開される『もやし屋敷』の狙いであり、もやし屋がある深谷だからこそ出来る取り組みということで、深谷のもやし屋、飯塚商店の存在を強く印象付けることを期待する。

●所要時間:
産業祭開始時間から、もやし収穫が可能なときまで。

●参加費:
一回500円。 お土産に「もやし栽培キット」(店頭価格350円)をつけて。

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※これは「もやし屋敷」建築を担当する同じ「ゆめ☆たまご」メンバーである市内の工務店「サンタイ建設」の山戸氏による図面です。おそらく世界初であろう画期的な「もやし屋敷」が具現化できるのも異なる業者が志で集まる「ゆめ☆たまご」ならではの連携あってのことでしょう。


「深谷市産業振興部」による「もやし屋敷」のシンボルデザインです。

これは本日(16日)の様子。「もやし屋敷」が徐々に作られていきます。


 これまでも飯塚商店はもやしの収穫体験を実施して、そこで多くの人が楽しみながらありのままのもやしにまず驚き、嗅ぎ、触れ、食し、五感でもやしを知りました。

 この産業祭における「もやし屋敷」は伝えるもやし屋、「飯塚商店」のこれまでの活動の集大成になるでしょう。

…明日、午前10時から。「もやし屋敷」は深谷市産業祭「こどもふれあい・深谷いいものエリア」内の「ゆめ☆たまご」ブースの一角にあります。みなさまのお越しを心よりお待ちしています。