これまで深谷もやし以外でほとんど任せていた夜のもやしの収穫作業(ムロから引っ張り出した1トン近くのもやしを確認しながら手でかき出して水槽に入れる仕事)、今月から私が担当しもう一か月になりますが、もやしへの感覚が日に日に鋭くなるのがわかります。

 先日のことです。
 最初にもやし(特に緑豆)に手を入れた瞬間覚えた違和感。底の部分に集中した“生育不良”のもやし。本来はまっすぐピンと伸びるところ、短くて曲がったもやしが出てきたら典型的な生育不良です。歩留りが悪く、水槽で洗えばすぐに底に沈むもやし。注文の量に対しすぐにもやしが足らない状況に陥ります。

一瞬、このもやしはどうしたことだ?

と思いました。しかしすぐに気づきました。…1週間前、もやしを浸漬させ発芽が始まったときの段階です。もやしは発芽が始まると「発芽熱」という熱を発します。人間でいうところの体温です。もやしの生育にはこの発芽熱は重要で、低すぎても高すぎても生育に影響します。その発芽熱を管理するのが「もやし屋」の役目です。今回のもやしですが、私が他の仕事に追われて行き過ぎた発芽熱を冷ますのに2時間遅れたことが原因です。感覚的に「大丈夫かな」と思っていましたが、やはり一部に影響が出たのです。原料である豆の鮮度、外気温なども関係してきます。新しい豆ならば大丈夫でしょうし、気温が低ければ2時間遅れで丁度良かったかもしれません。

 改めて「もやし生産」の難しさを実感しています。発芽して7日で完成するもやしは一瞬のミス、気の弛みが失敗に直結します。一度失敗をしたら修正がきかないのがもやしです。

 視点は常に7日先に。収穫(結果)から逆算して行動していくことが、もやし屋に求められている姿勢です。