「風土飲食研究会」は昨年深谷市産学官連携プロジェクト「ゆめ☆たまご」から派生した

「深谷市を中心とした地元風土に根付いた正しき食を見直し、その食のさらなる普及を地元深谷から目指し、そのための手段を研究して実践、および各方面へ提案することを目的とした」

組織で、私が代表を務めています。

先日、会員の一人、深谷の造り酒屋「丸山酒造」の丸山蔵元から丸山酒造の歴史ある酒蔵を舞台に

「日本酒の文化、伝統のすばらしさを伝え、さらに地域の食文化の新たな楽しさを提供することで、地域文化の魅力向上」

を目的としたイベントを開催したい、との提案を受けましてそれならば私たち「風土飲食研究会」で企画協力をしようということになりました。風土飲食研究会が目指す「地元風土に根付いた正しき食」はそのまま「その土地と人による長年の歴史に培われた食」と合致します。

5月13日(日)、深谷の旧き酒蔵を舞台に展開する酒を通じた食文化の発信イベント、

『金大星蔵びらき』~深谷のみたべまつり~

が開催の運びとなりました。『金大星』とは丸山酒造が長年造り続けた、丸山蔵元が自信を持って勧める酒の名称です。

風土飲食研究会は企画の協力という役割です。

この『金大星蔵びらき』に向けた、風土飲食研究会の想いをここに記します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 風土に根付いた食。それこそ本来あるべき食の形といえます。長年その土地と人によって培われてきたその食の歴史は、やがてはその土地の「食文化」として形成され、その食文化はその土地に住む人にとって「正しき食の基準」たりえるものでありました。つまり現在においてよく語られる

「食の安心・安全」はまさに土地と人によって形成された「食文化」を軸とすること

が本来であると考えます。

 戦後高度経済成長とともに日本の第二次産業は発展してきました。しかし同時にほとんどの食も工業生産化が進んだことで、安定生産、廉価供給が可能になりましたがそういった工業化された食が一般化されたことで、本来あるべき風土に根付いた食、食文化を継承する流れが途切れてしまいました。

 歴史に培われた食文化が絶たれた社会では何が起きるでしょうか。

 そのような社会ではだれもが食の正しき情報を伝えることができず、消費者も食に対する正しき情報を得る機会を失います。その一方で食における利益優先を進める勢力が食文化と離れた独自の「食の基準」を打ち出してくるわけです。他に知る術を持たない一般の消費者は、この「利益優先型の食の基準」を正しいものとしてすがることになります。

 食を利益優先型に扱うと、合理的に大量生産し、安価に供給、遠くへ運べて、日持ちもする…そういった食が基準、となります。高い利益のために品種改良を行い、コストを下げるため様々な添加物を使用し、薬品による滅菌処理を施し、莫大な量の食を遠方にまで供給する。そんな本来の自然な流れとかけ離れた食の生産・供給が現在は当たり前になっています。それが本当の安全ならば問題ありませんが、そのことで昔ではありえなかった被害も起きています。それらのほとんどは「食文化」に沿ったものであれば起こりえなかったものばかりです。その食の扱い方、特性を何も知らないで大量に市場に流す、その結果として発生した痛ましい事故が起き、行政の判断でその食全体が禁止され、その食本来の文化が消えてしまうわけですが、そんな実例は皆様の記憶に新しいものでしょう。

 もう一度、食の安心・安全の基準を利益優先の観点から、本来の「風土に根付いた食文化に支えられたもの」に戻さねばならないと考えます。まずは「風土に根付いた食の価値」を子供から大人まで、多くの人に伝え、理解していただくことが肝心です。しかしそれを推進するのは行政ではありません。最初に伝え、実践するのは「食の生産を生業とする食の提供者」でなければならないのです。日頃から「食に最も近い立場にあるもの」が、食文化の価値を率先して伝えねばならないのです。

なぜなら綿々と受け継がれた「食文化」を途切れさせたのは、

「食をよく知る生産者がきちんと自らの食の文化を伝えること」

を怠ったからなのです。かつては「食文化」を切ってしまった「食の生産者」が、今こそ「食文化」の価値を伝えるのはもはや使命ともいえます。

・・・・・・・・・・・

  深谷市には長年の歴史とともに愛されてきた「丸山酒造」という古い酒蔵があります。
 
 このたび丸山酒造の蔵元である丸山氏は、酒蔵を舞台に風土に根付いた日本酒の文化や伝統の素晴らしさを伝え、また同じく地域の食文化の価値、その新たな提案や楽しさを広く提供する、そんな企画を進めています。深谷の北部に長く根付いてきた酒蔵、丸山酒造が醸し出す、それがこの地では「必然」であった酒という食文化であります。

 酒と同じく、深谷の歴史とともに積み重ねられてきた食の文化は、肥沃な土壌から生産される米や麦であり野菜類、その生産に携わる農家、野菜の伝統的保存技術である漬物や、地元の食を調理して食べさせてきたあまたの料理人たち、そしてそれらの食を糧としてきた住民たちが築き上げたものです。それらが一つになって風土に根付いた食文化の正しき魅力とさらなる可能性を、旧き酒蔵、「丸山酒造」が主催する「金大星蔵びらき」で、老若男女、こどもから大人まで多くの人たちに発信、ご理解していただければ幸いです。


 酒も、米も、野菜も、漬物も、それらを使った料理も、住民もすべては「風土に根付いた正しき食文化」でつながります。まずは「地元深谷の旧き酒蔵から地元食文化の魅力を発信しましょう」。そのために私たち風土飲食研究会は『金大星蔵びらき』に協力をします。

・・・・・・・・・・・・・・・・

 風土飲食研究会は「造り酒屋」の丸山氏をはじめ、「もやし屋」「農家」「漬物屋」「とうふ屋」「五家寶屋」といった食の生産、提供を生業とする事業者や、風土の食を愛する「飲食店の店主たち」風土食文化の価値を見直そうと必至になっている「販売店店主」らで構成されています。みな大量生産安価販売から離れ、正しき食を追い求めんとする素晴らしき食の提供者であります。

 私たちは目先の儲けを目論みこの活動をするわけではありません。私たち自らが、

「地元深谷の食文化の価値を発信させ、深谷の人たちが地元食文化を理解する」

 ことで私たちの進もうとする商売が成り立つ環境ができあがるのです。

 私「深谷のもやし屋」もしかり。多くの人が「地元の食文化を理解して初めて」、私がもやし屋として深谷で仕事を続けることができるのです。