先週のことです。
長年取引をしている、ある地方を中心に多店舗展開をしている地域密着型のスーパーがあるのですが、その一店舗の青果担当の方から電話がありました。まず今月の中旬から店内改装のためお休みする、何日から再開します、という話を受けてその後です。
「実は近くのライバル店がもやしを『毎日9円』で売っているんです。うちは飯塚さんのもやしを29円で売ってますがとても勝負になりません。せめてうちのもやしも19円で売りたいのですが、15円で卸してもらえるでしょうか。もう上(本部)からそう言われているんですよ」
食品において低価格競争のトップグループにあるもやしです。もやし生産者ならば一年に数回そういったお願いを取引先から受けるはずです。基本的に無意味な値下げを好まない私ですが、取引先のお願いですと経営者の立場ではこう答えざるを得ません。
「そうですね。正直15円はきついですけど、『せめて量を沢山買っていただけますか』。今は大体一日に20~40袋くらいですが、それを200袋にしていただけたら15円で卸します。」
…まったく馬鹿馬鹿しい。自分でも嫌になるような取引です。しかし下げた分は量で稼がなければなりません。電話先の担当者は
「…200袋はきついですが…せめて100袋ならば頑張ります…」
と苦しそうに応じましたので、私は
「では○○店に限り一日100袋15円卸しで承りました」
と伝えて取引は成立となりました。電話を切った後、私はなんとも苦々しい気持ちに囚われました。この青果担当者も「面倒くさいことになった」と頭を抱えていることでしょう。
そのお店では飯塚商店のもやしの他に、他社の緑豆太もやしも扱っていました。当然、飯塚商店の取引分を無理やり増やせば、他社のもやしの注文は減るわけです。
・・・・・・・・・・・・・
ふと3年前、2009年の7月、当時一番の取引先だった大手スーパーの本社での商談時、青果バイヤーが私に言ったことが蘇りました。
「飯塚さん、実は上から『19円売りでも利益が取れるもやしを探して来い』と言われてさ、それで新潟の○○さんのもやしを扱うことになったんですよ。悪いけど今後注文が減ると思います」
そして当時このスーパーでは日量3000袋あった出荷が、みるみる減らされ今では一日300~400袋…十分の一になってしまい、飯塚商店が深刻な経営難に陥る原因になったわけです。後になって知ったことですが、その時スーパーともやし会社は「毎日決まった数量で安価取引」の契約を結んでいたのです。
仕入れる量が毎日決まってしまえば、各店舗の青果担当はまず契約されたもやしを売りさばくことを最優先するでしょうから、どれほど飯塚商店のもやしが話題になろうとも、早く棚が空いてしまおうと、絶対に注文を増やしません。当時お客様から何度も
「いつも行くスーパー、以前はあったのに今はお宅のもやしはいつ行ってもない。」
という電話がありました。私は申し訳ない気持ち一杯に
「申し訳ないです。是非お店にそう伝えていただけますか」
とお客様に答えるしかありませんでした。
・・・・・・・・・・
今回、一店舗に限ってですが私は「低価格」で他社のもやしの量をぶんどってしまうことになりました。その店舗では、他社の緑豆太もやしの固定客がいたはずです。かつて飯塚商店が苦しめられた低価格によるシェアの強奪、その流れに加わってしまった自分に腹が立ちます。
そして気持ちの中では、
『いつか、このもやしの低価格販売という負のスパイラルを止めたい』
とあります。
やはり生産者・販売者・消費者の共通理解の構築でしかないのでしょう。今回のような量販店に属する販売者がまだまだ価格競争の真っ只中で、きちんと扱う商品の正しさや、適正価格を伝える手間を省いている現状では、まずは生産者が自ら動いて消費者に伝えていく姿勢を打ち出すことが必要なのだと思います。
長年取引をしている、ある地方を中心に多店舗展開をしている地域密着型のスーパーがあるのですが、その一店舗の青果担当の方から電話がありました。まず今月の中旬から店内改装のためお休みする、何日から再開します、という話を受けてその後です。
「実は近くのライバル店がもやしを『毎日9円』で売っているんです。うちは飯塚さんのもやしを29円で売ってますがとても勝負になりません。せめてうちのもやしも19円で売りたいのですが、15円で卸してもらえるでしょうか。もう上(本部)からそう言われているんですよ」
食品において低価格競争のトップグループにあるもやしです。もやし生産者ならば一年に数回そういったお願いを取引先から受けるはずです。基本的に無意味な値下げを好まない私ですが、取引先のお願いですと経営者の立場ではこう答えざるを得ません。
「そうですね。正直15円はきついですけど、『せめて量を沢山買っていただけますか』。今は大体一日に20~40袋くらいですが、それを200袋にしていただけたら15円で卸します。」
…まったく馬鹿馬鹿しい。自分でも嫌になるような取引です。しかし下げた分は量で稼がなければなりません。電話先の担当者は
「…200袋はきついですが…せめて100袋ならば頑張ります…」
と苦しそうに応じましたので、私は
「では○○店に限り一日100袋15円卸しで承りました」
と伝えて取引は成立となりました。電話を切った後、私はなんとも苦々しい気持ちに囚われました。この青果担当者も「面倒くさいことになった」と頭を抱えていることでしょう。
そのお店では飯塚商店のもやしの他に、他社の緑豆太もやしも扱っていました。当然、飯塚商店の取引分を無理やり増やせば、他社のもやしの注文は減るわけです。
・・・・・・・・・・・・・
ふと3年前、2009年の7月、当時一番の取引先だった大手スーパーの本社での商談時、青果バイヤーが私に言ったことが蘇りました。
「飯塚さん、実は上から『19円売りでも利益が取れるもやしを探して来い』と言われてさ、それで新潟の○○さんのもやしを扱うことになったんですよ。悪いけど今後注文が減ると思います」
そして当時このスーパーでは日量3000袋あった出荷が、みるみる減らされ今では一日300~400袋…十分の一になってしまい、飯塚商店が深刻な経営難に陥る原因になったわけです。後になって知ったことですが、その時スーパーともやし会社は「毎日決まった数量で安価取引」の契約を結んでいたのです。
仕入れる量が毎日決まってしまえば、各店舗の青果担当はまず契約されたもやしを売りさばくことを最優先するでしょうから、どれほど飯塚商店のもやしが話題になろうとも、早く棚が空いてしまおうと、絶対に注文を増やしません。当時お客様から何度も
「いつも行くスーパー、以前はあったのに今はお宅のもやしはいつ行ってもない。」
という電話がありました。私は申し訳ない気持ち一杯に
「申し訳ないです。是非お店にそう伝えていただけますか」
とお客様に答えるしかありませんでした。
・・・・・・・・・・
今回、一店舗に限ってですが私は「低価格」で他社のもやしの量をぶんどってしまうことになりました。その店舗では、他社の緑豆太もやしの固定客がいたはずです。かつて飯塚商店が苦しめられた低価格によるシェアの強奪、その流れに加わってしまった自分に腹が立ちます。
そして気持ちの中では、
『いつか、このもやしの低価格販売という負のスパイラルを止めたい』
とあります。
やはり生産者・販売者・消費者の共通理解の構築でしかないのでしょう。今回のような量販店に属する販売者がまだまだ価格競争の真っ只中で、きちんと扱う商品の正しさや、適正価格を伝える手間を省いている現状では、まずは生産者が自ら動いて消費者に伝えていく姿勢を打ち出すことが必要なのだと思います。