これはもやし(ブラックマッペ)の根の部分を袋にまとめたものです。
“ありのまま”を尊重する飯塚商店では最近の主流であるもやしの根切り処理をあえてしていませんが、それでも水槽で大量の(1t以上)もやしを洗うと、その時に切れた細い根の部分が沢山水面に浮かび上がってきます。普段は捨ててしまうその切れた根の部分を集めてみました。
↑ではこれは何でしょう?
これはもやし原料であるブラックマッペの豆の殻です。やはり大量にもやしを洗っている際に、ほとんどの殻はもやしから分離されます。これも根の部分同様、普段は捨ててしまうのですが今回あえて集めてみました。
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地元深谷市に店を構える
【うどん茶屋・三男坊(さんなんぼう)】
は大将の高橋氏によるしっかりとしたうどん・そばの技術と、奥様である女将の斬新な食への取り組みが同時に楽しめる既存のうどん屋の概念を覆すユニークなお店です。
深谷市が推進している産学官連携事業『ゆめ☆たまご 』を通じて、【三男坊】と知り合った私は先に見せた『もやしの根と豆殻』で何か料理ができないだろうか、とお願いしたところ・・・・
・・・お分かりでしょうか。【三男坊】さんはいとも簡単に
『もやしの根の天ぷら』
『もやしの豆殻の天ぷら』
を上手に作ってくださいました。もっとも普段から仕事として天ぷらをお客様に沢山出しているうどん屋さんです。この程度の仕事はお手の物なのでしょう。
『もやしの根の天ぷら』『豆殻の天ぷら』は共にシャリシャリと揚がった根、豆殻の部分が噛んだ時に非常に心地よく今までに無い食感で楽しめました。これで根も殻も十分天ぷらの材料と成り得ることも証明できましたし、この食材には『もやし屋との協力がなければ絶対に手に入れられない』・・そんな希少性もあります。何よりも
料理人がもやしの商品価値が無く捨てられた部分に光を当てたことに、もやしの正しき広がり、食が広がることの大きな意義を感じるのです。
もう一つ【三男坊】さんのもやし作品を見てみましょう。
これは埼玉県産発芽大豆から作った
『発芽大豆納豆』
です。発芽大豆の納豆化は国内でも初めてではないでしょうか。
この『発芽大豆納豆』、蒸かした発芽大豆に市販の納豆を混ぜ時間を置いただけなのだそうです。そして出来上がったものは、納豆菌が繁殖しキチンと糸をひきますし歯ごたえのあるはずの発芽大豆も程よく発酵されたようでふかふかと柔らかくなりました。嬉しいことに納豆独特の薬品臭(アンモニア臭)がまるで無く、逆に在来大豆の風味は豊かで、新鮮かつ良質な納豆を食べているようでした。栄養価ですがこれはあくまでも発芽大豆ですので、大豆には無いビタミンC、アスパラギン酸、ギャバといった遊離アミノ酸も含まれていることでしょう。
もやしの捨てていた部分を美味しい天ぷらにする。
大豆とは異なる発芽大豆を納豆にする。
もやし生産者である私の身の丈をはるかに超えた、食べさせるプロである料理人の食を広げる力。このたび深谷のうどん屋さん【三男坊】が作ったオリジナルもやし料理は、安さだけが魅力とされたもやしの可能性を広げ、食をほんとうの広がりとは何かを考えさせてくれました。





