昨年の深谷市産業祭において、モノを売らないという制約の中、深谷市産業の発展と自らの想いを伝えるという目的で市内の各事業者が集まり、8千人近くの来場者に強き印象を与えた深谷市産学官連携事業、それが
『ゆめ☆たまご 』
です。私は“深谷のもやし屋”として『ゆめ☆たまご』の舞台を借りて、もやしと食のあるべき形を発信しました。
その『ゆめ☆たまご』が再び始動しました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
来る2月3日、さいたまスーパーアリーナで開催される大きなイベント、
『埼玉県農商工連携フェア』。
そのフェアに『ゆめ☆たまご』が3つのブースを使って参加します。
ビジネスマッチングが主旨としたこのイベント、来場者は仕事で食に関わる方々です。このイベントで発信したものをビジネスに繋げることが最終目標となります。
『ゆめ☆たまご』では、市内の食品事業者がそれぞれ自慢の生産物、商品を紹介するわけですが、ただ並べて試食させるだけでは、面白みに欠けてなんのインパクトにもなりません。
“伝えること”が『ゆめ☆たまご』の在るべき姿です。
今回いくつかのテーマを絞り、『ゆめ☆たまご』的に伝えてみます。そのテーマの一つが、深谷で最も有名な農作物、いわゆる
『深谷ネギ』
なのです。
さてこの深谷ネギ、有名なブランドではありますが 農家、飲食店と話し合うにつれ、
同じ深谷市内でも品種・産地が バラバラなネギをひとくくりに『深谷ネギ』として扱ってもよいものか
との意見が出てくるようになり
(実際最近の深谷ネギは硬くて美味しくないという 批判も出ています。私も実はそう感じていました)
、産地・品種の違いによる大まかな定義づけ をすべきという意見が 『ゆめ☆たまご』の会議から持ち上がりました。
そこで2月3日の『埼玉県農商工携フェア』において、深谷一番の作物である 深谷ネギをまったく違った視点で紹介しようと考えました。つまり
深谷のネギを産地・品種ごとに細分化 して各地区、または各品種のネギの味の違い、料理法の違いなどをきちんと明確に した上でいわゆる『深谷ネギ』のPRをしよう
となったのです。フランスワインで有名な原産地呼称制度に近い形といえばわかりやすいでしょうか。単なる深谷ネギという記号ではなく、深谷産のネギを深く掘り下げて、その情報を提供するのです。おそらくネギの品種など種苗会社、農業者以外にはほとんど知られていないでしょうし、ましてや品種・産地による味の違いなど誰もわからないでしょう。その部分を深谷ネギを誇りとする深谷市が発信するのです。
まず17日では、前段階として市内の各地区のネギを並べ、ゆめ☆たまご参加事業者だけでなく、ネギ生産者、食品業者、飲食店、小売業、農業振興に関わる県職員らが集まり、共に各ネギの味を確かめます。つまり深谷市内のネギによる
『ききねぎ』
です。品種によってどれほど違いがあるのか。さらに利根川流域の産地と離れた産地とのネギの質の違いは・・・。17日に10種類ほどのネギで取り組む予定です。
ネギの産地と品種の違い・・・例えば出品するネギの一部を紹介しますと・・
これらすべて(生産者はもちろん)品種、土の質が違います。甘み、辛味、硬さなどでは大きな違いが感じられると思います。また同品種であるが、産地が変わると質に変化があるのかも確認をしてみます。「夏扇4号」、「ホワイトスター」、「宏太郎」の品種でそれが可能です。
味だけでなく、冬だけの産地、通年栽培が可能な産地といった各産地による長所を際立たせることも期待できます。
出品されたネギは生と加熱されたもので食べます。生食に向いている、火を通したほうが劇的に変わる、といった発見もあるかもしれません。
この『ききねぎ』で導かれた評価を農商工連携フェアで公表した上で深谷のネギのPRにします。
私はこのようにネギの本当の情報をキチンと伝えた上で、納得して使ってもらうことが 生産者と消費者の相互理解に繋がり適正価格の維持に繋がり、結果的に深谷ネギのブランドイメージを上げる ことになると考えています。これこそ『ゆめ☆たまご』的、食の活動でありましょう。
この『ききねぎ』は明日17日夜に開かれる『ゆめ☆たまご』の企画会議のあとに行われます。場所は深谷公民館調理実習室。時間は午後8時ごろから始める予定です。
・・・・・・・・・・
最後にこの『ききねぎ』企画の発案、率先して進めているのは深谷のもやし屋である私です。なぜもやし屋がネギのことを?と疑問に思われるかもしれません。お答えします。
もやし屋の経験から、きちんと深く伝えずにブランドイメージだけに頼った売り方をしているのは非常に危険な傾向ではないかと思うのです。私はその危機感から発案をしたわけです。一度ブランドのメッキがはがれると、つまり
『深谷ネギは名前だけであまり美味しくない』
と一般的に認識されたら大変です(つまり今のもやしと同じ状況です)。『深谷ネギ=安くていつでも大量に入るネギ』と誰もが思うようになったら、あとは価格だけの競争になりかねません。そうなったら良いものを作ろうとする生産者の努力がまったく報われないことになります。
逆にしっかりと伝えることで納得した消費者から大きな信頼を得て、価格だけに左右されない真のブランドを確立させることが可能ではないかと思うのです。
そして地元の産業を守ろうとすることは、深谷で生きるもやし屋を守ることにもつながると私は信じています。