9月11日(土)、日本テレビ系列で放映中の人気番組


満天☆青空レストラン


深谷のもやし屋飯塚商店 とそのもやし が紹介されました。当日は私も楽しく番組を鑑賞しました。今回はその番組を見た感想を述べてみます。


 まず取材を受けて本当に驚いたのは、この『満天☆青空レストラン』という番組はバラエティの形をとっていますが、取材・撮影は相当深い部分まで踏み込んでいたということです。打ち合わせと撮影に5日間は要しました。もやしの栽培から商品化までのすべての過程をカメラに収めてました。ディレクターのT氏ともどれだけ熱く語り合ったでしょうか。それらの大部分は未放映となりましたが、限られた本放送に流れた30分はまさしく飯塚商店もやしの結晶ともいえるものでしょう。


番組で流れた印象的な映像の数々・・・


1)仕込みタンクで浸漬されたもやしが発芽したときに浮かび上がる泡。


・・・植物の命を見ることは出来ませんが、この泡の一つ一つがもやしの命の息吹を見ることができます。


2)ブラックマッペもやしの発芽から三日目の姿。


・・・この姿からいかにもやしにとって豆と根の存在が大きいかをお分かりいただけたでしょうか。


3)ぎっしりともやしが詰まっている栽培枠から引き抜いたとき、堂々と現れる細くて豆も豆殻もあり、根もしっかりと伸びたもやしの姿 。


・・・成長抑制ホルモン、エチレンを極力控えたもやし本来のありのままの姿がここにあります。深谷の旧きもやし屋、飯塚商店が最も大切にしてきた形です。


 これだけ長年にわたって普及されているもやしですが、おそらくこのようなありのままのもやし映像が大きく流れることは今までなかったと思います。



 そしてもう一つの画期的な部分が『もやしの味』への言及でした。


番組冒頭、私が宮川大輔さん、木村祐一さんにもやしの栽培過程を案内する前にこう聞きます。


『もやしの味ってわかりますか?』


と。


 悲しいことに現在ほとんどの方がもやし本来の味を知らないままになっています。食品から味という価値を失ったらそのあとに残るものは何でしょうか。原料高騰の中、今でも不毛な低価格争いを繰り広げているもやし業界の現状がその答えです。もやしのあり方を問わずに闇雲に目先の利益ばかりを追いかけてきたもやし業界にも責任はありますが、47年間もやしと共に生きてきた私はそんな現状が許せません。味を追求するこの番組の方針と私の想いが一致したのが冒頭の質問でした。

 私と共に栽培室でありのままのもやしに触れ、食した結果はお二人の表情のとおりです。最初はシャキシャキ感とみずみずしさでしか思い浮かばなかったお二人のもやしに対する味の価値観が大きく変わることになります。


食感では


『(細いほうが)筋肉質』

味については


『メチャクチャ濃い』

『(特に)根の部分が味が濃い』


『(もやしから)ダシが出そうだ』


そういった言葉がポンポン飛び出します。


 特に木村さんはやはり非常に味に敏感な人で、未放映でしたが私どもの緑豆細もやしを生でかじったときに

『ほのかに梨の甘みがする』

と素晴らしい表現をしてくださいました。実は栽培室でスタッフが他社の緑豆太もやしを用意して食べ比べもしたのです。宮川さんも、木村さんも緑豆太もやしと私どものもやしの味の違いに驚いていました。お二人のもやしの味の驚きにはそうした下地があったわけです。 そしてお二人がもっとも味で驚きを見せたのが
埼玉県産在来大豆もやし であったことも付け加えておきます。 

 台本はあるようでないようなものでした。ディレクターT氏からも存分に想いを伝えてくださいとの指示もありましたので、栽培過程を案内するやりとり、物語風に第一章、第二章・・・・それで完結(笑)と進めたのはこれは私のアドリブです。お二人のノリがとてもよかったので、こちらもそのノリに合わせた形にしました。笑いながら食に親しむ番組ですからね。食べ物を知るのはこういうのでいいと思います。食とは楽しいものであるべきですから。難しいものではないのです。無理に知識を詰め込むものでもないのです。
 しかしながら最後はもやしの栽培における基本理念を作り手としてキチンと語れたので満足でした。


 しっかりともやしの本質を捉えてくれた番組を製作していただいたスタッフの皆様、もやしの世界に立ち会っていただき味を伝えてくれた宮川大輔さん、木村祐一さんに感謝しています。


 根があり豆のあるもやしの姿で敬遠され、味の無さを認められてしまっている現在の悲しいもやし事情に、この番組が一石を投ずるきっかけになってくれれば幸いです。


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次回は番組で紹介された料理についてお話します。