本日(1月21日)の午前10時過ぎ、かわいらしいお客様がたくさんいらっしゃいました。
私の子供達と、そして私自身の母校であり、昨年はPTA会長も務めさせていただいた、縁の深い地元の幼稚園、
「深谷市立明戸幼稚園」
の15名の園児達が園長、先生方に連れられて歩いて「もやし見学」に来られたのです。実はずいぶんと前から園長には
「いつか園児たちを見学に連れてきてください」
と話していました。そして本日実現の運びとなったわけです。
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見学の日程が決まった時(数日前のことです)、私はちょっと考えました。地元のもやし屋ならではの、4歳~5歳といった小さな子供達の心に残るもやし体験はできないものかと。そして出た答えは、
「五感でもやしを体験すること」
です。理屈ではない。ともかく見て、触れて、味わう・・・それが大切だろうと考えました。そして
「もやしの収穫体験」
をしてみようと試みました。こんなこともやし屋でなければ絶対に出来ません。
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私はまず事務所で園児たちに名前を書いたビニール袋を持たせました。
そしてみんなを(園児たち、先生方、そして園児たちと一緒に見学に来た母親4名と未就学児数名も加わり、総勢30名ほどになりました・・・)つれて、2種類の原料を教えます。
手にはこんな時の教材としてもっとも適している、
「もやしの絵本」
を持って(笑)、絵本を開いて見せ、読み聞かせながら豆の説明をします。
こんなふうに・・・・
「『もやしのきょうだい、も~やんは、アジアのミャンマーという国から来たブラックマッペという豆の中で・・』
はい。みなさん、これがそのブラックマッペです。見てください。」
すると担任の先生がうまく乗ってきて、
「はい。これがブラックマッペですよ。みなさん言ってみてください」
「ブ・・ラック・・マッペ!」
と、それなりの授業風にしてくれました(笑)。
園児たちにはその豆を触ってもらいます。どのくらい小さいのか。かさかさに乾いているのか。黒い豆と緑の豆ではどちらが大きいのか、手で触れて学んでもらいます。
つづいて仕込みの部屋に移ります。
時間的に丁度、仕込まれた豆(水で浸けこまれた豆)が発芽しています。さっきの乾いた豆がどれくらい水を含んで、ふかふかに柔らかくなっているかを芽生えが始まっているかを見て触れてもらいました。この頃になると園児たちの黒い目がさらに大きくまん丸になっています。
絵本ではこの部分に当たりますが、やはり実際見ればそうとう印象が変わることでしょう。この浸けこまれた水の匂いを嗅いだ誰かが、「まめのにおいがする」と的確なことを言いました。
そして栽培室、ムロに案内します。シャッターを開け、突然開かれたまっくらな異空間に園児たちの顔が少し強張ります。怖かったかもしれませんね。しかしそこは子供達です。すこし明かりをつけて、一度中に入ればすぐに順応して興味津々で栽培枠を覗き込みます。園児たちの身長ではもやしのところまで届かないので、私はもやしをごっそりと掴み取り、そのもやしを園児達が摘み取るようにしました。園児たちはおっかなびっくり、すこしずつもやしを摘んでは、持っている袋に入れました。
さて収穫が終わったら、次は食べることです。私は先ほど収穫に使った栽培枠の中のもやし(緑豆7日目)を掴み取って園児達の前に差し出して、
「食べてごらん」
と勧めます。収穫した野菜をそのまま口にする・・・。土も農薬も一切使わないもやしだからこそできることでしょう。
すると園児たち、最初はちょっとためらいますが(もやしの生なんて食べたことないでしょうから当然でしょう)、一口食べた後は、再び私のところにエサを投げ込まれた池の鯉の様に群がってきて(笑)、次から次へともやしを摘んでは口に入れて行きます。子供達は正直です。「美味しい」などと無理に言葉にしません。でもその率直な行動がきちんと物語ってます。
新鮮な、生のもやしを食べた時の衝撃は、これまでも何度もいろいろなところで食べさせてきたので、この反応は予想通りでありましたが、でもやはり作り手としては、このような自然に近づいてくれる食べる人(子供達)に囲まれると幸せなものです。
ここで収穫したもやしの袋は、私が一旦預かって冷蔵庫で保管し、園児たちの降園時に妻が園に届けることになりました。
これで「もやしの見学・収穫体験」は終わりです。帰り際、担任の先生が子供達に聞きます。
「もやしを美味しいと思った人は手をあげましょう!」
「はーい!」
すると全員、つまり付き添いの先生、母親まで手をあげていました(笑)。
私はお別れの挨拶に一言、
「みなさん今日もやしを触ったこと、もやしの味をいつまでも忘れないでくださいね。今日はありがとうございました」
というと、園児たちも元気よく
「ありがとうございました」
とお辞儀して、歩いて帰っていきました。園長先生も楽しかったのか、
「明日は園児たちのおやつにもやしを食べさせたいと思います。いくらか分けていただけますか」
と話してきたので、
「もちろんです。新鮮なものをお届けしますよ」
と約束をしました。園長先生、明日はなにやら自分の中華鍋を園に持ち込んで、お手製のもやし料理を園児たちのふるまう、とのことです。
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本日いらした小さなお客様達、どこまで理解できたか分かりませんが、間違いなく
「もやしを通した食の楽しさ」
は伝えられた、と私は実感しています。