みなさまはもやしをどのように調理されるでしょうか。
さっと茹でたり、または炒めたりするのが一般的でしょうか。
もちろんもやしは野菜ですから生でも食べられますが、しかしさすがにお店で売られているもやしではお薦めできません。生のもやしを食べたいのであれば、お近くにもやし屋さんがいて、そちらへ見学ができるようでしたらその際に、ムロ(栽培室)の中で育っているもやしを食べさせてもらうのが一番安全な生もやしの食べかたです。
実は最近になって、私はもやしが最も美味しく食べられる調理法は
「蒸し焼き」
ではないか、と思うようになりました。蒸し焼き・・・・つまり鉄板(フライパン)にもやしを乗せ、蓋をかぶせてもやしに火を通すのですが、そうすることでもやし内部の水分が噴き出し、その水分が蒸気となって、ふたの中でもやしの旨味を充満させます。
この調理法での最大の幸せは、蓋を開けた瞬間です。もわっともやし特有の、少しツンとした、それでいてふくよかな香りが立ち昇り、鼻腔をくすぐります。その香りを感じられればこの調理法の9割がたは成功です。後は塩・胡椒を振るなり、醤油で味を足したり、お好みです。
このもやしを蒸したときに湧き上がる凝縮された香り、それは私にとっては昔から慣れ親しんでいた香りですが、この香りこそがもやしの味で最も重要な要素なのだと思うのです。そしてこの香りの素晴らしいところは、
他のどんな食材と一緒になっても、またどんな味付けを施しても、もやしの香りとして力強く主張し続けるのです。
さて、私はもやしを鉄板に載せる前に必ず「油(脂)」を少し垂らします。もやしと油(脂)は非常に相性が良く、それは油がもやしに欠けている「コク」を補うからです。油は何でも構いません。サラダ油、ごま油、オリーブオイル、ラード、牛脂・・・・・すべてもやしの味を高めてくれます。バターもいいですね。
もやしの蒸し焼きでさらに強い風味を楽しみたいなら、緑豆よりはブラックマッペをお薦めします。そして根を取らないで残したほうが、香りと味に奥行きが出ます。
そして私がこのもやしを蒸し焼きすることで、重要視する点がもう一つあります。それは、
「もやしの誤魔化しが利かない」
ことです。もやしから立ち上がる香りは正直です。鮮度が悪ければ、香りが立つことはありません。次亜塩素酸水で長く漬け込まれたもやしなら、蓋を開けたときにもやしから吹き出る塩素臭が先に鼻を刺します。
素材の味だけをぎゅっと閉じ込め、一気に噴出させる「蒸し焼き」は、
「もやしそのもの」と、「作り手の顔」を映し出すバロメーターになるはずです。