10月のもやしの原画展にお越しになられた熊谷市在住の県議会議員森田としかず 様と小さな娘さん(保育園の年中さん)。お二人は12日の午前、私どもの『もやし工場を見たい』と見学に来られました。私は快く二人を迎え、実際にもやしを見せながら栽培の過程を説明しました。そして仕込み部屋では、発芽した直後のもやしをご覧になっていただき、続いては隣の栽培室に案内をします。


 こちらが「もやしの畑」ともいえる、栽培室です。普段はまったく光のない真っ暗闇です。
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 私たちが入った時は、ちょうど水遣りの時間になってましたので、散水機が稼働していました。大量の地下水が栽培容器の中で育つもやしに降り注ぎ、もやしを通過した水は洪水のように排水溝に流れていきます。私たちは足元を濡らさないように、大きな栽培容器に近づいて、もやしを覗き込みます。娘さんは醤油の箱を台替わりにしてあがって身を乗り出すようにしてもやしを見ます。


発芽して2日目のブラックマッペもやし。
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発芽して3日目の緑豆です。
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そしてこれは、7日目のブラックマッペもやし。この日の深夜(翌日早朝)に洗浄され、出荷されるもやしです。
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 私はこれらのもやしを少しだけつまんで森田様、そして娘さんに試食させます。森田様は「へえ。味が濃いんだねー」と感心されました。4才の娘さんはどうでしょうか。ニコニコしながらシャリシャリと食べていました。生まれて初めて食べた生の、新鮮なもやしの味。娘さんにどう響いたでしょうか。

私はムロの中で森田様に話します。


「私たちはもやしの栽培室にいますが、この部屋の居心地はいかがでしょうか。薬品のいやな臭いもしなくて、適度な温度と湿度があり、悪くないはずです。私がもやしには水しか与えていない、と言ってもそれが本当かどうかを証明する手段はありません。森田様がもやしが育っているこの部屋の中で感じたことが大事なのだと思います。」


 そしてムロから出て、もやしの洗浄、包装行程を簡単に説明してもやし見学は終わりです。時間にして15分くらいでしょうか。しかしそのたったの15分の中には、もやし屋、飯塚商店の48年間が凝縮されています。


 事務所に戻って、今度は収穫したもやしを調理しての試食です。いつものようにカセットコンロに火をつけフライパンを熱し、軽く油をしいて、もやしを入れて軽く炒めます。もやしに熱が通ったら、「ブルドック業務用塩焼きそばソース 」で軽く味付けをして簡単なもやし料理の出来上がり。娘さんは美味しく感じられたようでおかわりをしました。


 森田様がお帰りになる際、「これは奥様に」と、さきほど収穫したもやしの残り(300gほど)をお土産に持たせました・・・・・。娘さんにとって、この日のもやし体験はどのように響いたでしょうか。




今回のタイトルは「もやし屋の食育」です。まず「食育」の定義ですが、


一応平成17年7月15日に施行された「食育基本法」の前文にはこうあります。


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(前文より抜粋)

①・・・・社会情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で人々は毎日の「食」の大切さを忘れがちである。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている・・・・

(一部略)


②・・・・国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関る人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全な食生活を実践するために・・・・(一部略)我々に課せられている課題である・・・・


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と、いうように


「食に対して感謝の気持ちを持ちつつ、信頼できる情報を得て、適切な判断を行う能力を身につけよう」


 というのがいわゆる「食育」の定義でいいのでしょう。さてもやし屋が出来る食育は、今回森田様とその娘さんが体験したこと、つまり


「もやしのありのままを見て、触れて、食して、考える」


ことなのだと思います。「表示・情報」を読むことが食を学ぶのではありません。私がもやしのない他の場所でもやしについて語ったことを鵜呑みにしても不十分です。自分でその食材の命をきちんと見て、触れて、食して、考えることが食育だと思うのです。


 その日の晩、森田様からお礼のメールが届きました。とても嬉しい内容でしたので、その一部を掲載します。


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本日は、ありがとうございました!
やはり現場を見せてもらうと、印象ががらりと変わりますね。
熊谷の給食が飯塚さんのもやしというのには安心しました。
次女は早速帰ってから、おやつの頃に、「もやし食べたい!!」と何度も言うので、

もやしをいためてあげました。お皿いっぱい食べていました!


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 娘さん、もやしをしっかりと見て、そして大好きになったようです。私も森田様、そして娘さんから作り手として大きな幸せをいただきました。


前編はこちら です。

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