今回は少しもやしの話から離れて、「近い食がもたらす幸せ」を書き綴ってみます。
23日(月)のことです。私の家に立派な魚達が届きました。全長40cmはあるかという大きなイサキが1匹と、タカベという魚が5匹です。こんな素晴らしい魚たち、近所の魚屋で買ったらいくらかかるでしょうか。
送ってくれたのは、伊豆諸島の一つ新島に住むMさん。Mさんと私たち飯塚家の関係ですが、Mさんの長女が新島から私の家のすぐ近くに嫁いできて、その方の娘さん(つまりMさんのお孫さん)が、私の娘と同い年の友達なのです。一昨年、私たち家族はMさんの長女が里帰りするときに一緒に新島へ旅行に行って、その時にMさんに大変よくしていただいてから交流が深まりました。
そしてMさんは私の魚下ろしの師匠でもあります。昨年、私は地元幼稚園のPTA会長を務め、その時に園児たちの収穫祭 というイベントを立ち上げました。そして私は園児たちの前でMさんが送ってくれた新島の魚を捌くというパフォーマンスをすることになったのです。それまで私は魚を捌いたことなどありません。そこでMさんが新島からこちらへ訪れたときに、Mさんから教えていただきました。
そのおかげで収穫祭における実演はなんとか成功しました。
これはその時の写真です。魚はMさんが釣ってくれた新島のメジナです。
この収穫祭から1年が過ぎました。今回Mさんが魚を送るとき、「飯塚さんが捌き方を忘れないように」とこちらに住む娘さんに話したそうです。本当にありがたいことです。遠い新島の、血のつながりもないMさんですが、私は本当の父親のような温かみを感じるのです。そんな心のこもった魚たち、私は気合を入れて下ろしました。
まずイサキです。これは刺身にしました。
しっかりとした弾力をもった身にはたっぷりとした旨味がありました。
これは新島のじじちゃん(Mさんのこと)が釣った魚だよ。と、子供達に伝えると、子供達は嬉しそうに魚を食べ始めます。タカベという魚を食べるのは初めてですが、肉質がもちもちとしていて、しっかりと海の旨味が凝縮されています。
そしてきれいに平らげました。
海がない埼玉県の、さらに田舎の深谷市は海魚とは遠い地域でしょう。それでも人との結びつきが、私たちにこんな素敵な「海の幸」を与えてくれました。
私は人の心の近さ、温かさに包まれたこのような食こそが、食の理想
であると信じています。この魚には何の表示もありませんが、誰がこの魚に不信感など持つでしょうか。
私は安価で大量生産のきく野菜、もやしを提供しています。そんなたかがもやしですが、常に心の近さ、温かさを意識してもやしを育て、皆様の下へ送り出す・・・それが食の提供者の務めではないかと思うのです。