先週の9日のことです。


 この日は先月私を訪ねてきてくださった 、熊谷市の消費者団体


くまがやくらしの会


が毎月行われている定期学習会に使う料理の食材に私どものもやしを使いたい、とのご依頼を受け、私はもやしを持って会場である熊谷中央公民館の調理実習室へと向かいました。もやしの料理会・・・こういった形で私が呼ばれるのは初めてのことなので、緊張しました。実習室にはすでに会員さんが20名以上来られてました。


 先月お会いした方々との再会の挨拶を交わし、代表の方から


「最初にもやしのことで10~15分ほど、来ている人たちにお話をしてほしい」


と頼まれてしまいました。ちょっとしたスピーチです。やはり慣れぬことでしたので、焦りました。


 私はまずみなさまに感謝を伝え、そして緊張しながらももやしについて普段思っていることを話してみました。もやしの形の変遷、味のこと、豆のこと、なぜ安いかということ、原産地の表記のこと・・・・そんなことを語りながら、途中質問を受けてはできる限り丁寧に答えたりしていたら、10~15分というのはあっという間に過ぎていました。話し終えた時は、不思議なもので、もっとみなさまの質問に答えたい気持ちが強く残りました(笑)。


 そして、いよいよみなさまが支度を整えて料理の準備に入りました。私はその場に残り、みなさまがもやしを料理するのを見学してました。


 次々と調理されていくもやし。


まぼろしの「もやし」求めて・・・


まぼろしの「もやし」求めて・・・


参加者のみなさまは、ときどき笑いながら手際よく進めて行きます。途中私は代表の方に茶を勧められ、その時、前回お越しになられた時にあまり話せなかったエチレンについて語ると、


「それは是非とも食事の前にみんなに話してください」


とお願いされました。もやし生産者はあまり一般の人にエチレンのことを語りませんが、これも作り手として伝える義務があると感じ、自分の知る限りのことを話してみました。


 みなさん、食の意識が高い方々なのでしょう。中国産の原料のことや、どのもやし屋さんも使用しているエチレンのことを話しても、嫌悪感を示すことも無く真剣に聞いてくださいました。もちろん人の受け取り方はそれぞれです。ただ食というのはそれを「知った上で、納得して」使う、食べるのが、作り手、食べ手双方に最も良いことだと思うのです。その食のすべてを知る必要もありませんが、現在はあまりにも食がブラックボックス化している気がするのです。


 最後は出来上がった数々のもやし料理を参加者のみなさまと楽しく一緒にいただきました。どれもが温かみのあるもやしを使った料理でした。


 この研究会の間に、私は“もやしに近づこうとする方々”にもやしを語り、もやしを使ってもらい、共にもやしを食べました。


私はどれだけの幸せをいただいたことでしょう。


 作り手の最大の幸せは、やはり自分の提供したものを幸せに食べてもらうことなのだと実感しました。