昨日(20日)午前10時、地元高校の放送部の生徒さんと顧問の先生が私のところに取材にやってきました。9月5日に埼玉新聞で掲載された「もやしの絵本の記事」を見たとのことでした。


 今回の取材ですが、生徒たちはコンクール出展用の映像作品として仕上げるようで、顧問の先生と生徒が各々ビデオカメラを構え、別の女子生徒が大きなマイクを始終私に向けた形で取材(撮影)が始まりました。


 私は2種類の原料(種子)の説明、仕込み、栽培室(ムロ)での成長の様子を説明し、ときどき先生からの質問に答えました。


まぼろしの「もやし」求めて・・・



まぼろしの「もやし」求めて・・・

 生徒たち(先生方もですが)ははじめてみるありのままのもやしを見て驚いてました。


 嬉しかったのは、栽培容器の中で育っているブラックマッペをつまんで生徒に食べさせた時、

「あっ。おいしい!」

と彼女たちが言ってくれたことです。これで彼女たちの中で

「もやしの味の基準」

が芽生えたかもしれません。


 また副顧問の教師は、生のブラックマッペをかじって

「少し苦味があるんですね」

とおっしゃっていました。これも的確な表現だと思います。その苦味が野菜の個性だからです。


 それにしてもです。こうして


食べる人が近づいてきて、そして作り手の前でその味に驚く・・・・これは作り手にとって至福の時


だと実感しました。

 私はこのもやしの強い味を引き出すために、


“もやし”とはどうあるべきなのか、


人間(作り手)はどうもやしと関わるべきか


・・・・そんなことを熱意を込めて彼らに語りました。



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 ムロを後にしてから事務所でしばしもやしのこと、現在もやしを巡る実情について話しました。生徒の1人が


「今後の展開とかは考えてますか?」


と聞いてきました。私は少し考え、そして絵本の一枚を見せて



まぼろしの「もやし」求めて・・・


「今、自分はこの絵と同じ気持ちです。先の展開というより

『先の光を信じて』

進んでいるんです」

と答えました。先の展開というより、事実今は目の前の山を越えるのに精一杯です。


 最後に先生が


「高校生たちに何か一言お願いします」


とおっしゃるので、これも少し考えてしまいました。この位大きい子供達にもやし屋の私が何か言えることがあるのでしょうか。ふともやしを育てることと、繋げたらどうだろうかと思いつき、私を見る高校生たちにこのように話してみました。


「まず、私は毎日もやしを作っているのですが、もやしを育てるときに一番大事なことがあるんです。それは

違和感を信じること

なんです。常にもやしを見て、あ、これはいつもと違うなと思ったら、その自分の中の違和感を信じるんです。それで今までずいぶん危機を回避できました。みなさんは若いうちからそういう力を養ってください。前例に従っていれば大丈夫と思わずに。自分の中で『コレは違う』と思ったらその気持ちを信じてください」

 ちょっと抽象的で難しかったかもしれません。彼女たちに何らかの形で響いてくれるでしょうか。


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 今まで小学生が見学に来ることがありましたが、今回のように“目的を持って”高校生やその教師達が私を訪れたことはなかったです。誰もがみなもやしに近づこうと真剣でした。その姿勢が私をいつもより熱くさせました。


 もやし屋しか経験のない私が彼女たちに語れることは、


『もやしを通した物語』


だけなのかもしれません。もやしのありのままの姿、生きる力がみなぎる味、そしてずっともやしだけを見てきた私の言葉が彼女たちの成長の何かの助けになれば幸いです。