他のもやし屋さんはどうなのか分からないのですが、私は年に1度くらいは他のもやし会社へ行くことがあります。他のもやし、栽培法などを見るのは楽しいので、時間さえとれればどこへでも行きたいです。


 もやし屋さんの中には、同業者が来ると企業秘密を盗まれるとのことで、栽培室に入るのを歓迎しない方も多いかと思います。


 ただ私の経験から、仮に


他県のもやし屋さんの栽培技術を真似ても、それが必ずしも自分のところで出来るわけではない


と考えてます。不思議なことです。栽培室の温度、水の温度、エチレンの濃度、仕込みの時間など、そっくりにやっても違うもやしが出来るか、育て方を失敗してしまうのです。


 光を当てず室内で育てるもやしでも、その土地に適した育て方があるのです。他の野菜でしたら、その土地の土壌によって大きく味が変わりますが、もやしでも同じようなことがあります。


かつてのもやし屋さんは、いかに自分の土地にあったもやしを作ろうかと、必死になって適した栽培方法を探し続けていた


はずです。そのあたり、いかにも野菜らしくないですか。


 もっとも最近はもやし栽培もある程度ソフト化されていて、必要な設備を整えれば、


どこでも同じようなもやし


が出来る時代ですが、いかにもそういうのは工業製品のようで違和感があります。



 日本のあちこちに地元に根ざしたもやし屋があり、海のもやし、山のもやし、寒いところのもやし、暖かなところのもやし、関東のもやし、関西のもやし・・とその土地土地によって違いや特徴があり、私たちは旅先でその土地のもやしを楽しむ。そんな一つの味ではなく、産地による様々な違いがもやしにおいても、もっと強調されていいのではないかと思うのです。


 

 そしてもやしに限らず、私たちはもっと多様性に富んだ食の価値を見直してもよいのではないでしょうか。野菜に限らず食の価値は、一つではありませんから。