昨年のことです。このころ巷では中国産ギョーザの影響で食の信頼が揺れている時でした。ある日、納品先のお店の青果担当者とこのようなやりとりがありました。


「飯塚さんところのもやしはさ、裏に『原料:中国産』て書いてあるでしょ?あれ困るんですよね。お客さんは、それを見て他のもやしを買っていくんですよ」


「そうですか。しかしその他社のもやしも、豆は中国から輸入したものを使っているはずですが・・・」


「他社のは『原産地:●●県』と表示されているんです。だからお客さんが安心して買っていくんですよ」


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 現在日本国内で流通している緑豆もやしの原料(豆)は、ほぼ100%外国から輸入したものであり、その99%以上(もしかしたら他国のものもあるかもしれません)は中国は吉林省、または陝西(せんせい)省産の緑豆です。


 しかし平成14年にもやしの産業分類が「農業」に変わり、原材料(種子)の表示の義務がなくなりました。つまり原料の豆がどこで栽培されたものかを表示しなくてもよいことになったのです。そしてもやしの袋に表示されている「原産地」とは、


「生産場」のある都道府県名または都道府県及び市町村名もしくはその他一般に知られている地名を記載


でよいことになったのです。しかしこの原料の産地表示については、各もやし屋さんの見解がまちまちであるために、上記の会話のような不思議な現象が起きています。


 私の見解を言わせてもらいますと、


原料はすべて輸入であるという事実は事実としてきちんと伝えることは必須だと思いますし、仮に消費者が「もやしは豆から国産である」と誤解してしまうほうが問題


ではないかと思います。そしてもう一つ言わせていただければ、


多くの緑豆を栽培しているもやし屋さんは、戦後間もないころから中国の農家が作る緑豆によって商売をしてきています。そんな中国の農家に対して、今までの感謝と敬意を表するのならともかく、一時の中国バッシングにのって、あたかも中国とは無関係だと言うように産地を表示しない、というのは私には心情的に無理なことです。


 農水省にも注文があります。もやしは他の野菜と違って、豆の養分だけで育つ野菜です。だからこそ豆の原産地表示は必要ではないでしょうか。



 そんな中、本日(平成21年7月6日)私の会社にある「全国的なもやしの組合」から一冊の書類が届きました。私の会社はこの組合に属していないので、大変珍しいことです。


 それは


「もやし生産にかかる表示ガイドライン」


というものでした。その中に、“強制するものではない”とするものの、


消費者に誤認される恐れがあるため、表示の自粛を要請する という項目があり、「無漂白」「無添加」表示の自粛の次に、




「○○○は、種子の原産地の表示の自粛を要請する」


とはっきりともやし各社に要請しています。つまり誤認される恐れがあるから「原料:中国産」とは書かないでくれ、ということです。


 しかし、それは何の誤認でしょう・・・?私にはよく分からないところです。


 さてここでこのブログを読んでくださっている皆様はどう思われるでしょうか?私の見解は上に示しましたが、私ももやしを売って生計を立てているものです。多くのお客様が表示に「中国」とあるだけで買い控えてしまうようでは、その圧力に負けて苦渋の中、表示を改めざるを得ないでしょう。


 今私が最も知りたいのは、もやしに向き合ってくれる消費者の方の本当の気持ちです。