「もやしに光」
これは、6月13日付の読売新聞夕刊において、【いまドキッ】というコラムでもやしが紹介されていた時のタイトルです。
不況感漂う現在の国内市場において、安価な食材であるもやしが注目されています。この記事でも「安いもやし」ということでまず「光」を当てています。私は
「安くて良質な食が皆に行き渡るような環境」
が理想の食環境だと信じていますので、もやしが安定して廉価なのは大いに結構なことだと思いますし、同じ原料のものに無理に付加価値をつけて必要以上に高く売ろうとも思っていません。
とはいえ何事にも「適正価格」というものがあり、最近は緑豆太もやし、一袋250gが店売り価格「19円」、はたまた「10円」などというものが見受けられ、そうなると卸値は19円売りの場合、15~17円ほどになり、これは30年前のもやしの卸値より低く、(当時約23円)多少の原料の為替相場の変動があるにしても、少し異常なほどの安値です。その裏では何が起きているのでしょうか。
私からみた、もやしの「適正価格」はどう安く見積もっても※緑豆の場合は一袋23~25円ほどであり、それ以下の価格設定にするには方法は一つしかありません。
「今よりも沢山作って売ることです。」
しかしながら野菜の国内消費量
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
を見てもここのところずっと横ばいであり、この状況下でもやしだけが突出して消費されることもないでしょう。
つまり固定された消費キャパの中で、もやし会社が「沢山作って売る」ということは、
「他のもやし会社のシェアを奪うために安く売る」
というだけのことなのです。するとどうなるか。安売り合戦は体力勝負になりますので、地域に根付いた小さなもやし屋が最も早く潰れます。地域のもやし屋がなくなると、そこに住む人たちは、
「新鮮なもやしが買えなくなる」
という状況になります。もやしはその特性からいっても、長持ちする野菜ではありません。産地が近ければ近いほど、食べる人はもやしの恩恵を得られます。地元のもやし屋がなくなるということは、その大切な部分を失うことになります。
そしてその安すぎる価格が定着しても、決してその価格のまま治まらないでしょう。
そこから安売り競争が始まるのは火を見るより明らかです。現に「10円もやし」が登場していますから。納めているもやし屋さんは一体いくらで買ってもらっているのでしょう?真剣に育てたもやしが、1袋5~7円くらいで買われているのなら、さぞかし悔しい思いをしていることでしょう。いやその前に、経費を引いたら赤字は間違いないです。
すでに昨年は、私の知るもやし屋さんが3軒、店じまいしてます。今もやし業界の動きは、「必要以上の値下げという」流れと共に崖下までみんな落ちていくようなレミングの死の行進状態です。そしてもやし屋さんが少なくなれば、その不利益は「新鮮なもやしが買えない」ということで、消費者にも影響を及ぼします。かつては地産地消の一環にあった「もやし」の立場が崩れます。
良いものが安く多くの人に普及することは、大賛成です。しかしもやし1袋30円では高すぎて、20円以下でなければ納得がいかないということになると、それは行き過ぎた望みではないでしょうか。
もやしに光・・・とのタイトルですが、遮光栽培で育つもやしに安易に光を当てると、あっという間に劣化します。普通に安く買えるもやしです。大きなメディアが安易に安さという部分で光を当てるのには、私は反対です。
次回は、この記事にあったもう一つの衝撃的なコメントについて語らせてください。
※取引の量、最も近場の納品といったことを考慮しての見積です