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拝啓四十の君へ

3歳男児の親としても、フリーアナウンサーとしても「こんなん聞いてないし!」と、絶望しては望みを繋ぐ日々です。それでも40歳くらいには戦闘記として懐かしめたら!
子育ては十人十色すぎるので、どこかでどなたかに届く事があればとても嬉しいです。

 子どもの成長は不意に放たれる矢のようだと思う。昨夜まで出来なかったことが今朝は出来たり、理解力がたった今弾けたかのように物事が急に分かるようになったり。その突然の大人へのステップには時として度肝を抜かれる。

 息子は「かわいいお姉さん」が好きだ。「かわいい」や「お姉さん」の基準は彼に一任されているが、先日マンションのエレベーターで乗り合わせたのは制服姿の女子高校生。息子はすかさず、少し恥じらいを滲ませた笑顔を彼女に向ける。彼の「かわいい認定」が降りたらしい。自分が先に降りるときはエレベータードアの前でわざわざ振り返って「バイバイ」。そして、ドアが半分ほど閉まろうかというタイミングで、私に向かって溌剌と言った。

「今の、かわいいお姉さんだったね!」

私は唖然とした。なぜなら、これは「うっかり相手に聞こえてしまった演出」だからだ。誉め言葉などは相手に直接言うと嘘っぽくなることがあるので、わざと「独り言や他の人に言ったことが聞こえてしまった」かのようにして当人に伝える手法である。間接的に褒められた方が真実味があり、面と向かって褒められるより嬉しい場合も多い、と恋愛や人付き合いの指南本にも書かれていた。実際、上昇するエレベーターの中でかの女子高生の頬が緩んでいたのを私の眼はしっかりととらえている。息子はこのスキルを生後1200日足らずで使いこなしているというのだろうか?いや、そんなバカな、親の欲目とは愚かなことよ。と独り言ちたところで、それは飛んできた。

「でも、ママはもっとかわいいよ。」

虚をついて、確実に心の真ん中を射ぬいていくから恐ろしい。成長の矢に、ご用心。