12月に訪れる、あの人 | 拝啓四十の君へ

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3歳男児の親としても、フリーアナウンサーとしても「こんなん聞いてないし!」と、絶望しては望みを繋ぐ日々です。それでも40歳くらいには戦闘記として懐かしめたら!
子育ては十人十色すぎるので、どこかでどなたかに届く事があればとても嬉しいです。

 12月にこどもが待ち望んでいる「◯◯さん」といえば、「サンタさん」だろう。しかし、うちの3歳男児にはサンタさんそっちのけで訪問を待ち望んでいる人がいる。それは、「ヤマトさん」、「サガワさん」、時々「ゆうパックさん」である。

 私物に加えて夫の仕事関連でも荷物が届くことが多いため、上記の「◯◯さん」たちは入れ替わり立ち替わりやって来る。地域担当があるのだろう、届けてくださるのはほぼ毎回同じ方であり、インターホンが鳴ると息子は「ヤマトさんかな?」「サガワさんきた?」とソワソワし始める。なぜここまで楽しみなのかというと、自慢の品を披露できる貴重な相手だからだ。

 きっかけは、おもちゃを褒めてもらったこと。いつの頃だったか、息子は当時最も気に入っていたおもちゃを持って私と共に玄関で宅配物を受け取った。そのときに、「お!いいの持ってるね。」と言ってもらえたのがよっぽど嬉しかったようで、それからは荷物が届くたびにお気に入りの物を一つ「これ見て!これ!」と見せびらかすようになったのだ。それは、おもちゃのパトカーだったり、キャリアカーだったり、阪急電車だったり、阪神電車かと思いきや再び阪急電車だったりする。ご多忙にも関わらず、それ前も見たなと思っているはずなのにも関わらず「いいねぇ~。」と反応してくださる懐の深さには何度感謝してもしきれない。

 しかし、息子は先日、趣向を変えてきた。「ママ、(ドアを)あけるのちょっとまってて!」と部屋の奥へと走っていく。とはいえ、宅配業者さんをお待たせするわけにはいかないので、私は息子が何を持ってくるのかを確認することなく玄関へと向かった。ドアを開けるのとほぼ同時に足元へ滑り込んできた息子。両手で引きずっているものは、枕だった。「これみせてあげる!見てこれ!」と、その顔は誇らしげで上気せんばかり。片や、私は真っ青だったにちがいない。その枕は使い古され、黄ばみ、息子のヨダレが全体に迷彩柄を描いている代物だったからだ。乳児期から必ずこの枕に寄り添って眠る「一番のお気に入り」に違いないのだが、汚いもののお手本のようなそれは人様に晒すべきものではない。何より見せられた側はたまったもんじゃないのだよ!と般若のような顔で息子を奥へ追いやろうとしていると、柔らかな声が降ってきた。「今日は枕か、何でもおもちゃになるねぇ。」あぁ、後光すら見える。1年に幾度となく訪れては我が家に温かな微笑みを、窮屈な私の心にゆとりをも運んでくれる。そうだった、何を隠そう彼らこそ今年のクリスマスプレゼントを持ってきてくれる「本物」なのだった。