その25 

比島戦[12]

イゴロット兵に出会する

 

その後も戦況は、ますます悪化し、山上へ山上へと撤退、追い詰められた。戦友も次々と倒れ、私も何度かマラリアにかかり、また1人になった。友隊の行方も分からず、行き当たりさまよった。

 

その日も疲れ果て、のろのろと歩行し、山道にさしかかった。突然、武装したイゴロット兵1人に出会した。瞬間ドキッとしながらも、私は「にこっ」とほほえんだようである。殺しあう敵味方とは思わなかったのだ。普通の人間のようで、あいさつがわりに小笑いしたのか、イゴロット兵もびっくりしたようだったが、私を見てくるっと引き返し、走り去った。

 

私は軍刀と拳銃は持っていたが、弾はなかった。撃たれたら、もう、しまいだった、とひやっとした。そのあと、しばらくは気味悪く、生きた気はしなかった。今の悪夢の要因である。

 

悔恨

 

昭和20年7月初めだったろうか。隊にたどり着き、中尊寺大尉と行動を共にした。楠本兵長と小早川上等兵(兵長)が、瀕死の重体だという。小早川上等兵はまだ意識もはっきりして、死にたくない、と嘆いたと誰か教えてくれた。1㎞くらいのところと聞いたので、慰めにと思ったが行けなかった。悔やまれてならない。その後、楠本兵長は手榴弾で自爆した、と聞いた。

 

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