その２３
比島戦［１０］
水本大隊長に会う
その後も米軍接近に、野戦病院も転進を命ぜられ、５～６人一団となり、山中方面に移動したが、その他は置き去りにされた。私も最初6人一団となり移動したが、２～３日のうちに次々倒れ、また、落伍し、大分の矢野九二男さんと2人になってしまった。
2人で、山間の道をとぼとぼ歩いていたら、水本大隊長と当番兵に、ひょっこり会った。大隊長は矢野上等兵を見るなり「銃はどうした」と怒鳴りつけた。「持てなかったから山中においてきた」と言ったら「それでも軍人か、取ってこい」火のつくように怒られた。思えばそのとおりであるが、その頃は、自分の身体を動かすだけで、もう精いっぱいで、重い銃など、傷病兵は持てなかったのだ。矢野上等兵は、すごすご山中に向かって行ったが、もう帰らなかった。私は山中でだいぶ待った。
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