メジャーで勝つ為に | 松山英樹応援ブログ

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(Numberより抜粋)
Number942号(スポーツ総集編2017-'18)
2017年12月20日発売
成し遂げたこと、そしてこれから。
「メジャーを勝つ為に 松山英樹×中嶋常幸」


-2017年の4大メジャー大会、松山さんはほぼ全てで優勝の可能性があったと思いますが、特に印象に残っている大会はありますか?

松山:自分としては何も。悔しさしか残っていなくて。

中嶋:見ている側として英樹のこの一年というのは一言では表せないな。絶不調で迎えたマスターズも最後は上位に食い込んだし、全米オープンではケプカが勝ったけど青木さんに並ぶ2位タイだったし、全英オープンも最終日5位タイで迎えていい戦いをした。そして全米プロでは最終日のバックナインで首位にいた。残念ながら届かなかったけど、こうやって挙げていけばきりがない。たくさんのいいシーンを見せてくれたね。青木さんとニクラウスのバルタスロールの死闘もそうだし、僕の場合は1987年の全米オープン最終日、首位に立った直後木に当たってロストになったショットとか、メジャー優勝に迫った場面はそれぞれにある。でもシーズン通してそういったシーンをこれだけ多く作った選手は今までいなかった。ただその中で一つ胸が熱くなったのは、全米プロの最終日だね。特に気になったのは最初の3ホールなんだ。一番でナイスショット、ナイスセカンド、ピン右横1m位につけ、そのパットが右にフッと外れた。誰もがバーディと思ったから「えっ」となってね。その後3番ホールではピンフラッグにボールが当たって跳ね返っちゃった。当たらなければもっと近い位置だったこの二つが悔しかった。ピンフラッグに当たった時どう思った?

松山:完璧なショットだったのでこれ入らんかなと思ったんです。それが跳ね返ったから「あっちゃー」と思ったんですけど、まだ差がそんなに開いてなかったんでチャンスあるだろうなと思って切り替えていきました。ただ痛かったのは(9番で単独トップに立った後)11番のセカンドショットですね。10番で同組のジャスティンが、カップのふちで止まったボールが転がって入るというバーディーを取って、ギャラリーの雰囲気を持って行ったようなところがあったんです。それで11番のティーショットは二人とも完璧に打って、僕も中々ないような良いショットが打てたんで「これはイケる」という気持ちになったんですが、そこでなんて事ないセカンドをイージーミス(グリーン右に外す)してしまったんで…。ウェッジで打ってあのミスをしたのが自分の中で許せなくて。あそこをパーで切り抜けていれば、もう少しすんなり行けたのかもしれないですけど、ボギーにしてしまった事で自分の中に凄いダメージがあったんです。その後切り替えようとしたんですけど自分を許せない気持ちが残っていて、12、13番はボギーになっても仕方ないような精神状態で、実際にボギーを打ってしまったんです。

中嶋:自分を許せない気持ちは凄くわかる。自分で自分を殴れないから頭の中が煮えくり返るような。プロだって気持ちの切り替えができない時があって、最終日バッグ9に入ってのイージーミスは致命的だよね。それで終わるわけにいかないから、選手は一生懸命立て直そうとするけど、1ストローク差でしのぎを削っている中のミスというのは堪えるんだよ。だからあの日英樹が1番と3番でバーディを取っていれば、もっとリードしてバック9に入れたと思ったんだけどね。結果的に5位で最終日を迎えた後の涙っていうのは、自分のミスで負けたからという部分もあったのかな。

松山:そうですね。自分が思ったようなショットを打ってボギーを打ったのなら仕方ない、また練習しようって切り替えられたと思うんですけど、11番から13番(の3連続ボギー)はなんてことない自分のミスなんで、不甲斐ないと言うか何やってんだ!という悔しさでしたね。

中嶋:あの英樹の姿をテレビで見て僕も泣いたんだよ。1986年の全英オープンでノーマンと1打差で最終日最終組で回ったけど結果は8位タイ。記者に囲まれて泣いたのを思い出した。あの時も自分の不甲斐なさで自分のミスで負けたという。それが違う要因だったらもっと練習すればいいと思えるけど、あの時は僕も英樹と同じ心境だったかもしれない。もう泣きたくないね。もう沢山だよな。

松山:そうですね。

中嶋:こういう経験は又そういう状況になった時生きてくるものだと思うし、アメリカでちょっと勝つと驕りが出てくる人もいるけど、英樹はそうじゃない。16年フェニックスオープンで優勝した時に英樹のトレーナー飯田光輝にこういうメールを送ったんだよ。「俺はまだ松山は1.5流だと思っている。一流だと思ったら成長は止まるからそう伝えてほしい」と。そうしたら飯田から「全然彼はそう思ってないです。1.5流どころか二流だと思っています」という感じのメールが返ってきた。

松山:どこが一流か一流じゃないかは周りの人が決める部分もあるので分からないんですけど、僕の中では自分の評価があるので。

中嶋:それを聞いて嬉しかったね。ちょっと勇気が要ったんだよ。俺アメリカで勝っていないのに勝ってる選手に「1.5流だと思え」というのはさ(笑)。でもどうしても伝えたくて。

▷心技体の何を最も重視するか二人に共通する考えとは

-お二人が交流するきっかけは、中島さんの門下生だった飯田光輝さんが現在松山プロのトレーナーとしてツアーに帯同していることも大きいですよね。

松山:そうなんですけど実は僕、8歳の時に一度中嶋さんに会った事があるんです。大阪のゴルフ場でダンロップのコンペに父親が参加して、そこでたまたま練習場の空いてる座席が中島さんの前しかなくて、父親がそこで打ち終わっても中島さんはまだ打ってて。最後に50ヤードぐらいを3発打ったんですが全部(両手を肩幅くらいに広げて)これくらいの幅のところにいって、「すげえなこの人」と思って見ていました。すごく印象に残っています。

中嶋:そんなことがあったんだ。ただ直接交流するようになったのはやっぱり飯田がきっかけかな。彼はプロゴルファーを目指していたんだけど、ある年齢になってプロは無理だという時に「体があるんだからトレーナーになった方がいいんじゃないの」と勧めたんだ。それで修行してトレーナーになった後4、5人の選手を見ていた。その中で英樹との接点ができたんだよね。ある時飯田から相談を受け「松山がアメリカについて来て欲しいと言うんですがどうしたらいいでしょう」って言うから「松山とアメリカに行って優勝の手伝いしてやれよ」て送り出した。そうしたらそのシーズンのメモリアルで初優勝しちゃった。もちろん英樹が凄いんだけど、飯田もすげーなって思ったんだよ(笑)。

松山:僕はアメリカに行く前年、プロ1年目で結構怪我をしていたんです。飯田さんにはアマチュアの時から体を見てもらっていたこともあって、アメリカに行くならしっかりした人に付いてもらいたいなと思ったんです。

中嶋:よくスポーツは心技体と言われるけど、僕は順番で言うと体と技が優先で心は後だと思うよ。日本人はどうしても精神を優先したがるけど、そもそも技術を追求していく時点で精神力はあるんだから。

松山:僕もそう思います。体が良くないとゴルフができないですからね。しんどい時に頑張れるのは精神力かもしれないですけど、やっぱり体力あってこその技と心だと思うんで。

中嶋:僕が23歳でマスターズに出てボロボロになって帰ってきた後、プロアマで巨人の川上(哲治)さんに「中嶋くんどうかね」と聞かれた。僕が「まだ精神的に甘くて」と答えたら一言「技術だよ」って。「どんな時でも打てる技術を身につけなさい」と言われて自分の座右の銘になった。結局技術だって体力がないとできないんだよね。

松山:そうですね。僕がトレーニングする一番の目的は怪我をしない為です。それでも怪我はするけど回復が長引くような怪我にはなってないんで。

中嶋:うちのアカデミーにも一回来てくれたよね。松山選手がやっているトレーニングをみんなで習うという事だった。飯田から英樹が来れると聞いた時、子供たちには直前まで黙っていたんだ。当日の朝「今日はスペシャルコーチがいるから」って呼んだわけ。あの時の「ワッ本物だよ!」という子どもたちの顔は凄かったな(笑)。その後のトレーニングも「吐きそう」と言いながら顔は嬉しそうでみんな頑張っていた(笑)。英樹はどのトレーニングもフォームがきれいで重心がグラつかなかった。

松山:あの時はふらふらしたらどうしようとずっとプレッシャー感じていました(笑)

中嶋:英樹の体の追い込み方は今までのどの選手ともタイプが違うんじゃないかな。

松山:トレーナーの飯田さんは中嶋さんや色々な選手を見てきているので、僕はその経験を聞くことができる。あの選手はどういうことをやってきたとか。でもそれをすぐ取り入れるんじゃなく自分には自分なりのゴルフのスタイルがあるんで。

中嶋:他の競技のトレーニングに刺激を受けることもあるのかな。

松山:興味ありますね。メジャーリーグの上原(浩治)さんがボストンにいた時も見に行きましたし、野球選手は色々なメディアの人が動画を撮ったりしているんでそれを見てすごいなーと思ったり。根本的にバットを振るスピードというのは、野球選手は僕らより速いので、同じようなトレーニングをしたらスイングスピードは速くなると思うけど、ゴルフはそれだけじゃなく細かい動きもしないといけないので。

中嶋:他の人のトレーニングの良い所を自分に合わせて取り入れる姿勢は、特定の技術コーチをつけない事にも通じるのかな。多くの人の意見を聞けると言う。

松山:そうですね。今は技術のコーチをつけないことも楽しんでいるし、それもいいかなと思っているんです。ただしんどくなってきて考え疲れてしまった時にはお願いして考えをまとめてくれるような人がいたらいいなとは思いますね。

-2018年、自分はこうなりたいなと考えていることはありますか

松山:あんまりそういうことは考えないんです。ただみんなが言うので「メジャーで勝ちたい」というのはありますけど、本当はそこじゃなくどれだけ上にいるかというのが大事。どの試合も上位で戦えるような選手になっていたいなと思います。

中嶋:メジャー優勝を期待されるけど、メジャーに調子の波を持っていくとかあんまり考えない方がいいと思う。年間何回も勝つ選手ならば自然とメジャーに勝つ確率も上がるだろうし準備も違ってくる。年間一回しか勝てない選手にメジャーで勝てと言ってもそれは無理だよね。だからメジャーに勝つ準備よりいつも勝つ準備をしておくべきだよ。それがメジャーに勝つ最良の方法だと思うから。

松山:そうですね。17年はブリヂストン招待の最終日にすごく納得いくプレーが出来たんですが、それもその一日だけですからね。365日ある中で一日だけですから。でも2017年はその1日があって良かったなと思います。それがもっと増えて一週に一回とかになったら強いですよね。そうなっていけるようにしたいといつも考えています。