職場のクローゼットを潰して、自宅に置いてあった医学書の一部を移管した。
これまでに講演をしたり、テレビやラジオに出演する度に「どこでこんな知識を学ばれたのですか?」という質問を受けてきた。
「独学です」と答えると、腑に落ちない顔をする。
ほんとかよ?って顔に書いてある。
プロ選手上がりで基礎から勉強するもの好きは少ないので、質問してくる人たちの疑念は理解できる。
ただ、説明するのが面倒くさいし、恐らく分かってもらえないだろうから、いつも適当に答えてきた。
自宅の書斎には、この3倍ちかい医学書があって、それらが今の自分を形成する一部となっている。
決して、持論や経験則をベースにしてきたわけではない。
医学書で基礎医学の知識を取り込み、各分野のスペシャリストたちから多くの事を学んできた。
サッカー選手の頃から、人体に興味があったと思われがちだが、現役時代に知っている単語は大腿四頭筋と大胸筋の2つしかなかった。
引退試合まで専属トレーナーを務めさせて頂いた高田延彦氏に「お前、上腕三等筋って書いてあるけど、三頭筋だろうが!」と大笑いされたほど駆け出しの頃は無知だった。
引退に追い込まれた腰痛症の本質的な原因を探究しながら、基礎医学の知識を積むために、稼ぎの大半を医学書の購入とセミナー参加費に充ててきた。
今では海外の名著が次々と翻訳され、セミナーやオンライン講座、アプリを通して学習できる環境が整っているが、
当時は、どこで学べば良いのか見当もつかなかった。
そのせいで無駄足を踏み、無駄使いも沢山してきたが、それも自己投資の一部だと思っている。
勉強すればするほど、なにもわかっていないことが分かる。
自分の能力にガッカリすることの連続だけど、そのお陰でもっと学びたいと思える。
この20年、医学書を開いて黄色のマーカーで線を引いているのが至福のとき。勉強することが精神安定剤にもなっていた。
そんな至福の時間を増やしていきたいが、大人になると他にやらなきゃいけない事が増して、落ち着いて勉強する時間が確保できない。
なんやかんやしているうちに、地球が一回りして日付がかわる。そんな毎日の繰り返し。
いかに勉強する時間が贅沢なものであるかを、思い知る今日この頃。