洗顔中のオカンを見つめるマツ。
夜間は、彼女の傍でずっと見守っている。
「道端で犬に話し掛けている人を見ると、具合が悪い人だと思ってた」
そう言っていた彼女も、今では四六時中マツとツルに話し掛けている。
先日、犬を飼っている老人は寿命が延びるというデータが公表された。そりゃそうだろう。
最大の理解者であり、「生き甲斐」そのものと暮らしているのだから。
老人と犬の絆は深い。
言葉を交わさない対話。
オカンが寝るまで待ち続けるマツを見ると、色々な感情が湧いてくる。人には出来ない心のケアをしてくれて、本当に有難い。
何気ない日常の一コマを、いつか堪らなく懐かく思う日が来る。
分かっているつもりでも、覚悟を決めたはずでも、そのときが来たら打ちのめされるんだろう。
ときどきは立ち止まり、遠くではなく近くを見渡さなければと思うこの頃。