今さらトムの事を説明する必要はないが、アナトミートレインという概念を考案した、その人である。
一昨年、アリゾナの解剖実習に参加したとき、朝のワークショップでトムが言った。
「近頃、同業者たちから、筋膜が流行っているね。さぞかし儲かっているんだろうと言われるんだが、冗談じゃない。私は誰も筋膜に注目していなかった1980年代中頃から、筋膜の研究を積み重ねてきたんだ」と。
先駆者の苦労が報われる確率は低いが、トムのように脚光を浴びて、努力が報われるケースも稀にある。
彼の素晴らしい人柄と着眼点のセンスが、後押しする力になったのだと思う。
ところで、国内でも筋膜が話題になっているようで、クライアントさんから筋膜について、頻繁に尋ねられる。
「筋膜剥がしって、どうなの?」
癒着した筋膜を、シールのように簡単に剥がせるものなら苦労はしない。
癒着した筋膜には、脂肪組織も筋繊維に入り込んでいる場合もあり、そうなると筋を鉗子で牽引しても、ビクともしない。
表現の仕方は自由だが、誤解させるような言い方や表現が広まるのは、如何なものかと思う。
筋膜ダイエットなんてものまであるらしいが、ここまでくると笑けてくる。
金儲けしかアタマにない一部のメディアにのせられて、根拠がないことでも言ってしまう「専門家」も少なくない。
そういう連中は、流行り廃りの波にのまれて、早かれ遅かれ消えていくから、まぁいいか。