生前にお会いしたのは片手で数えられる程度ではあったが、それでも自分にとって尊敬できる人で、こう言っていいのかわからないが大好きな人だった。
自分の身内でもないし、まして関わり合いが深かったわけでもない。
こういう時になんという言葉を発して自分の気持ちを落ち着かせるべきかわからない。
どんな言葉もどんな行動も、また自分の気持ちを落ち着かせるために、というのもすべて自分勝手な気がしてしまう。
相手が自分のことを覚えていてくれたかもわからないが、そんなことを期待するような気持ちはもちろん起こらず、ただ一方的に悲しいという気持ちが胸にぽとりと落ちている。
自分が悲しいということをこうして書き表しているのも本当は良くないのではないかと思う。
いつも、自分の憧れの人や関わりがあった人が亡くなるとどうしていいかわからなくなる。
ご冥福を、お悔やみを、慣れない言葉を並べてしまうことは自分の想いとかけ離れすぎているし、同世代の第三者が投げかける言葉を見れば英語でR.I.Pと書かれていたりして参考にもならない。
どんな言葉で、また、どんな行動で言えばいいかわからない。
ただ、自分の中にあるのは、あの人が作った春巻きが本当に美味しくて作り方を聞いておけばよかったとか、もう食べられないのに今すごくその味を思い出してしまっていると言うことが私にとっての哀悼の形なのかも知れない。