「探しものはなんですか?
見つけにくいものですか?
カバンの中も つくえの中も
探したけれど見つからないのに
まだまだ探す気ですか」
(引用出典:井上陽水『夢の中へ』)
井上陽水さんの歌を私は一日に何度歌っているでしょうか?
ハナ歌に著作権料がかかるとしたら破産ですね。
スマホがない。
スケジュール帳がない。
カギ、お財布、カード、台本、譜面……
そのたびに私は我を失いそうになる!
最悪の場面を予想してしまうのダ。
もしも出てこなかった場合……
だから、ハナ歌といえども冷や汗をかきながら歌っているのです。(^^;
その片づけられない私が引っ越しを成し遂げたのだから、私を知っている人ほどびっくりしている。
「トモ子さん、絶対出来ないと思ってました」
ほら、ごらんなさい。
世の中に、絶対、なんてことないんだから!
私が思い切れたのは、私の一番大切なものは何か、ということ。
それは、母でした。
母を亡くしたのですもの。
私は、もう何もいらない。
あと少し仕事をしたいので、譜面、台本、衣裳、新しい服などを持って、プロの引っ越し屋さんが4日かかったけど多くのものを捨て去った。
われながら思い切りがいい。
あっぱれ、トモ子。
母を見送った時、つくづく思った。
母には何も持たせなかった。
可愛がっていたぬいぐるみと、私の本一冊。
だってあの世には何も持っていけないはず。
私達の想い出だけで充分よね。
作家の五木寛之さんが、こんなことを書いていらした。
"本当は大事にとっておきたかった母と私の貴重な記念品である。"
それは五木さんのヘソの緒だった。
自動小銃を手にして乗り込んできた兵士に家中を引っ掻き回され、お母様のタンスの中から盗まれた。
よく効く漢方薬だとでも思ったのかしら。
"大切にしているモノほど、なくなる。"
と五木さん。
なくなって良かったですね。
だって、大切なヘソの緒は心の中に仕舞われているのですもの。