吾輩はベテランである。

名前は、トモ子。

今やベテランは何の価値もないものになり下がっている。
私はもう少し尊敬されると思っていたのにね。

それはそうだ。
世の中、なにもかも変わってしまったからだ。

プロジェクション・マッピングなど出てきたら、どう対応していいのかサッパリわからない。
すみません、どう登場したらいいのでしょうか?
お客様にどう見えているのでしょうか?
若いもんに、聞きまくっている。
舞台は、ずっと前からコンピューターに制御されている。

かつては、緞帳の上げ下げなど、名人の方達がいた。
あ・うんの呼吸とでもいいましょうか。
とても良い間合いなのだ。
今は何でもコンピューターの打ち込み。
気合を合わせて、などという言葉は死語なのだ。

私は今でも、譜面は紙を使っている。
昔は全部、写譜屋さんの手書きだったから、それは大事にしていた。
今は失くしても、すぐコピー。
若者達は、タブレット・スマホで譜面を読んでいる。
私も出来るが、味気ない。

踊りの振り付けなど、私はすぐに覚えるのが得意だったが、若者達はスマホに動画で映し、翌日には踊れるのだから、早さでは完全に負ける。

今、私は悔しがるのをやめて、最新のスマホに買い替え、Amazonで三脚を注文し、自撮りに挑戦している。
良いものは積極的に取り入れましょう。

アプリを入れれば、自分の歌いだしのキーも取れる。
本物のピアノを探さなくてもいい。

すみません、すみませんと謝り、最新型に一生懸命追いつきながら、親切に教えてくれなかったスタッフ・キャストは、次は降ろしましょう。
少なくともその権限は私にある。

歌舞伎とか芝居の世界とは違うので、ベテラン風は吹かせられないが、
逆にシニアはデジタルを積極的に使い、音声入力に頼りましょう。
最初は多少プライドが邪魔をするが、なんの、相手はAIじゃないか。

何度同じことを聞いても、「ハァ、サッキ教えたでしょ」などと言わない。

しかし、スマートウォッチは如何なものか。
健康管理、キャッシュレス決済など、日常生活を便利にしてくれる機能が搭載されているそうだが、
おしゃれじゃないわよね。
スポーティなものにはいいけど、ドレスや着物にはちょっとね。

ベテランに価値はない、と言ったけど、一旦お客様の前に出てみなさい。
風雪に耐えてきた私達は絶対違う。
堂々と歳を重ね、若者にはすみません、すみませんと言いながら、上手に使いましょう。

舞台に立ってごらん
違いが、わかるから

お客様は人間
心を掴むのは私達だからね

若者よ
覚悟しなさい