私の友達から
「余命宣告受けちゃった!」と、電話がきた。
「よかったわね」とこたえ、大反省。すぐに謝りまくった。

というのも、家を借りるのにあたって、自分の寿命を10年と計算するのか、20年とするかで大いに悩み、税理士と相談している真っ最中だったので、
口から飛び出してしまった……

「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝る私に

「いいのよ、そう言ってくれる人にしか私言わないわよ。泣かれちゃったら困るもんね」

相変わらずすごく元気!

彼女は若い時から病気がちで、それらを叩きのめし敢然と戦ってきた人だ。
その彼女も、最後に大物が立ち塞がったらしい。

「今度は駄目かもね」と彼女。

「痛みはあるの?」と私。

「ゼーンゼン。食欲もあるし、友達がどこへでも連れてってくれるのよ。私、今が一番幸せよ。もうお金の心配しなくていいもんね」

今年の2月9日、内幸町ホールであった朗読ミュージカルにもお友達を4人も引き連れて来てくれた。ゴージャスなネックレスもし、精一杯のお洒落をして……
私は嬉しくて涙が出そうになる。

「この人、トモ子さんの7月19日のコンサートも行くつもりよ」

まわりのお友達が笑っている。
余命宣告された彼女が一番元気そう。
時々、夜遅く電話がかかってくる。
大声で歌でも歌いそうなハイテンション。

「ねえ、"アレ"はお医者様が間違っているんじゃない?」と私。

「ううん。痛みはないけど、確実に近づいているわ。私にはわかるのよ。私の最後の夢はね、この間の朗読ミュージカルを、私の住んでいるところでやって欲しいなー」

叶えてあげたいけど、私ひとりでは無理だ。
スタッフもピアニストも用意しなければならない。
私はともかく、全員ボランティアというわけにはいかないし……

ある日、彼女の電話番号から、違う声が聞こえた。

「亡くなりました。その日も大いに食べて、喋って、あっぱれ見事なご臨終でした」

沢山の人に元気を与え、賑やかに去っていったそうだ。
えらい!
あなたは精一杯生ききったのね。

お友達のはからいもあり、朗読ミュージカルは無理だけど、小さなコンサートを開くことになりました。
あなたの住んでいたところで……

あなたのためだけに歌います。