中山千夏さんを知っていますか?

私の、芸能界における親友。
ふたりとも子役出身、ひとりっ子、母親つき。

千夏ちゃんは大阪で人気が出たので、西の名子役。
私は東の名子役などと、並び称されたこともある。

彼女は主に舞台『がしんたれ』『がめつい奴』などで大活躍。
私は映画出身で知名度は圧倒的に私の方が上だったが、芸の達者さでは全く敵わなかったと、今でも思っている。

大人達は何故か、ふたりをもめさせたがった。
千夏ちゃんの悪口を私に囁き、千夏ちゃんも私のことは偉ぶって随分嫌なヤツだと思っていたらしい。
同年代の子役であったが、不思議なことに、共演はなかった。
でもお互いに相手のことは気になり、敵情視察は欠かさなかった。
敵は芸術座、私は帝劇。
活躍の舞台は違っていた。
お互いの劇場に出向いて舞台袖まで芝居を観に行った。
目も合わせなかったのに、ふたりの間には不穏な空気が流れていた。

ある日、ふたりがバッタリ出逢ったのがNHKの廊下。
逃げも隠れもできやしない。
私20歳、千夏ちゃん17歳。
宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘ではないけど、私はなんとか勝たねばと思ったのでしょう。なんと言ったと思います?

「キッスしたことおありになる?」私はアメリカ帰りでありました。

「ウッ、ある!」と、千夏ちゃん。

「その後は?」と叫んだのは千夏ちゃん。

そのやりとりで、ふたりは親友になりました。

キッスと言っただけでマウントを取ったつもりになった私。
ふたりともなんと幼かったことか。。。

その後の千夏ちゃんの活躍ぶりも凄かった。
自分の作詞した『あなたの心に』が大ヒット。女優、テレビの司会者、声優(『じゃりン子チエ』など)、作家(直木賞の候補3回)、参議院議員……やることなすこと大当たり。
向かう所敵なしの状態。
親友といえども内心密かに嫉妬の心はあった。
「サユリスト」「チナチスト」という言葉もあった。吉永小百合派、中山千夏派をあらわす。

その千夏ちゃんも、今は伊東で作家暮らし。芸能界はやめてしまった。
もうひとりの私の芸能界の友達で、国民的歌手と言われていた佐良直美さんもやめている。
かろうじて残っているのは、私ひとり。

昔、生き馬の目を抜くといわれた芸能界。
私も未だに住みづらい。(・ω<)