先日の夜、飛行機で東京に帰ってきた時のこと。
羽田空港に着陸すると、いつものように機内アナウンスが流れます。
アナウンスの最後に、CAさんがさりげなくこんなことを言われました。
「五月も半ばを過ぎ、新年度のお疲れが出る頃と思います。皆さまお身体にご留意の上、どうぞこの後もお過ごしください。ご搭乗ありがとうございました」
なんともあたたかなアナウンス。心にぬくもりが届きます。
飛行機に比較的多く乗る機会がある中で、この最後の「ひと言」のアナウンスには特に決まりがないことに気づきました。
アナウンスされる方の、個人の言葉として言ってくださっているようです。
基本的には「ひと言」付け加える必要がないようです。
通常は「ご搭乗ありがとうございました」だけを、ていねいに言ってくださいます。
ただ、その日の担当の方が、搭乗客に対して、何か「ひと言」加えていいということになっているようで。
決まりだからと無理して加えられた「ひと言」でなさそうなのが、余計に心に染みてきます。
「五月も半ばを過ぎ、新年度のお疲れが出る頃と思います」
相変わらずコロナ禍であるものの、世の中が動き始めたこの春。
みんな一斉に走り始めました。
そして新年度、誰もが新しい毎日を送るなかで、少し疲れが出てきてもおかしくありません。
まして世界では心に重くのしかかることが続く日々。
担当の方が、きっと身の回りの方たちやご自身を思いながら口に出された「ひと言」なんだと思います。
ささやかでも、しっかりと、元気や勇気をもらえますね。
この機内アナウンスの「ひと言」。
私の本、
の「おわりに」にも書きました。
冬至の夜のアナウンスでした。
思い出すだけで、いまだに心があたたまる話。
本からその部分をご紹介します。
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いま、心の温度が下がっている、そして少し乾いた時代なのかもしれません。そんな時代だからこそ、「ひと言」のぬくもり、「ひと言」の潤いが、思った以上に人に元気や勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
私もたくさんの人たちの何気ない「ひと言」に、元気や勇気をもらってきました。
毎日の暮らしのいたるところで、そんな「ひと言」をプレゼントしてくれる人たちがいます。
2年前の冬至の日のこと。
私は出張先の福岡から夜、ANA便で羽田空港へ戻ってきました。
その日の機内は仕事での利用客が多いようで、年の瀬ということもあり、少し疲れた空気も感じました。
羽田空港着陸と同時に、キャビンアテンダントの女性が「ベルト着用のサインが消えるまでお席をお立ちにならず…」といつものアナウンスをされます。
滑走路を移動する静かな機内にたんたんと流れるアナウンス。
その日のキャビンアテンダントの女性は、アナウンスの最後にこんな「ひと言」を加えられました。
今日は一年でもっとも昼の短い冬至です。太陽を表すというゆずで、ゆず湯に入るといいと言われています。どちらさまも、一年で一番長い夜をお楽しみください。ご搭乗ありがとうございました。
ふっと、機内にゆずの香りや、ゆず湯のぬくもりが広がったように思えました。
同時に、「冬至。今年も終わりか、今年もよくがんばった」なんて心の声が、機内のあちこちでつぶやかれたような気がします。
出張疲れで家に帰るのではなく、一年で一番長い夜を味わうように温かく過ごそう、そして明日もがんばろう。
そんな気持ちにさせてくれたアナウンスです。素晴らしいですね。
できる大人はひと言加える 青春出版社 2017
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読み返して、
「今年も冬至に向かって、がんばろ!」
なんて思っちゃいました。
「ひと言」のぬくもり、
「ひと言」の潤い、
やっぱり嬉しいですね。
今日もイイ日に。