今回は、これからの地方自治というテーマのお話をさせていただきます。

 

これは、現在開会中の大分市議会令和2年第2回定例会の一般質問で取り組みたいテーマでもあります。

 

以前の記事A以前の記事Bで、地方自治の持つ価値について少し触れさせていただきましたが、僕は地方自治というものがとても大切なものだと思っています。

 

全国には、津々浦々に沢山のまちが存在します。

 

当たり前のことだけど、そのまちそのまちは、それぞれに事情が違います。

 

まちごとに事情が違うのに、全国一律でまちづくりを進めても効率が悪いし、解決することができない課題も出てきます。

 

だから、そのまちに住む住民が、そのまちの課題や強みを認識し、独自のまちづくりを行う地方自治には、大きな価値があると言えるはずです。

 

そんな地方自治を進めていく上で、必要不可欠なものが地方分権です。

 

いくら地方自治体が独自のまちづくりを進めようと思っても、権限や財源がなかったらできないことが多くあるからです。

 

地方分権は着実に進んでいて、大分市のような中核市では、広範囲にわたって独自のまちづくりを行える環境が整ってきています。

 

人口減少社会の到来や、少子高齢化、東京一極集中といった課題が重なり、今後、地方分権をさらに進め、それぞれのまちが抱える地域課題にきめ細かな対応をしていくことが求められると考えます。

 

 

そのような背景の中、国が提唱した連携中枢都市圏構想にもとづき、全国で、連携中枢都市を中心とする都市圏において、多分野にわたる市町村間の連携・協力が進んでいます。

 

大分市においては、周辺の6市1町と連携協約を締結し、大分都市広域圏を形成しています。

 

この大分都市広域圏では、小さな基礎自治体では対応の難しいごみ処理などの環境分野をはじめ、広域観光という視点での魅力創出や定住・移住促進の連携、広域圏における経済戦略の策定など、多様な取り組みを推進しています。

 

これまでは都道府県が担ってきたような基礎自治体業務の補完機能を、連携中枢都市を中心に基礎自治体間の共助によって生み出していると言えます。

 

全国においては、都道府県を跨いだ連携中枢都市圏(広島県と岡山県を跨る備後圏域など)の形成も生まれています。

 

広域連携は、それぞれの基礎自治体がまちづくりを推進していく上でのキーワードになってくると思います。

 

このように、基礎自治体はその機能を高め、広域連携によって、連携中枢都市は広域に一部の補完機能を担うまでになりました。


 

翻って、広域自治体はどうでしょうか。

 

沖縄県を除けば、明治32年以来、120年以上、当時の枠組みが現在まで残ったままになっており、人口規模や財政規模に大きな差が生じています。

 

全国でもっとも人口の少ない都道府県は、鳥取県であり、人口は57万人ほどです。

 

ちなみに、もっとも人口の多い基礎自治体である横浜市の人口は376万人ほどです。

 

この数字に違和感を覚えずにはいられません。

 

僕の住む大分県は、人口規模も財政規模も全国の平均以下です。


思えば、大分市は広域連携によって補完機能を担う随分と前から、財政という面において補完的役割を担ってたと言えます。

 

大分市民も大分県民税を納めているものの、県民のための施設を建設する際などに、大分市は大分県からの応分の負担の求めに応じてきました。


県庁所在市としての必要な振る舞いだったと思います。
 

ですが、地方分権が進む中でまちづくりに競争原理が作用しはじめ、人口減少社会も到来した今、僕たちはこの構図についてもう一度考えてみる必要があるはずです。

 

 

今回は、大分県における県立武道スポーツセンターの建設を考察の資料にしたいと思います。

 

大分県立武道スポーツセンターは平成31年に完成しました。


この県立武道スポーツセンターの建設によって、大分市は、独自で取り組みを進めていた大分市アリーナ構想を凍結することになりました。

 

この構想は、大分市立のアリーナを建設するというもので、JR大分駅に隣接する用地を大分市が保有していることから、九州他県のアリーナ施設との比較による公共交通アクセスの優位性によって、アリーナのより多目的な利用を想定しており、大規模イベントやMISE(国際会議や展示会など)誘致などにもつながる非常に投資価値の高いものでした。

 

慣例上、先述の県立武道スポーツセンターの建設費を4分の1負担することと、既存の県立体育館の維持管理を大分市に移管するという議論もあったことから、財政上の負荷がかかり、大分市内に大規模な屋内スポーツ施設が2つ存在することは供給過剰となることも考慮した上で、大分市は構想を凍結しました。

 

大分市にとっては、独自で施設を建設するよりも支出が少なく済むという利益と、希望する施設との乖離とまちづくりの主体性の減少という不利益が生じたと分析することができます。
 

外的な要因を度外視した上で、もしも、僕に議員としてどちらの道を選ぶのか議決する権利が与えられるならば、割安でアリーナを建設することよりも、主体的な自治を行い、長期的視点から真に大分市のための投資となる独自のアリーナを建設する道を選びます。


だけど、僕は、決して県の存在を悪だとは思いません。

 

大分県も県民のために大きな努力をしてくれていると一人の県民として感じているからです。

 

だから、これは悪者のいない悲劇なんです。


より主体性と戦略性が求められる現代の地方自治において、基礎自治体と広域自治体が価値観を共有することが難しいという構図こそが、悲劇を生み出している源であると考えます。

 

こうした悲劇は、基礎自治体と広域自治体間の構図という観点で言えば、大都市圏で見られるいわゆる二重行政という問題とも同じ穴のムジナと言えると思います。


詰まるところ、僕は、現在の広域自治体のあり方に大きな課題意識を持っているということです。


このまま、自らも油断が許されない財政状況でありながらも、基礎自治体が財政面において補完的役割を担いながら、広域連携においても補完機能を増していくことは望ましくありません。

 

これからの時代に求められる基礎自治体の広域連携のリーダー像は、リーダー自らが発展を遂げることで圏域全体を牽引していくというものであると考えます。
 

広域連携の中で補完機能を担う中枢都市が、社会のスピードに遅れることなく、そのようなリーダーとなっていくためには、投資を導くための構図の転換が必要なはずです。


 

僕は、その答えを道州制に求めたいです。
 

道州制とは、都道府県をより規模の大きな『道』と『州』に再編し、高度な地方自治権を与えるというアイデアです。

 

僕が道州制導入に魅力を感じる点は、現在の地方自治の制度で行われているよりも大きな規模で、戦略的に投資の選択と集中が行われるということです。

大分市のことで考えてみると、投資のパイが大きくなることで、製造品出荷額九州一位を誇る大分市の屋台骨とも言える大分臨海工業地帯や、世界的に見ても優秀な港湾である大分港へのより大きな投資、九州を横断する中九州道の早期開通といったことへの推進力が得られると思います。

 

そして、東九州の発展と本州から南九州へのアクセスの利便性向上、有事の際の山陽道の代替性確保などに大きく寄与するであろう豊予海峡ルート実現についての日本社会での重要度が増してくることが容易に想像できます。

 

大分市の視点から見た道州制導入のメリットについてお話させていただきましたが、全国規模で考えてみても、高いポテンシャルを持った都市がスケールメリットによって大きく発展するチャンスを得ることができ、そのことが基礎自治体による広域連携によって社会全体の発展や持続可能性につながっていくという構図が成り立っていくと考えます。

 

なかなか良いじゃないって思ってくれました?

 

 

実は、この道州制については、戦前から長年に渡ってその導入の是非が議論されてきました。

 

道州制議論が盛んに行われた最後の時期であった平成17年から平成24年にかけて、九州市長会では、道州制導入実現に向けて、九州8県を1つの道州とする『九州府構想』を発案並びに研究し、三度の報告書作成がなされています。

 

その内容は、詳細に具体性をもって検討されたものであり、今読んでみても色褪せていませんし、平成18年に作成された最初の報告書に道州制導入が求められる背景として記されている『人口減少社会』や『東京一極集中』、『グローバル化と高度情報化社会への対応』および『広域自治体の再検討の必要性』という課題は、当時にも増して喫緊性の高いものとなっています。

 

現在の連携中枢都市圏構想の中で一部実現している、都道府県を跨いだ文化・経済的結びつきのある市町村の連携についても言及されています。
 

この先進的な『九州府構想』は、九州の財産だと思います。

 

 

『国からの押し付けの地方分権でなく、地方から積み上げていく地方分権の議論を行っていく』

 

これは、道州制導入の議論をする際の重要な考え方です。

 

やっと結論にたどり着きましたが(笑)、僕は、今回の議会で、『九州府構想の議論』を大分県内や九州内でもう一度やっていきませんか?という提案をしようと思っています。

 

道州制導入によって強烈な地方自治を担っていく主体者として、基礎自治体にはその議論を行っていく責任があるはずだからです。

 

 

ということで、今回の議会もしっかり取り組んでいきますということを宣言させていただくと同時に、Youtubeの更新も頑張っていることを宣伝させていただき、今回の記事の結びといたします。

 

松木大輔の[やさしい政治]