みなさま、こんにちは。今日は10月3日(日)です。自民党総裁選が行われた9月29日はドキドキの一日でした。一位決定戦を制し、岸田候補が総裁が選出されました。すなわち第100代総理大臣です。この一日の模様は、私のyoutubeで発信(「一日密着総裁選!」)しているのでよかったらご覧ください。党の主要ポストが既に任命され、明日以降は岸田内閣の新閣僚も確定することと思います。いよいよ、岸田内閣発足です。岸田総裁は、成長と分配の好循環の新しい資本主義を提唱されましたし、また、安全保障においても、敵基地攻撃能力保有の議論についても積極的に行っていくとおっしゃっておられました。今回の総裁選では、多様な候補が(しかも4人中2人が女性!)多様な論点について多様な考えを国民の皆様の前で堂々と論戦を戦わせた新しい自民党を感じさせる総裁選でした。岸田総裁は、「聞く力」に優れた包容力ある素晴らしいリーダーとなられることを期待しています。それにしても、今回の総裁選は本当に勉強になりました。きちんと学びを活かしていきたいなあと思っているところです。

 

自分の個人的関心事に引き付けていえば、今回の総裁選は、日本の安全保障の議論を進めていく上で極めて有益だったと思っています。なんといっても、安全保障について、高市候補が防衛費倍増、敵機基地攻撃能力や中距離ミサイル配備の検討まで踏み込んだご発言をされ、4候補がこれら論点について国民の前で議論を行ったことにより、安全保障の今後の喫緊の課題について、ほぼタブーが無くなったと感じるのです。そのこと自体が非常に大きな成果だったと思います(総裁選前は、「敵基地攻撃能力」なんて話をするのも結構勇気がいったことを思い出して下されば言わんとすることがわかって頂けるかと)。

 

 さて、私は、今何をしているか。5日の朝の自分のセミナーの準備をしています。コロナのせいで何度も延期になってしまったのですが、ようやく緊急事態も開けたので。テーマは「経済安保」。とはいえ、半導体のサプライチェーンとかサイバーセキュリティという「守る方」の話ではなく、攻める方の話をしたいと思っています。具体的には、ずばり「海外装備移転」。これは、私が防衛政務官に就任する前からずっと取り組みたいと思っていたテーマなのですが、この1年でより問題意識が明確になりました。現行の国家安全保障戦略(2013年)もそろそろ9年であり、中国を巡る安全保障情勢も大きく変わっているわけで改訂が必要だと思いますが、その中では、海外装備移転や防衛産業保護についても正面から安全保障政策であると捉えなおして、様々な障害を取り除きより積極的に臨める体制を作るべきだという方針を打ち出してもらいたいと思います。本件については、また、別途書きたいなと思います。

 

 今日は、自分の頭の整理も兼ねて今月があったっけということを振り返ってみようかと思います。9月は国内では総裁選が一番大きなイシューでしたし、また、地元大阪での選挙も複数あって応援にも度々行ったので何となく国内イシューに取り組んだ1か月だったなあという感じではあるのですが、実は、世界的にはかなりのビッグイベントや重大な動きがいろいろありました。

 

15日に、AUKUS(米、豪、英)のアングロサクソン同盟みたいな枠組みも発表され、特に、豪州が原子力潜水艦を取得することが発表されました。豪州が完全に舵を切った感があります。また、フランスとの契約を反故にするサプライズ付きなので、フランスだけでなくフランスに同情する欧州全般についても影響もあり、米欧関係(豪欧関係)の修復が必要です。AUKUSは対中抑止に資するものですから、日本としては歓迎です。ただ、フランスを怒らせ同盟国との根回しも今一雑というこの発表の仕方はちょっといかがなものかとも思います(最近バイデン政権の外交のやり方が雑な気がします。最初は良かったんだけど)。

 

 24日、QUAD首脳会談が対面で行われ、完全にQUADが定着したなという感じがあります。経済、技術、宇宙(衛星データ共有)なども協力対象です。防衛は議題にしませんでしたが、今後の方向性としては、防衛面でも(QUAD防衛大臣会合とか)進んでいけばいいなあと思うところです。EUが「インド太平洋戦略」を発出したのも自由で開かれたインド太平洋作りに向けた大きな意義があります。

  

 また、今月実は個人的には最も衝撃だったのがTPPを巡る動きです。16日に中国が加盟申請表明したのに続き、22日、台湾がこれに触発されて加盟申請を正式にしました。対中戦略の観点から、今後のハンドリングが極めて重要になってきます日本の議長国は本年まででCPTPPの議長国はシンガポールとなります。マレーシアやブルネイは中国の加盟申請表明を「歓迎する」としています。NZも前向きな感じ。日本からすると「ええ!」と思うわけですが、東南アジア諸国の対中観は日本のそれとは異なることを理解しなければなりません。TPPはただの貿易枠組みではありません、4年前の予算委員会でも質疑しましたが、これは、自由で開かれた世界を志向する「海洋国家同盟」なのです。RCEPにインドが結局入らなかった結果、RCEPは中国のプラットフォームになる可能性が高いことを考えれば、TPPまでも中国経済圏になってしまっては困ります。他方、英国が既に2月に加盟申請をして交渉中であり、台湾も加盟申請をしたことに鑑みれば、中国の加盟申請は「要監視」としつつ、中国自身の加盟申請を地域の安定という観点から良い形で活用できるかどうかといった観点からも戦略的な思考で取り組む必要があると思います。米国がTPPに戻ってくる起爆剤にもなるかもしれません。ともあれ、メンバーでもない中国が、「台湾加盟に反対する」といっていることには突っ込みどころ満載ではありますが、まさに、台湾が中国より先に(同時はあるかもしれないが)加盟しなければ台湾加盟は実現できないことは明白です。日本は台湾加盟を支持していますし、台湾加盟を確保することは死守しなければなりません。

 

 北朝鮮も9月だけで3度もミサイル発射していますし、そのミサイルも極超音速の変則飛行型と北朝鮮は発表しています。弾道ミサイル防衛での防御が難しいミサイルを開発しようという意図は明らかです。一方で、南北のホットラインは再開してもいいとか、文在寅大統領の国連演説での終戦宣言提案についても後ろ向きでない発言をするなど、韓国への秋波も送っている北朝鮮です。韓国が米国よりになったので米韓離間の意図もあるでしょうが、まあ、それだけ経済的に困っているという見方もできます。

 

 米中対立は深まっていますが、一方で、米国からの対話の呼びかけもおこなわれています。強い立場から対中外交を行うというバイデン政権の方針なのであろうと思います。米中対立は長く続くと思いますが、抑止と対話のフェーズは様々変わっていくことも念頭に置く必要があるでしょう。