こんにちは。3連休最終日ですね。いかがお過ごしですか。トルストイの名作「アンナ・カレーニナ」の冒頭に、「すべての幸福な家庭は互いに似ている。不幸な家庭はそれぞれの仕方で不幸である。」という有名な一節がある。が、私は、「コロナ対策不首尾国の間に共通性はあまりない。が、コロナ対策優良国は共通点がある。」と思う。日本は、今コロナ優良国リーグにいる。一応。しかし、感染拡大の現状を反転させられないとリーグから外れてしまう可能性もあるのではないかと危惧している。

 

本日は、1月11日、2度目の緊急事態宣言が7日に発出されてから4日。東京の感染者数はこの間2000人を超えた。10日は日曜日ということもあってか、1491人に減ったが、まさに今が感染爆発を抑えるための正念場だと思う。感染数母体が増えれば、増加も加速するのでここはなんとしても感染を管理可能なレベルまで抑え込む必要がある。特に、変異種が国内に入っていることを考えると、未だ変異種の市中感染が確認されていないとはいえ、従来の感覚以上に「足の速い」ウィルスを相手にすることを前提に考える必要がある。医療崩壊で死亡者が増えることを防ぐ必要があるのは当然のこととして、結局のところ、感染の危険が高い状況では、経済が回らず、オリパラ開催も危ぶまれることとなってしまうからだ。つまり、コロナの感染抑制がすべての道を切り開く上での第一歩ということになる。

 

昨年3月に書いた雑誌の寄稿で「コロナに対する危機管理とコロナ禍における経済維持の優劣により、コロナ後の国家の序列が変わってくる可能性がある。」と書いたが、自分の予想以上にその傾向が明らかになってきている気がする。

 

コロナについては、いろいろ思うところがあるが、昨年丸1年世界がコロナと対峙してきた結果、一つの世界が見えてきている。それは、

 

①コロナに未だに苦しみ経済的ダメージと社会的ダメージを受けている国(「二軍」)と、

②いち早くコロナ禍を抑え込み、経済を復調に戻している国(「一軍」)とに分かれてきているということである。

 

世界の死亡者は約192万人であるが、そのうち第一は米国で37万人、2位はブラジルで20万人、インドが15万人、メキシコが13万人、英国が8.1万人、イタリアが7.8万人、フランスが6.7万人、ドイツが4万人、ロシアが6万人、イランが5.6万人。

 

事実として、世界の感染者数・死亡者数トップランキングに並ぶのは欧米諸国とインド、ブラジル、メキシコ等であり、東アジアの国は1か国も入っていないということである。特に、人口比で考えたときに、欧米諸国の対人口死亡率は高いと思う。ファクターXがあるかどうかはわからない。

 

逆に、成績の良い方の国は、台湾を筆頭に、シンガポール、タイ、ベトナム、NZ、豪州、中国などが上げられる。台湾に至っては、4月以来、感染者がゼロであり、累計での感染者数は812人、死亡者は7人である。台湾は突出しているとはいえ、シンガポールは死者29人、ベトナムは累計死者数35人、タイは67人だ。中国も発生源であり人口が15億と巨大であることを考えれば、死亡者4634人に留まっていることは評価されるべきだろう。もっとも、中国の統計が信用できるかという問題はあるが、年末カウントダウンであの中国が密集を許しているということは、感染が押さえられていることの自信の表れだと思う。東アジアの国だけではない。豪州は、感染者数は死者は909人で、新規感染者数は16人だ。K防疫を誇っていた韓国だが、死亡者が1140人で、東アジアの優良国リーグの中では中程度といったところだろう。

 

日本は、正直言って、この「一軍」の中では下位だろう。日本は、感染者数280,775人、死亡者数3,996人である。死亡者2.4万人のインドネシア、9400人のフィリピンよりはましだが、決してトップ集団には入っていない。ただし、上記の欧米のような2軍にも入っているわけではない。ここは、日本が一軍に残れるかどうかの大事なポイントに差し掛かっているという認識が必要だと思う。

 

一軍に残ることは重要だ。なぜなら優良国同士の間では、経済再開、人の往来再開といったことが容易にできるようになるからである。「困難国」との間では、感染拡大が怖くて国際往来や経済再開には困難が付きまとう。こうしたことがあと1年、いや数か月も続けば、「優良国同士だけで活性化する経済圏」(一軍経済圏)が出現することも考えうる。

 

優良国の国は、たとえば台湾でもシンガポールでも、人々は、飲食店に安心して出かけている(人数制限や感染症対策上の制限は継続されている)、国内観光地にも沢山行っている観光地は潤っている。今まで外国人観光客が潤していた分を今は海外に行けなくなった自国民が大挙して行っている。海外に行けない分、国内で消費する。だから、レストランも繁盛している。観光産業も潤っている。感染を抑えて社会が安心感を取り戻すというのはこういうことなのだ。

 

では、こうした優良国に共通する要素は何なのか。これは、民主主義国、非民主主義国関係ない。

 

1、強制力のある措置とそれを実効たらしめるための給付

2.捕捉手段の徹底(特にスマホはじめとしたデジタルの活用、検査数の充実)

3.政府から国民に対する理解促進のための発信の充実

 

失敗している国に共通点はないが、上手く行っている国には共通点はある。他にもそれぞれの国において独自の要素はあると思うが、この3つは共通していると思う。

 

台湾ではマスクは義務付けられているが、マスクをせずに公共交通機関に乗ったりしたら、罰金約5万円までが課される。シンガポールも似たようなもので、罰金3万円。台湾では、自宅隔離中に外出したら、罰金36万円から360万円。シンガポールでは、飲食店は開業しているし、多いににぎわっている。しかし、1メートル以上の席をあけるという規制に反したら、即営業停止である。人の集まりの人数も数人以下に制限されているし、これに違反したら高額の罰金である。

 

昨年大半の期間、日本は、こうした強制力のある手段もない中で、つまり、ろくな武器もないなかで、感染者数も死亡者数もある程度に抑えることに成功してきた。

 

それは、ひとえに医療時従事者の高いモラルと日本国民の意識がアラートに維持されたことによるものだ。

 

しかし、コロナ疲れや「高齢者と基礎疾患のある人以外は死なない。若者は関係ない。」、「経済の方が大事。」といった感覚が広まるにつれ、緩んできたことは否めない。今や、コロナに対する恐怖感により「自主的に」政府の「お願い」に従うということは無理になってきているのだ。今こそ、早急に特措法に強制力ある措置をもたせ、日本政府が、早期に果断な実効的措置を取ることと可能にしなければならない。

 

経済は重要である。インフルエンザでも人は死ぬ。毎年1万人なくなっていたインフルエンザは今年はほぼ不存だ。失業率1%増で4000人の自殺者が出るという統計にかんがみても、経済が回ることは重要だ。結果的には、2020年の死亡者数は前年に比べて減っていることもありうる。なので、一定程度のコントロール可能な状況が維持できれば、経済重視はありなのだ。でも、繰り返しになるが、それ、一定程度の管理可能なレベルな感染状況を抑えている、アンダーコントロールであるということが絶対条件なのだ。

 

しかし、今や、日本は優良国グループにいられますか、それともはずれていくのでしょうかという境目に近づきつつある。日本がここで踏みとどまって感染抑制方向に反転できないなら、それこそオリパラもあったものではないだろう。そのことを肝に銘じてコロナ感染拡大を何としても抑えることが必要である。

 

どの国も手探りで対策を講じている。ともかく、経済面も視野に入れた上、科学的知見により最善と思う方法を試し、上手くいかなかったら躊躇せず撤退して違う方法を講じる。その繰り返ししかないと思う。

 

そのためにも、特措法は罰則・罰金といった強制力のある措置を事業者だけでなく個人に対しても持てるようにするべきだ。昨年7月に歌舞伎町でのクラスターが発見されたときに、果断に措置をとっていれば、現在のような状況になっただろうか、と未だに思う。

 

強制力のある措置を早期に果断に取ることは、特定の者にとっては厳しくても、結局日本全体にとってはもっとも負荷の軽い措置である。医療への負荷も回避でき、感染拡大防止により経済にもプラスである。

 

以前にコロナ患者を受け入れている病院に視察に行った。看護師さんたちは、家にも帰らずコンビニとホテルと病院をぐるぐる回る生活の中で、「テレビをつけると自粛を守らない人たちが騒いでいるのを見るととても複雑な気持ちになる。一体自分は何を守っているのだろう。」と言って、「自粛を守らせるための措置を国はもっときちんととれないのですか。」と要望された。単に守らない人は別にして、多くのお店側には自粛を守ることができない個人の側にも事情はあるのだ。お店については経済的な心配が一番の理由だろう。だから、給付も然るべく必要だ。同時に、このコロナという厄介なウィルスがおそらく年単位でならない状況を考えれば、コロナ感染下でも継続できる業態に変えていく必要がある。(テイクアウトだけでなく、専門家の科学的知見に基づいて、技術的にどのレベル以上の換気扇を単位面積あたりどれぐらいつけて、席をどれぐらい離して、透明パーティションを設けてなど、具体的な基準を国が設ければいいのにと思う。その基準を満たしていれば安心して営業ができるという基準はできないものなのだろうか。)

 

そのために、特に打撃をこうむる者に対しては、制限遵守が実行できるよう、十分な給付も必要である。優良国においては(中国は知らないが)給付も十分なされており事業者が規制に応じることが困難ではない措置も然るべく取られている。

 

日本は、善人と平時を前提にした法制度や社会制度になっているが、コロナはじめ今は危機の時代だ。「内なる脆弱性」と呼んでこれまでもずっとその解消に取り組んできた。これは、コロナ特措法に限らず、安全保障上問題のある土地所有や安全保障上必要な措置について平時や非安全保障業種と同じことを求める様々な法制度全てについて言える。今は危機の時代だ。歴指定な転換期にある、そういう時代だ。ルールを守らない人もいる、悪い人もいる、危機もあるという前提で社会を作らない対応できない。危機の時代を克服して、次なる繁栄の時代に向かうこともできない。

 

一部の人の行為が全体に悪影響を及ぼす事態を回避するためには、「要請」ベースでは無理なのだ。今の日本は、蛇口の水を開けたまま、一生懸命床拭きをしているようなものだ。蛇口を確実に締めることができなければ、感染拡大防止はできない。特措法改正で日本のコロナ対策を抜本的に改善するべきだ。現時点においては、今の感染をともかく抑えるためにあらゆることをするべきだと思う。

 

そして、特措法を優良国並みに強制力のある措置を事業者のみならず個人に対してもとれるようにするべきだ。そうでないと、単に、日本の医療崩壊が起きるというだけではなく、日本経済が東アジアの中で劣後し、「優良国経済圏」から取り残される可能性もある。そのことは、経済にとどまらず日本の国際的地位や日本を取り巻く安全保障環境にも悪影響を及ぼすだろう。

 

今が正念場。自分は自分の立場で取り組んでいく。日本の多くの方が、危機感を共有し、対策のための果断な措置について賛同してもらえれば、日本が危機対応できる国になる上で大きな追い風になると思う。どうか、宜しくお願い致します。