みなさま、こんばんは。22日の韓国のGSOMIA破棄を受けて23日にアップした「GSOMIA破棄①~文在寅「革命」は韓国をどこに連れていくのか」の続編です。それでは、日本はどうすべきなのか、について。
すぐに書けなかった(いろいろあって手が付けられなかった)1週間の間に、
①韓国のGSOMIA破棄翌日に北朝鮮がミサイル発射、
②文政権の退陣を求める数万人のデモ(韓国では全く報じられない)、
③米国は文在寅政権を名指しで批判。トランプ大統領は、G7の場において「文在寅大統領は信用ならない」と発言、それに対し、韓国が「米国があれこれ偉そうにいうな」発言で返す、
④イナギョン総理が28日のホワイト外し実施前日に「日本がホワイト外しを撤回するなら、韓国もGSOMIA破棄撤回を考え直す」と発言(前提に、韓国高官が「韓国がGSOMIA延長したとしても、日本はその後でGSOMIA破棄すると思ったから」と発言したとの報道あり)、
⑤RCEP会合で、またもや韓国代表が日本を批判、
⑥駐韓米国大使を呼びつけ抗議、
と沢山のことが起きました。
28日、日本は予定どおり韓国をカテゴリーAからBに変更して輸出管理手続きの実施を開始しました。正直言えば、以前のブログにも書きましたが、措置自体は正当ですが、たまたまとはいえ、いちいちタイミングが残念だなあと思います。せっかく、GSOMIA破棄で文在寅批判が国内でも米国でも高まっている中ですから、もう少し、この状態をひっぱりたいところでした。カテゴリー変更が実施されたことで、また、韓国はこれを使って「GSOMIA破棄隠し」ともいうべき様々な日本攻撃の挙に出てくることでしょう(と思っていたら、先ほどWTO提訴のニュースが)。前日に、韓国がGSOMIA復帰とのバーターを呼び掛けましたが、これも、GSOMIA破棄を日本のせいにしたいからでしょう。GSOMIA破棄に対する米国の反応が韓国の予想よりずっと厳しく、政権浮揚どころか国民からの反応もかなり厳しいものであったため、「ほら、やっぱり日本は予定通りホワイト外しを実施したのだから、GSOMIA破棄して当然だったのだ」と日本に責任を転嫁したいのです。
日本が韓国に対し達成したい目標は、ベストを言えば、韓国が日本と価値を共有する友好国(準同盟国)であり、したがって、安全保障上も経済面でもウィンウィンの協力関係が構築でき、さらには、日韓が、北東アジアを平和で繁栄した地域とするために連携することといったところですが、現状これは、北極星のような状態なので(目指すべき目標だが手に届かない)なので、もう少し、リアリスティックな短期的目標についていえば、
1.65年違反の旧朝鮮出身労働者問題判決について、韓国政府自身がお金を拠出して解決すること(→現在の日韓関係の土台である65年協定が崩れるような事態を避けること)
2.韓国に今後反日行為をさせないこと、
3.(上記に加え、GSOMIA破棄で見えた懸念される韓国の行く末に対抗するべく、)韓国が日米韓陣営にできるだけ長く留まるようにすること(=中国の方に行かないとか、反日統一国家の出現を防ぐことでもある)
また、本来、これは手段の部類に属することですが、上記1.~3.全ての目標を達成する上で、文在寅政権がこれ以上勢力を伸長しないこと(確信犯的極左親北革命が続けば続くほど上記全ての危険が高まる)も重要でしょう。
ところが、今や、日本は輸出管理運用見直しの正当化のために多大な時間を割かれ、本来の目標達成から離れてしまっているように思います。
私はますます疑念を強めています。
当初、韓国が日本に対してもっている目標は「日本にホワイト外しを撤回させる」という極めて限定的なものであったかもしれません。しかし、ここにきて、前回のブログに書いたように、やはり、韓国政府全体でもなくましてや一般国民はそうではないと思いますが、少なくとも文在寅大統領とその側近(ざっくり言って青瓦台)は、反日を奇貨としてピュアな意味での南北統一と、その前提条件ともなる米韓同盟からの離脱を目指しているのではないか、と。経済的にほとんど意味のない輸出管理運用見直しの対抗措置にしては、米国に対する対応を含め、いくら何でも過剰すぎます。
また、文在寅政権(文在寅大統領及びその取り巻き達)と韓国国民や保守派ははっきり分けて考えるべきだということも改めて申し上げます。しかし、時間がたてば、保守派が毛沢東の文革(除く武力)よろしくパージされている現状では、文在寅政権の意向がそのまま韓国国民全体の意向となっていくことでしょう。今が頑張り時です。
しかし、そのような可能性を想定するとしても、今は、ともかく、韓国が日米韓枠組みに留まるように最善を尽くすべきです。地理的に近接した隣国を「味方」陣営に留めることは日本の国益です(たとえ信用ならないとしてもあっち側に行くよりまし)。その中で状況が変わることもあり得ます。「想定」と準備は必要ですが、「決めつけ」はいけません。
数万人規模の文大統領退陣デモが示すように、韓国人の中にも、韓国の行く末を心配し、「GSOMIA破棄は韓米同盟弱体化の高速道路であり、北朝鮮や中露に近づこうとする文政権には韓国を任せられない」という認識を持つ方々も沢山いるわけです。最近、反日に疑問を呈する「反日種族主義」という韓国人の書いた本がベストセラーになったりもしています。韓国が、踏みとどまることができるとしたら、こうした韓国国民自身の力を置いて他はありません。
このところ、韓国の国会議員や元議員や韓国に在住する欧米の国際政治学者などと会って意見交換してまいりましたが、そのたびに驚くのが、いかに、韓国の認識が日本のそれとずれているかということです。韓国の人たちは、慰安婦財団解散、旭日旗、レーダー照射、旧朝鮮半島出身労働者問題判決といった日本に対する一連の一方的反日行為について、殆ど悪かったという意識がありません。話の始まりは、「日本の経済報復のせいで。。」からなのですが、「報復」というわりには、その前の一連の反日行為についてはとても軽く捉えています。一般の韓国人は、日本がなぜ韓国に対し怒っているのか、ピンときていない。65年の合意内容もその経緯も一般の国民はよく知らないのでしょう。そして、よく知らされていなくても構わないという心理があるとも思います。その背景には、これは一般人も含め、韓国人には、「日本は韓国を統治した『原罪』があるので、日本に対しては何をしてもいいのである」という歪んだ甘えの構造があるのです。
さて、それでは、日本が「現在」やるべきことは何か。それは、世論戦だと思います。世論戦がまだまだ全く足りません。それは、国際世論戦と対韓国世論戦の両方においてです(上記情報ギャップがあるので対韓には限界がありますが、それでも。韓国政府も韓国メディアもやる気がないのですから、日本が努力するしかないのです。)。
ちなみに、アウェーとも言われる外国人特派員協会で、私は日本の輸出管理運用手続き変更について韓国の立場を代弁する韓国教授と討論をやりました。火中の栗を拾う気持ちでしたが、やって本当に良かったと思いました。シンガポールはじめ外国の新聞において日本の主張が反映された形で報道されたからです。
まず、日本は一貫して同じメッセージを発し続けるべきです。できれば、数字とロジックだけではなく、まあ、人間ならそう思うよね、と心に響くストーリーを。なかなか政府は言いにくい部分もあるでしょうが。
「日本は長年本当に真摯に努力をしてきたが、我慢も限界だ。韓国は反日のための反日を続けているだけ。この延長線上に日韓の未来はない。」、
「一方的反日行為の連続により、日韓関係を破綻させたのは韓国である」、
「韓国は約束破りの常習犯。日本は、今後とも韓国との関係が続くことを願っているからこそ、韓国に約束を守ってもらいたいだけだ。」、
「韓国の輸出管理体制はもともとカテゴリーAには不十分だったが、信頼関係に基づき特別扱いしたもの。韓国の方から信頼関係を壊した以上、特別扱いをする理由がなくなっただけ。AからBにカテゴリー変更というのは、台湾や中国やASEANより上で、輸出規制でもなんでもない。この程度の措置に対して、あたかも天地がひっくり返る常軌を逸した大騒ぎをしているのは、別の意図があるのだろうか。」、
「対話に応じよとはわが身を振り返ってもらいたい。半年も韓国が無視し続けてきた、65年協定上の協議や仲裁に一刻も早く応じたらどうか。」
といったことです。
たとえば、ですが、韓国が日本の運用見直しをWTO提訴すると発表していますが、韓国のWTO定礎は、ただの世論戦です。本気で勝てるとは思っていないでしょう。どうせ判決が出るのは2年後。結果などどうでも良いのです。「日本の方がおかしなことをしているのだ。たから韓国はWTOに提訴するのだ。」という自国の正当性のイメージ作りです。韓国の措置こそ正真正銘のWTO違反です。
実に韓国的なやり方です。日本が無視し続けていると、まだ、振り向いてもらうためにはまだ足りないんだ、ともっともっとエスカレートしていきます。「相手にせず」とか「無視」とかいうだけでは、結局、世論戦で気づいたら悪者にされたということになりかねません。本当に懸念しています。
韓国と同じ土俵に立たないことは重要だと思います(韓国の異常性を際立たせるため)。が、程度問題ですから、総合的に判断して対応しないと。
韓国は日本と戦いたいのですから(戦ったことがないというトラウマがあるから)、つきあってやるしかない面もあります。日本は今まで言いたくても言えなかった分も含めて正々堂々と言うべきことを言えばいい。(歴史を直視すべきは韓国の方だ、とか)韓国人はワーワー言うと思いますが、先に述べた動きもあります。本当は、日本の言うとおりだと思う韓国の一般の方はいるはずです。
タイトルの「文在寅「革命」は韓国をどこに連れていくのか」という副題のイメージは、帽子をかぶった笛吹き男が笛の音を奏で、鼠が川に自ら飛び込み溺れ死ぬ、そして子供が町から消えた、というあの童話です。
元の目標に戻りますが、今や、文在寅大統領が韓国を危険な道に連れて行こうとしている兆候が見られる以上、1938年の「国民政府は相手にせず」の前轍は踏むべきではありません。大英帝国だって、ドイツとの覇権争いという最大の優先アジェンダのためには、最大のライバルフランスとも全く思想的に相いれないロシアとも手を組んだわけです。韓国がどこに行くかは、日本のサバイバルに関わる問題です。強いポジション(韓国が間違っても誤解しない舐められないポジション)を作ったら、強いポジションから対話すればいい。