大学と町の健康実験の結果は? ソノ3 | キセキを紡ぐ Rut of hope

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久山町で、1988年と2002年に40~79才の年齢層の80%近い住民を対象とした、75g経口血糖負荷試験を用いた糖尿病の有病率調査が以下です。*

IGTとIFG合わせて糖尿病予備軍です。**

男性
        1988         2002
糖尿病    15.0        23.6%
IGT      19.2        21.6%
IFG       8.0        14.7%
合計      42.2        59.9%


女性 
        1988         2002
糖尿病    9.9         13.4%
IGT      18.8         21.3%
IFG       4.9          6.6%
合計     33.6         41.3%


2007年7月27日(金)毎日新聞朝刊

研究責任者の九州大学・清原裕教授も

「88年以後、運動や食事指導など手を尽くしたのに糖尿病は増える一方。どうすれば減るのか、最初からやり直したい」

とのコメントを述べておられます。

実際14年間の努力にも関わらず、糖尿病の確定診断がついた人が
男性15.0→23.6%
女性9.9→13.4%
と著明に増加しています。

また男性では、40歳以上の久山町住人の約6割が、予備軍を含めた耐糖能異常という、とんでもない数字に増えています。

厚生労働省の国民・健康栄養調査によれば
2002年の40才以上の日本男性の15.6%が糖尿病、
2002年の40才以上の日本女性の8.1%が糖尿病でした。

厚生労働省の調査では、糖尿病が強く疑われる人の定義は

<HbA1c6.1%以上、または質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた人>

であり、75g経口ブドウ糖負荷試験をしているわけではありませんので、全く同列に比べることはできませんが、久山町で実施された14年間の食事指導・運動指導にも関わらず、糖尿病が増えたのは紛れもない事実です。


下記は厚生労働省の調査データ 1997→2002年の5年間を比較したものですが、驚くべきことにあまり増えていません。

日本全体男性     1997      2002     
糖尿病 40才代     5.4       4.4%
      50才代    14.2      14.0%  
      60才代    17.5      17.9%
      70才代    11.3      21.3%


日本全体女性     1997        2002     
糖尿病 40才代     5.3       3.6%
     50才代     7.1       4.6%     
      60才代    10.6       11.5%
      70才代     15.5      11.6%


単純比較はできないところはありますが、日本全体のデータより、食事療法・運動療法を徹底指導した久山町のデータの方が、増加率も有病率も圧倒的に高いというパラドックスが起こっています。ヾ(゜▽゜)

久山町で指導された食事療法・運動療法は、当然、日本糖尿病学会推奨のものです。
即ち、食事療法は、カロリー制限の高糖質食(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)です。
運動は本来、糖尿病発症予防に悪いわけが無いですね。
しかし日本糖尿病学会推奨の「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」で食事指導を行う限りは、運動療法***を少々頑張っても糖尿病の増加をくい止めることはできないということが、久山町研究ではっきり証明されたわけです。

さらに、食事指導をしていない日本全体のデータより、厳格な食事指導を実施した久山町住民の方が、糖尿病の増加率・有病率がはるかに高いということは、どういうことなのか?

これは普通に考えて、久山町で指導された高糖質食が、かえって糖尿病を増やしたとしか言いようがありません。

「カロリー制限重視の高糖質食で糖尿病が増えた。」ということが久山町研究における紛れもない事実です。

2002年の久山町のデータでは、40歳以上の成人男性の過半数が耐糖能異常という病気です。
これは、「健康人とは何か」という定義を見直さなくてはならないほどの異常事態です。

つまり久山町では、40歳以上の成人男性では、耐糖能異常があるほうが普通なので、それがない人は異常?ということにもなりかねません。

「高糖質食の危険性ここに極まれり」という感じです。(+_+)

特に精製炭水化物の摂取は、正常人でもブドウ糖ミニスパイクを生じ、膵臓のβ細胞に過大な負担をかけます。精製炭水化物の過剰摂取こそが、久山町で糖尿病を増加させた根本要因ではないかと私は考えています。

臨床医、糖尿病専門医、栄養師、看護師、保健婦・・・皆さん、久山町研究の結果をしっかり検討していただき高糖質食(特に精製炭水化物)の危険性、糖質制限食の有用性を認識して頂きたいものです。


清原裕,危険因子としての糖尿病
分子脳血管病 vol.6 no.1 2007 19-24
(清原裕教授 九州大学大学院医学研究院環境医学)

**
IGT食後2時間血糖値が140mg/dl以上200mg/dl未満のもので
IFG空腹時血糖値が110mg/dl以上で126mg/dl未満のもの。


***
運動療法の目安として1回15~30分間、1日2回。
1日の運動量として約1万歩、消費エネルギーとして160~240キロカロリーが、日本糖尿病学会推奨です。運動の慢性効果を期待するには、週3日以上の頻度で実施するのが望ましいそうです。