![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160109/10/matsuda-manabu/d8/1d/j/t02200293_0480064013535858169.jpg?caw=800)
皇室であれ総理大臣であれ、井上さんの人脈の広さには驚きますが、それよりも立派だと思ったのは、今回のシェ・イノグループの新年会でのご挨拶。「日本が世界一のフランス料理を生み出す」、その志こそ「日本新秩序」の精神。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160109/10/matsuda-manabu/36/68/j/t02200293_0480064013535858170.jpg?caw=800)
ただ、消費税率引上げには苦言。
なぜ、フランスで食べるフランス料理は美味しくないのか、付加価値税率が高いから材料の質を落とさないと儲からないからだ、日本は素材で勝負している…。
これも意味深、考えなければならないことがたくさんありそうです。
ここで、井上さんの苦言について少し考えてみます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160109/10/matsuda-manabu/2f/07/j/t02200165_0640048013535858171.jpg?caw=800)
消費税であれ付加価値税であれ、例えば、税率が5%から10%に上がったとすると、建前からいうと、仕入れた原材料に同じ税率がかかっていれば、その金額に消費税分が含まれているので、仕入れ金額は5%アップします。
消費税抜きだとレストランで1,000円の料理のうち、原材料が500円、人件費が450円、単純化のため、その他の費用は無いとすれば、1,000円の料理で得られる利益は50円になります。
消費税5%のときは、料理の値段は1,050円、原材料は525円、このレストランが税務署に収める消費税は、仕入れ税額控除を行うことにより、50円-(マイナス)25円で、25円となります。
従って、レストランの利益は、1,050円-仕入れ額525円-人件費450円-消費税納税額25円=50円です。
消費税率が10%になると、料理の値段は1,100円になるので、利益は、1,100円-仕入れ額550円(消費税増税分含む)-人件費450円-消費税納税額50円=50円と、利益は変わりません。
つまり、建前からいえば、消費税は売上金額に全額上乗せされ、最終的に消費者に全額転嫁されることになっていますから、消費税制度があろうとなかろうと、消費税率が何%になろうと、レストランの利益は変わらないはずです。
ところが、事業者からみれば、消費税とは実際には、コストの一つのようなものです。
実際に値段にどの程度転嫁して値上げをするかは、需要と供給との関係によって価格が決まるという市場メカニズムの世界になります。
コストといえば、例えば、原油高や円安などで原燃料価格が上昇した場合、事業者は、それにどう対応するか、価格を引き上げるか、他のコストをカットして合理化を図るか、自社の品物やサービスに対する需給環境を踏まえた経営判断の一環として決めるでしょう。
消費税率引上げも同じだということになります。
ですから、このレストランでは、消費税率が5%もアップすると、それを料理の値段にどこまで上乗せできるのか、景気がパッとしないときは到底、上乗せできない、となると、もともと1,000円の料理で50円という、5%の利益率しかないわけですから、1,050円のまま値段は据え置き、消費税分は5%の利益の中から負担する、仕入れの値段が5%アップすれば、利益はゼロになる、これではやっていけない、ということになります。
フランスは付加価値税率が高いから材料費を節約するというのは、付加価値税という高コスト要因に対して、優秀なコックを確保するために人件費は削れない、ならば、仕入れ金額を削るしかない、そこで、素材の質を落とす、ということなのでしょう。
確かに、欧州のように消費税率20%前後だと、このことのインパクトは日本よりも相当大きいということになります、ちなみに、フランスでは、付加価値税(VAT)の標準税率は20%です(軽減税率はものによって10%、5.5%、2.1%と異なります)。
では、どうすればいいのか。
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やはり、経済全体で消費者物価上昇率が1~2%程度の健全でマイルドなインフレ状態が将来にわたって持続すると、人々が予想するようなマクロ環境を、まずは作るということでしょう。
そうであれば、事業者も価格転嫁がしやすくなります。
理想をいえば、事業者全員が消費税計算ソフトを導入して、同じ5%の消費税率引上げも毎年度1%ずつ、5年かけて行うというマイルドな引上げとするのがベターです。
こうすれば、毎年度1%ずつのコストアップということが今後5年間にわたって確定しますから、これに対してどのように利益を確保していくか、事業者も経営計画を立てやすくなります。
生産性を高める、それを消費者に提供する付加価値の増大をもって行い、消費者が納得する価格設定を実現していくということも、方策の一つです。それを5年かけて徐々に行っていく。
もちろん、これは、あくまで理想論です。事業者の方々にとっては、現状ではそう簡単な問題ではありませんが、今後、将来にわたって消費税率の引上げが、もし、不可避なのだとすれば、そろそろ真面目に考えるべきことかもしれません。