松田まなぶ、「ここが問題!TPP」にパネリストとして出演、チャンネル桜放映。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。


 ここ数年、賛否両論で国論を二分してきたTPPが大筋合意に至りました。チャンネル桜では「闘論!倒論!討論!2015」で、「ここが問題!TPP」と題した討論の場が持たれ、かつて「TPP興国論」を執筆した私、松田まなぶもパネリストとして呼ばれました。


収録日は11月9日の夜でしたが、当日は以前より、私がセットした田中・財務事務次官など財務省の幹部との会合と重なってしまったので、私は第二部の途中で退席せざるを得なかったのが残念です。11月14日(土)の夜に放映されました。


今回の討論の参加者をご紹介しますと、司会は水島総・日本文化チャンネル桜代表で、パネリストは、松田まなぶのほか、田村秀男・産経新聞編集委員兼論説委員、山田俊男・参議院議員、野口旭・専修大学教授、金子洋一・参議院議員、河添恵子・ノンフィクション作家、三橋貴明・経世論研究所所長、片山さつき・参議院議員(松田と入れ替わり、第三部)でした。


 第一部で私がまず申し上げたのは、「TPP興国論」と銘打った本を出したとはいえ、私は諸手を挙げてTPPに賛成してきたのではなく、この大きな世界の潮流に逃げることなく正面から向き合い、自国の国益の再定義と、強い日本の構築に向けた覚悟や奮起を国民に問いかけようとしてきたのだということでした。人口減少が進む日本が国際社会の中でこれからどのような国づくりを目指すのか、それを問いかけるものとしてTPPを捉え、日本の将来像を描き、「新しい国づくり」の合意形成へとつなげていくべきだということです。


TPPの要諦は「法の支配」にあります。現状においてアジア太平洋地域で進んでいるのは中国が主宰する秩序形成です。これに対し、パワーではなく、ルールだ、ルールに従うという形での秩序づくりを進めなければならないというのは、何も、南シナ海問題に象徴される安全保障分野だけではありません。Rule of Lawの徹底は、経済面でも喫緊の課題。


しかし、誤解が非常に多いのがTPPです。これを「日本の開国」だと捉える向きが大多数なのが、その最たるものです。欧米諸国との長年にわたる経済摩擦で練磨された日本の市場は、すでに世界で最も開かれた市場の一つです。政府調達も金融もそうです。少なくとも政府の措置でできる範囲では、開放度は世界の最先端を行っています。


ですから、TPP交渉では、農業を除けば、ほとんどの分野で日本は「攻め」の立場になるものです。現に、交渉結果を見ると、他の参加国の市場を随分と開くことになりました。他国の農産物などの関税引下げ、政府調達の開放、それに、これから日本は海外投資で食っていく度合いが高まるわけですから、投資を円滑化して収益を上げて国内に還流させる上で、大きな進展もありました。TPP交渉は日本にとっては、「海外を日本に対して開いてもらう」性格のものになると私は主張してきましたが、まさにその通りになっています。


主義としてのグローバリズムと、事実として進展しているグローバリゼーションとを混同してはいけません。パワーを背景とするグローバリズムには対抗しなければなりませんが、グローバリゼーションという止めようもない世界の流れの中で、すでに日本の中小企業などもグローバル・バリュー・チェーンにがっちりと食い込んでいます。TPPはそれを円滑化するものです。


その他、第一部では基本論を述べました。こちらの動画をご覧ください。


http://youtu.be/aemnrnY9KHQ


第一部では何度か発言しましたが、私がまとまった発言をしているのは、11分15秒~15分24秒です。


  第二部では、私が参加していたのは最初の20分程度で、その最後の4分程度が私の発言です。主として農業について発言して退席しました。こちらの動画をご覧ください。


http://youtu.be/Mdm01h5zUDE


私の発言部分は13分27秒~17分15秒です。


 第二部私が申し上げたのは、最大の食料安全保障とは農産品を輸出することであり、そのために農業は徹底的に保護すべきだということです。ただし、それは農業の生産性を高める方向での保護政策です。問題は、農業保護政策の手段です。これまでの保護政策は農業を衰退させました。高関税などで水際で規制する方式から、日本も、欧米がとうに転換したように、直接支払の財政方式へと転換しなければなりません。


これによって、生産性が高まる度合いに応じてゲタを低くしていく、関税撤廃も10年かけてやっていく。10年後に関税なしではやっていけないようでは、日本の農業は滅びるだけです。それまでの間に生産性を高めていく。国際的な価格競争で不利な部分は、関税ではなく、財政で支援する。そうすると、農産品の価格は下がり、農家も活力が出る。


パネラーの三橋さんから、財政方式は財務省が反対するから無理だとのご発言がありましたが、コメについてみると、減反政策によって、日本の消費者は高いコメを買わされることで消費者負担をし、減反奨励の補助金で税負担もするという二重の負担をしています。


もちろん、財政方式というのは、高い農産品の形での消費者負担を納税者による税負担に変換するものですが、日本の場合、高い農産品を買わされるための税負担をやめれば、つまり、減反政策をやめれば、その分の補助金がスクラップされます。ほかにも、政策転換によって既存の補助金が廃止されて財源が出てくることに留意すべきでしょう。


欧州は付加価値税率が20%前後ですが、生活必需品としての食料価格は結構安いということを感じることがあります。将来、日本も二桁の消費税率となった際には、生活必需品は非課税にすることが考えられます。生活必需品の価格が安いということは、最大の福祉です。社会保障給付だけが福祉ではありません。


財政方式の財源は税負担だとしても、生活必需品たる食料の価格は下がり、しかも消費税非課税となれば、一挙両得どころか、一挙三得(①自由化による国際経済との調和、②農業保護、③消費者負担の軽減と弱者対策)です。


政府は10年後の農業・農村の姿を明確にすべきです。これが描かれていないからTPPは農業関係者に不安をもたらしています。財政方式への転換を明確に言えないから、将来像が描けない。直接支払は、その要件を多様なものにすることで、多様な農業、多彩な農村を創ることができるはずのものです。国民農業、商業・輸出農業、中山間農業、環境適応型農業等々、それぞれの政策目的に応じた支給要件を定め、さまざまな形態の農業がそれぞれに発展し、共存していく姿を描く。


やはり、TPPで問われているのは、日本自らが日本の将来像を構築していくことではないでしょうか。


その際に大事なのは、多くの方々が恐れるグローバリズムの弊害が、TPPそのものによってもたらされるものなのか、TPPとの連想で恐れられているものなのか、TPPとは直接関係なく日本独自の措置で生じる弊害なのか、を、きちんと区別して議論すべきだということです。例えば、中国勢による日本の買収は、TPPによって生じているものではありません。これなどは、対日投資規制という別次元の立法によって対処すべきでしょう。


遺伝子組み換え食品の問題や米国資本による日本農業の支配などの懸念も、農協の株式会社化によって高まっている論点であり、その是非はともかく、それ自体はTPPが強要しているものではなく、日本独自の措置です。医療の国民皆保険が崩壊するという議論などは、TPPとの関連では、風が吹けば桶屋が儲かる、式の議論に過ぎません。


大事なのは、強い国をどう創るか。それが保守政治の真髄だと思います。TPPのメリットを最大限、国益化し、デメリットに対しては将来像を構築していく。そうした冷静で知的な営みをもつて、日本らしい日本を国際社会の中で築いていきたいものです。