松田まなぶのビデオレター、第14回は「国家マネージメント例、ドイツとユーロの場合」 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 日本に欠けているのは長期的な国家戦略だと、つくづく感じさせてくれるのがドイツと中国です。今回のビデオレターでは、日本の財政問題から少し離れ、チャンネル桜の先日の番組で、中国やドイツについて論じた経済討論(7月25日放映)に参加して述べたことを切り口に、国際経済に目を転じてみました。特にドイツは、日本の経済財政運営にも重要な示唆を与えます。最近のギリシャ問題で目立ったのは、メルケル首相率いるドイツの容赦ないタカ派の姿勢でしたが、それは、ドイツとしては、自らやるべきことはやったという実績があるからです。やるべきこともやらないで、苦しい改革を経てきたわが国に余計な負担をさせるな、というドイツ人の国民感情が、安易な妥協を許さないのでしょう。
 そもそもユーロには、競争力が強い国はさらに強くなり、弱い国は逆になるという構造があります。「国際金融のトリレンマ」で説明しているとおり、金融政策も為替調整も採れないユーロ諸国には、マクロ経済政策の選択肢が限られ、財政健全化と構造改革しか道はありません。これに成功したドイツが「独り勝ち」となったわけです。「欧州の中のドイツ」を標榜して国家統一を実現したドイツは、通貨でも名を捨てて実を取り、マルクをユーロに埋め込むことで、自国経済の実勢よりも安い為替レートを享受した。こうした巧みな通貨戦略も奏功しました。これを土台に、労働市場などの改革や財政再建に成功したドイツ。

第14回「国家マネージメント例、ドイツとユーロの場合」チャンネル桜、7月28日放映。
 こちら↓をクリックすると、今回の松田まなぶの動画を見ることができます。


 財政再建のためにドイツは2007年に、日本の消費税率に相当する付加価値税率を16%から19%へと3%引き上げ、同時に所得税増税も実行しましたが、景気はビクともしませんでした。2007年も前年同様、実質経済成長率は3%台を維持、5%から8%へと同じく3%の消費税率引上げをして景気が大きく減速した日本経済とは大違いです。増税に成功した理由について、ドイツ連邦財務省の説明も立派。財政再建について国民は理解していた、どの政党が政権を取っても増税が不可避であることに変わりなかった、3%程度の引上げは大きなものではない…。日本とどこが違うのか。
 そこには、労働市場改革などを通じて旧東ドイツの軛から脱したドイツが、ユーロ通貨のメリットをフルに活用しただけでなく、広く「東方拡大」で東欧地域などを自国経済圏に取り込んできた巧みな経済戦略があったのではないか。それがドイツ経済の足腰を強くしていたと思います。
 やはり、財政再建のためにも、日本に必要なのは、自らの経済力を強化する長期戦略です。松田まなぶが唱える「国力倍増」で、アジア太平洋地域に「日本新秩序」を浸透させていく。「一帯一路」を掲げる中国をも視野に入れれば、それぐらいの長期ビジョンを遂行できる「したたかな」国家をどう創っていくかが、日本の課題だと思います