松田まなぶの論点 アスベスト対策について | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

アスベスト対策について

衆院予算委員会第六分科会 質問内容(平成25年4月15日)

松田まなぶ


〇日本維新の会の立場とアスベスト問題。

1. 日本維新の会は「改革保守」の政党。もはや意味ある対立軸は「右か左か」ではない。「後ろか前か」である。賞味期限の過ぎた供給者視点の「戦後システム」を転換し、日本らしい新しい国づくりをすべき局面。
 そのためには、後ろ(既得権益や従来型の統治機構)から自由な勢力が力を伸ばす必要。その立脚点は、供給者側(業界)ではなく一般消費者であり、エンドユーザーであり、普通の一般国民。
 震災で明かになったのは原子力の利権構造と、供給者側の隠ぺい体質。「原子力ムラ」や原発、放射能、除染に焦点が当たっている。
その陰になって相対的に注目度が低いが、同様の問題として広く一般国民の立場に立って関心を喚起しなければならないのがアスベスト問題。
それは今回の東日本大震災とも大きく関係する問題でもある。

2. 日本維新の会は「自立」を唱える政党。国家の自立、地方の自立、個人の自立。基本は独立自尊の精神。
⇒しかし、その基本は国民の安全・安心の上のために最低限の機能を国や自治体などの「官」が果たすこと。安全・安心があってこそ、個人はがんばってリスクテイクもできる。
 しかし、今回の震災は、この面で国がきちんと機能を果たしているか、疑問を国民に生んだ。国はいざというときに頼りにならない。個人の力を超える部分で、国がリスク管理をしているからこそ、民間もリスクが取れる。
 アスベスト対策も、そうした面での国の機能に疑問を感じさせるもの。

3. 日本維新の会は「強くて賢い国家」を唱えている。政府は「賢く機能する政府」でなければならない。
 しかし、残念ながら、国民の政府依存体質で何事も政府に責任を追及するのが日本の国民。結果として、政府としてリスク評価、リスク管理能力が低下しているのではないか。何事もリスクがあるのに、責任追及を逃れるあまり、リスク回避のために重大な問題には蓋をして向き合わないという行政体質が定着してきたのではないか。
 放射能による発がんリスクと他のリスクとの比較評価の中で、因果関係が放射能よりも明白で、かつ、現実の脅威としてすでに現れているアスベスト問題への対策は、不当に低い位置に。
 こうした国の機能の在り方についても、今回の質問を契機に問題提起したい。

〇アスベスト問題の現状はきわめて深刻。
 ・歴史上最大の公害事件の可能性がある。
 ・現在、アスベストは我々の生活場所に大量に存在。
 輸入・使用禁止でアスベスト被害は終りと世間は勘違い。
 過去の建築中心に1000万トン使い、大半は取り切れていない。
 罰則規定がないため、ずさんな除去・解体工事が進行中。

〇アスベストが原因の死亡者数は増加の一方。
 ・中皮腫はアスベストが原因。
 アスベストは肺胞(はいほう)に入り鉱物性のため溶けず残留する。
 ・中皮腫死亡者数は昨年度は1200人死亡(2002年は800人あまり)
 被害が先行している米国や英国と同じカーブで死亡が増加していくものと予想。
 非喫煙者の肺がん死亡が急増し、アスベストも原因の一部。
 これも含めれば、現状ですでに、1年間に少なくとも3,000人~4,000人がアスベストが原因で亡くなっていることに。
 ・中皮腫による死者数だけでも、2030年をピークにしてトータルで10万人と予測されている。(少なく見積もっての数字)。
 ・アスベスト使用が先行した他国の死亡者増加カーブをみると、日本でのピークは2030年であり、このまま放置すれば死亡者1万人/年以上と専門家は予測。
 
(問)今後予想される(中皮腫による)死亡者数は年間何人と推計されるか。また、肺がんによる死亡者のうち、アスベストによるものと認められた人数は(年間ベースで)。⇒環境省、厚労省

〇アスベストは国がまき散らした公害。

〇今後中皮腫による死亡者は10~40万人と推計される。また、肺がんによる死亡者7万人中、アスベスト原因は2万人いると推定。

〇アスベストは日本最大の公害事件になる可能性がある。
・これまでの日本最大の公害事件である水俣病も死亡者数は数千人。
・薬害エイズ死亡者数約250人、薬害肝炎推定患者数約10000人に比べアスベスト被 害は格段に大きい。年間の交通事故での死者数は約5,000人。
 ・今のアスベスト被害者は、禁止されるまえに吸ってしまって発症しているのだろうと勘違いしている。
 ・日本には過去1000万トンのアスベストが輸入され、現在もそのほとんどが建築物に使用されたままで残っている。
 ・2040年をピークにこれらの建築物の解体が行われ、今アスベスト対策を強化しなければ中皮腫、肺癌による死者数は予測値の最悪の場合の数値に達する。

〇アスベストは過去様々な用途で使われ、まだ大量に残っている。
 ・すでに使用禁止だが、建築関係は建材にも含まれ多くは取り切れていないまま残り、解体時に飛散。

〇中皮腫の潜伏期間は通常20~30年(十数年から40年)だが、阪神大震災の復旧作業員は13年ですでに発症している。
 「静かな時限爆弾」とも言われる。

(問) 阪神淡路大震災においては、復旧作業に従事していた作業員4人が地震から13年後の2008年以降、アスベストによる中皮腫を発症して労災認定を受けている。東日本大震災においては、阪神大震災時の経験が生かされているのか。東日本大震災の被災地におけるアスベスト飛散の現状について。⇒環境省

〇被災地ではアスベスト被害が起こりかねない状況が続いているがマスコミは軽視。
 ・現地でアスベストが舞う状況が広がり、瓦礫はアスベストの有無で分けることなく積まれている。

〇阪神大震災後の経験が東日本大震災に生かされていないのは将来大問題になる。
・阪神大震災当時、復旧作業に当たった方々を対象にしたアンケート調査では、「作 業現場の周辺に住民がいた」との回答が8割を超え、その中の6割が「作業現場の隔離など周辺への配慮や対策が特になかった」と回答。
 ・阪神淡路の復旧作業に従事した人の20人に1人が、この20年足らずでアスベスト特有の疾患、病変がある。
・東日本大震災の瓦礫にはアスベストが含まれているが、自治体は対策を打っていない。
・ボランティア、自衛隊員、そして市の職員はアスベストの怖さを知らない。
 ・阪神淡路の際は、当時の環境庁などの石綿の飛散調査は「おおむね問題なし」との結論だった。しかし、中皮腫で労災認定を受けた死亡者が出ている。
 ・東日本大震災の被災地では損壊した建物の解体が進み、すでに市街地やがれき集積所に石綿建材が散乱していることが確認されている。
 ・今回の東日本大震災の環境省の調査でも、ほとんどの地点で「問題なし」との結果だったようだが、一部の有識者からは「極めて不十分」との指摘もある。東北の被災範囲は広大で、もっと丁寧な測定が必要との見方も。東日本の場合、石綿を含むがれきが津波で広範囲に広がっている。
 ・津波でほぼ全壊した建物に養生を行ってアスベスト除去を行うのはなかなか考えづらい。せめてマスクの指導はしてもらいたかったが、最初は徹底していなかった。
 ・そのように、何かにつけて対応が遅れたことが問題。行政の危機意識も低かった。

○アスベストを含む建築物の把握について
 ・国交省の調査によれば280万棟。しかしこれは各都道府県の環境課に調査を依頼したものを集計したもので、かなり少な目な数値と考えられる。また、アスベストの作業レベル区分にいう「レベル1」(吹き付け材)だけをカウントしたもので、レベル2(天井のボードのような断熱材等)、レベル3(パッキンや空調の配管等)は含まれていない。

〇これらの解体のピークは2040年頃に来ると国土交通省は発表している

(問) そもそも、現時点でアスベストが使用されている可能性が高い物件は全国でどのくらいあると推計されるか。東日本大震災の被災地においては、どの程度、アスベストが使用されている可能性が高い物件があったと推計されるか。⇒国交省

〇放射能被害に比べアスベスト被害では確実に死亡者が出ているがマスコミは取り上げない
 ・しかし、放射線被害に比べアスベスト被害はやはり大きい。
チェルノブイリ:将来、欧州諸国40か国の住民を含めて癌死亡者数増加予測16,000人。日本のアスベスト死亡者は10万人を超える可能性。
 ・100mSv浴びると30年後に1,000人当たり5人癌死亡増加するが、対象総数は少ないのに比べて、アスベスト被害は全国民が対象。
 ・アスベスト対策を考える専門家が少ないために、アスベスト問題の元凶と考えられる組織関連の人物が中心となって日本のアスベスト行政を導いており、原子力発電問題や、国鉄の事故調査等でも問題となったような、アスベスト「むら」が大手を振っている。
 ・マスコミも放射線報道のみに偏るのではなくアスベストも含めた日常のリスクに対するバランスのとれた報道が必要。

(問) 平成25年度予算案における、アスベスト関係予算の総額は。復興関係予算において、アスベスト対策予算は盛り込まれているか。(盛り込まれているとして)それはどのような内容か。それによってどのような効果が期待されるか。⇒環境大臣、内閣官房

○他方で、放射性物質については、除染の実施として、23年度予備費2,179、23年度第三次補正1,997、24年度当初3,721、25年度当初4,978億円、計12,875億円の予算が計上。中間貯蔵施設検討・整備事業については累計で177億円。

〇強い意思を持った当事者がまったく不在状態。
 ・各省庁ばらばらの施策で自分の省庁では対策済みとの認識が蔓延し、問題の抜本的解決への意思と強い責任感のある中核組織が存在しない。
 ・除去工事現場を指導監督すべき地方自治体担当者は常に交代するため、知識レベルはばらつき、その危険性に対する認識がほとんどない。
 ・日本は他国に比べて事の重大性に対する情報が不足で、マスコミも問題に対する認識がなく単発的な取り上げしかせず、市民も多くの議員もアスベスト問題は終わったと思っている。

〇国民の命と安全を守る。これが国家の基本的機能。北朝鮮の拉致問題は、日本の国家のあり方に疑問を投げかけた。強い国家は国防だけではない。健康被害から国民を守る。アスベストは、日本の国家機能が試されている。

(問) 安倍政権が強い国家を目指す政権なら、その内閣の一員である環境大臣として、アスベスト問題の実態に正面に向き合う覚悟と決意を示さねばならない。いかがか。その一つとして、今国会中に改正が予定される大気汚染防止法もそのような状況をふまえたものと認識するが、本法の改正によってどのような効果が期待されているか。また、法改正とは別に今後どのような対策が考えられているか。⇒環境大臣

○建物解体の発注者が契約上優位な地位にあることを背景に、施工業者にできるだけ低額、短期での工事を求め、施工業者はこれに従わざるを得ない、施工業者もできるだけ低額、短期の工事を提示することで契約を得ようとする。⇒届け出がなされない。
 例えばある県では、年間数千件の解体工事のうち届け出られている件数は数十件。届け出があっても建物を個別に事前確認することが難しかった。工事現場で自治体職員が指導することも困難だった。
 →届け出の義務付けや立ち入り検査権限などを規定する今回の改正は一定の効果。

〇該当建築物を完全に把握したうえで、解体時に適切な対応を行えばアスベストの飛散を防ぐことは可能だが、現時点では理想論。

○リアルタイムモニターについて
 ・解体工事現場におけるアスベスト調査については、現状では、4時間程度フィルターでアスベストを捕集して、研究室に持ち帰り顕微鏡で調べる、という手法をいまだに取っているので、アスベストが飛散しているかどうか判明するまでに数日かかってしまう。その間にも解体工事が進むおそれ。
 ・アスベスト問題のポイントは解体してしまうと跡形もなく証拠も無くなり、現行犯でなければ指摘出来ない事情がある。
 ・リアルタイムモニターを現場で率先して使用する意義は大きい。

(問) 大気汚染防止法改正で自治体の立入権限を強化するとしても、現場でリアルタイムにアスベストの飛散状況が把握できる方法を進めるべきではないか。そのために必要な人材の確保・育成について、環境大臣の所見をうかがう。⇒環境大臣

〇建築物の解体に関して、アスベストが飛散していないという確証が取れる測定方法で解体中の測定を行いその結果を長期(中皮腫発症の潜伏期間の40年間)保存することを義務づけすべき。

〇アスベストの専門家を育成する必要。米国では解体工事の際には国の認定する専門家が常駐。日本も国による認定制度が必要。

特に、日本は地震大国である。
〇大震災のあとに大津波⇒大震災のあとにアスベストの災禍。しかも数十年後に発症して脅威が現実化。津波と違って、目に見えない恐怖。
〇東南海大地震が予測されている現在、もう一度初心に戻って今後予想される被災地のアスベスト使用状況の徹底調査と震災後の対応策を作るべきである。

(問) 今後確実に発生が想定されている南海、東南海地震においては、関西から四国、九州にかけて甚大な被害が想定されている。阪神大震災、そして今回の東日本大震災の教訓をふまえ、事前にアスベストに関する調査を行うべきなのではないか。そのような検討はなされていないのか。⇒内閣官房、国交省

〇行政怠慢訴訟になりうる
・アメリカでは訴訟による損害賠償金額が収束までに数十兆円と想定

○日本でも、司法の判断。
 ・現在、泉南アスベスト訴訟で国家賠償請求が行われているが、控訴審で国の責任は認められないという判決が出た。しかし、他方で、建設現場でアスベストを吸い込み肺がんや中皮腫になった元建設作業員の被害について東京地裁が国の責任を認めた。「国の規制は不十分」との理由。158人に対して賠償金として国に10億6千万円の支払いを命じた。

○司法による救済には限界。国として、広く石綿関連企業にも資金を拠出させて基金を創設するなど、救済制度を充実することが求められる。

○米国では毎年1万人のアスベスト関連疾患による死亡者。1940年から80年の間に2,750万人がアスベスト被ばくをしたとされる。アスベスト関連企業に対する訴訟は90年代後半から急増。数十万件が審理中。アスベスト関連での企業倒産数は78件、そうした倒産による雇用の喪失は6万人、倒産による補償財源の枯渇、裁判所への過度の負担、多額の弁護士費用などの問題が生じてきた。状況打開のためアスベスト補償基金の創設などが議会でも議論されてきた。

(問) 今後アスベストによる被害者の増大に伴い、補償に莫大な費用がかかることが予想されている。安倍内閣は、アベノミクスの3本の矢の一つとして機動的な公共投資を掲げているところであるが、「国民の命を守るインフラ対策」としてアスベストの安全対策(研究開発や専門家の育成等も含む)に国家予算を投じるべきではないか。200兆円の国土強靭化の中には、当然のことながら、国民の命と安全を守るという意味で国家の強靭化ということが入っているべき。大臣の所見をうかがう。⇒環境大臣

〇縦割り行政の結果、アスベストによる今後の死者数の増加にどう対処するかを考え実行する部所は何処にもない。

○他の先進国と比較すると、日本における一番の問題は「隠す」という隠蔽体質。また、過去に遡れば通産省の後押しで石綿協会が過去大量にアスベストを輸入したことの責任の清算もなされていない。欧米ではすでに1930年代から危険性が言われており、それを分かっていながら日本では輸入し続けてきた。
 過去の責任の追及よりも、今後国民に被害を及ぼさないようにするのはどうすればいいかを考える方が生産的。具体的には、建築物の解体作業時にアスベストが飛散しないようにすること。この対策が先進国で一番遅れている。
 ・そして、先進国と比較して最も不十分と思われるのは「教育」。これは学校教育も含まれるし(小学生にアスベストについて学ぶ時間を取る等)、専門家の育成を行うことも含まれる。
 ・また、きちんとした測定をやろうとすれば、リアルタイムモニターの導入が不可欠。日本の技術力に諸外国も期待している。

〇他の国に先駆けて人類共通の課題に直面する「課題先進国」となっている日本も、アスベストに関しては、解決すべき課題の設定という点で他国に遅れ、「課題後進国」になってしまった。これからはせめて、世界の震災大国として、アスベストについては「課題解決先進国」となることを目指したいものである。各界が知恵を出し、国民合意のもとに本気で取り組むべき課題。

今後、環境委員会で実りある審議が行われることを期待。