松田まなぶの論点 財政運営3つの論点 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

財政運営3つの論点
2013年4月11日の衆院予算委員会公聴会にて提起した今後議論すべきテーマ

1.賢い財政支出で経済成長と財政規律を両立させる。

 日本の巨額の国債発行残高の大半を占めるに至っているのが赤字国債です。
日本では、赤字国債も建設国債も、60年かけて返済する仕組みになっています。確かに、公共施設の建設などで将来世代に資産を残すための借金である建設国債については、その借金の返済の負担を将来世代にも分担してもらうことには合理的な理由があります。そこで、建設国債は財政法で許されています。

 これに対し、将来に資産を残さない赤字国債は財政法で禁じられており、特例公債法で例外的に発行している事態が常態化しています。赤字国債がここまで膨らんだのは社会の高齢化に伴う社会保障給付の増大が主たる原因です。しかもそれは、建設国債と同じく60年で返済する仕組みの中に入っています。将来世代にツケだけを残す赤字国債までもが60年返済になっている合理的理由は本来、ありません。両者はきちんと区別すべきです。

 財政規律の問題は赤字国債にこそあります。赤字国債の毎年度の発行額は、消費税率引上げで減少することになります。
 ならば、建設国債については、赤字国債が減少する範囲内で、もう少し弾力的に考えることはできないか、それも、ムダが多いと言われてきた従来型の公共事業をむやみに拡大するのではなく、科学技術の振興や人材への投資など、真に将来の資産になるような投資的支出であるかどうかを見極めて考えるきではないか。
いわば「公共事業からwise spendingへ」という考え方です。
 特に、来年度の経済を考えると、それは重要な論点になってくると思います。今年度はアベノミクスの2本目の矢である公共投資の拡大が経済成長率を高めますが、これを「臨時異例の措置」だとすれば、来年度は、公共投資が元の水準に戻ることがそのまま、経済成長率を大きく引き下げる要因になってしまいます。そして、来年4月から消費税率が上がることも、経済成長のマイナス要因として加わります。
マクロ経済学の教科書が教えるように、増税は景気を悪化させる要因ですが、増税額と同額分、財政の支出を増やせば、乗数は1となり、増税額と同額分、GDPを増やす経済効果があります。政府支出の増加額が増税額と同じならば、財政も悪化しません。

 エール大学教授のロバート・シラー氏は、次のように述べています。

 「景気と財政再建の両立が不可欠だ。『均衡のとれた景気刺激予算』という道がある。1940年代にサミュエルソンなど経済学者たちが、増税と歳出拡大を同時に実現すれば、政府債務は膨張しないと論じている。政府は債務をこれ以上増やさない(毎年度の国債発行額を全体として増やさない)責任ある姿勢を示し、増税と同時に歳出を増やすべきだ。科学技術研究など、将来の成長につながる投資型支出でこれを行うべきだろう。大事なのは経済を前に進めることである。」

 日本経済の問題は、家計だけで1,500兆円ある金融資産の運用対象(資産選択:ポートフォリオ)の多くの部分を、将来の富を先食いする赤字国債とその借り換え国債が占めるようになっているということです。
 同じ国債であっても、賢い政府支出、つまり「未来への投資」の財源となる国債へと変わっていけば、日本の金融資産のポートフォリオの中身が、より生産性の高いものに改善することになります。


2.国民が選択できる「見える化」財政へ、「社会保障勘定」の創設。

 民主主義の欠陥の一つとして、将来世代が選挙での投票、つまり財政の意思決定に参加していないという問題があります。次の世代のために、できるだけツケを残さず、純資産を残していくような財政運営をしていくことが、私たち世代全員の責任です。

 日本維新の会は、今国会において、政治も政府も縛る財政責任確保法案を提出する予定です。多くの国々で、立法措置によって財政規律を確保する工夫がなされています。
 ただ、財政規律に実効をあげるためには、世代間の公平の確保について、国民一人一人が責任ある選択をできるような財政の仕組みを構築することも必要だと思います。
 その一つの試みが、私が今国会の質問などでも何度も取り上げている「社会保障勘定」の創設です。消費税率引上げが常に国論を二分してきましたが、消費税は全額、社会保障の財源になります。社会保障目的税は、国民の間でのおカネの移転にすぎません。消費税収は政府の懐に入る性格のものではなく、政府は、消費税による国民から国民へのおカネの移転を仲介する立場です。

 国民は高齢世代、現役世代、将来世代の3つから成りますが、社会保障目的税の水準をどうするかという問題は、社会保障の負担をどの世代がどの程度するのかという問題にほかなりません。国民全体でみれば、消費増税はこうした負担配分を変えるものであって、負担を増やすものではありません。
 ならば、社会保障支出を歳出とし、消費税収と、赤字国債(消費税収では不足する分)を歳入とする「社会保障勘定」を一般会計から切り離して示すことで、国民は世代間の負担配分の状況を把握し、責任ある選択ができるようになるはずです。
 歳入(消費税収も他の税目の税収も建設国債も赤字国債も)も、歳出(投資的支出も社会保障給付も政府の経常経費も)も、何もかもが一般会計でどんぶり勘定になっている今の財政の仕組みは、国民にとってみれば、受益や効果と負担、世代間の負担配分の状況が見えにくく、国民自らによる選択を難しくしています。
 まさに中央集権官僚支配の「由らしむべし、知らしむべからず」の開発途上国型の財政といえるでしょう。「国民の国民による国民のための」財政でメリハリのある財政運営を。そのインフラを整える必要性が、超高齢化社会が進む日本では高まっていると思います。


3.世代内相互扶助で「世代としての自立」を。

 日本維新の会は「自立」や独立自尊を唱える政党ですが、自立を言うのであれば、個人や地方や国家の自立だけでなく、世代としての自立もしっかりと確立していかなければならないと思います。残念ながら今の日本では、社会保障給付を享受する高齢世代は、その負担を現役世代や将来世代に「おんぶに抱っこ」しています。
私が国会質問でもたびたび触れたように、政府による所得再分配によって高齢世代の貧困率は低下している(社会保障が機能している)一方で、勤労世代では貧困率がかえって高まる(格差が拡大する)という、他の先進国では見られない奇妙な現象が生じています。

 そして、高齢世代や現役世代の負担では到底まかなえない社会保障負担を、60年償還の赤字国債で次世代負わせています。
 しかし、日本の1,500兆円の個人金融資産の大半を持つのは高齢世代です。それを、次の世代へのツケ回しである赤字国債に運用する姿は極めて歪んでいます。
 そうではなく、そうした資産ストックを社会保障システムにおカネのフローとして循環させることで、高齢世代の世代内相互扶助に活用するべきです。
 私は以前から、三層構造の医療財源システムなどで、資産を持つ高齢世代の方が喜んで自発的に資産を支出に回すことで医療財源が確保され、それを資産を持たない高齢者などへの医療を充実させることに活かすべきだと提唱してきました。
 これを税制を通じて行うことも考えてよいのではないでしょうか。
 ならば、社会保障の財源は何も消費税だけでなく、資産課税によって賄うということも選択肢になります。そのためにも、課税当局が資産の保有状況をより正確に把握することが必要になります。これは、今国会で審議されているマイナンバー制度導入後の次なる課題になると思います。

 こうして世代内相互扶助を徹底させていくことで、日本維新の会の「世代間の協調」が実現する道が開かれていくものと考えます。